25.06.04
小学1年生の親子が直面する『朝の小1の壁』。対策を実施している自治体はわずか1.4%
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
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【小学1年生の親子が直面する『朝の小1の壁』。対策を実施している自治体はわずか1.4%】
吉田:子どもが小学生になると仕事と育児の両立が難しくなる、いわゆる「朝の小1の壁」。この問題の対策を実施している市区町村は1.4%にとどまることが、こども家庭庁の調査で分かりました。こうしたなか、こども家庭庁は2025年度から「朝の居場所」を設ける自治体に補助金を出す、ということです。塚越さん、まずは「朝の小1の壁」がどのような問題なのか、教えてください。
塚越さん:「朝の小1の壁」は、子供が小学校に入学するので、朝子供を預けられない時間ができてしまうという問題です。なぜかというと、多くの保育所は朝7時〜7時半に子供を預けることができるのですが、小学校の登校時間は8時頃なので、30分〜1時間程度、「朝の隙間時間」ができてしまいます。そうなると、仕事のある親は子供を残して先に家を出たり、親子で一緒に家を出るけど子供は学校の前で校門が開くまで待つ、なんていうことがあるようです。なぜ、こういう状況が起きているかというと、やはり共働き世帯が増えたことが挙げられます。年々、共働き世帯は増えていて、2024年の共働き世帯は1,300万世帯となっていて、専業主婦世帯の2.5倍になっています。一方で、学校も教員の働き方改革もあって、朝に校門を開く時間も遅くなる傾向にあるので、なかなか難しい深刻な問題です。
吉田:この「朝の小1の壁」の対策。まだ、進んでいないようですね?
塚越さん:共働き世帯は増えているので、やはり子供の朝の居場所をつくる必要があるのですが、課題は多いです。こども家庭庁が昨年度、全国およそ1,700の自治体を対象に調査を行いました。そのうち1,000の自治体から回答があったのですが、対策を実施していると答えた自治体は、その1,000の自治体全体のなんと「1.4%」。検討中が「1.7%」でした。これははっきりいえば、全国的にはほとんど対策が行われていない、ということです。未検討の自治体に課題を聞くと、やはり人材確保が難しいという意見が7割と最多で、居場所の確保調整が難しいという回答も多かったです。他にも小学生の子どもを持つ家庭にアンケートを取ったところ、都市部でニーズが高いということも大体の調査で分かりました。
ユージ:対策が進んでいないとはいえ、対策をしている自治体もあるんですよね?
塚越さん:そうですね。いくつか少ないと言われていますが、自治体で対策が進んでいます。例えば、大阪の豊中市は、去年4月から市内39の公立の小学校で、8時の登校時間より1時間早い7時に校門を開けています。その後は8時まで、決まった部屋で友達と遊んだり自習ができるということです。各学校には民間の見守り員が2人配置され、市全体で1日80人ほどの子供が利用しているということです。他にも、東京の八王子市と三鷹市も、市内のいくつかの小学校で7時半から校庭を解放しているということです。八王子市は地域住民や保護者が数人で見守りをしています。三鷹市は市のシルバー人材センターに職員を依頼しているということです。他にもいくつか事例があるのですが、民間に依頼するところもあれば、地域団体やボランティアなど、色々な方法があるのかなと思います。
ユージ:「朝の小1の壁」。塚越さんは、どうご覧になりましたか?
塚越さん:課題があるなということが分かりますし、補助金がこれから出るということなので、こういった対策が進んでいくかなと思います。一方で、共働き世帯が増えたことだけでなく、色んな制度や習慣が変わっていますよね。なかなか制度が追いついていないことがあるのかなと思います。例えば、最近は「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」という言葉がありまして、あまり聞いたことがない方がいると思いますが、発達や認知の特性を「違い」として尊重しようという考え方です。その一例を挙げると、人には朝型と夜型=クロノタイプがある程度、遺伝的に決まっていることが科学的に分かってきました。そう考えると、夜型の人にとっては8時の登校がきつく睡眠不足になるということです。これが、遅刻に繋がってそこから不登校になるケースもあります。そう考えると、今回の「朝の小1の壁」で、朝7時から早めに学校に行って待機できる場所も必要ですよね。逆に言うと、朝が苦手でゆっくり登校した方がいいお子さんもいます。これは単なる「甘え」ではなくて、科学的に理解されつつある「公平性の問題」です。これ、「みんなに合わせた柔軟な登校」にするのは難しいですよね。親や子供にいろんなところでしわ寄せがきます、なかなか制度を大胆に変えるのが難しいというのが全体の問題です。学校の制度だけではなく、今回の問題でも企業も在宅やフレックスといった働き方にしたり、地域の支援体制、教員の労働環境などをどんどん変えていかないといけません。でも人材が足りない。構造的な問題でなかなか難しいですが、全部の問題が繋がっているんだと思っていただけると、お子さんがいない方もこれを聞いて社会全体の問題で「朝の小1の壁」があるんだ、ということを考えていただければいいなと思います。
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