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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.06.05

選挙のSNS偽情報対策、有権者は情報をどう選べばいいのか?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「選挙のSNS偽情報対策、有権者は情報をどう選べばいいのか?」

吉田:「選挙制度に関する各党協議会」の会合が、4日に行われ、与野党で選挙に関するSNS上の偽情報対策を協議しました。夏の参議院選挙を前に、SNS選挙のルールはどうなっていくのでしょうか?塚越さんと考えます。


ユージ:塚越さん、まずは韓国で行われた大統領選挙でも、SNSの偽情報が問題になっていましたね。


塚越さん:そうですね。世界中でいろんな「フェイク」がはびこっているわけですが、3日に行われた韓国大統領選では、SNS上でAIによる「ディープフェイク」が、これまで以上に増えました。去年の総選挙と比べると20倍〜25倍になっています。およそ1万件の削除要請が出されるなど、大きな社会問題になっています。韓国では、選挙の日の90日前からフェイク動画の作成拡散が禁止されるように取り締まりが強化されました。結局は、いたちごっこの状態となりました。


吉田:では、他国のSNSの偽情報対策は、どうなっていますか?


塚越さん:例えば、アメリカでは州ごとにディープフェイクの規制法案が広がっていて、現状では25の州で規制法案が審議もしくは成立しています。FacebookやInstagramの運営元の「Meta」は、AI合成動画にラベルを表示したり、YouTubeは選挙妨害につながる動画の削除を明文化しています。だからといって裏道はいくらでもあります。デジタル領域の規制が厳しいEUでは、去年成立した「デジタルサービス法」によって、大手SNSの運営は、選挙期間中の偽情報ディープフェイクの拡散防止が法的に義務化されます。違反すると高額の罰金も課せられます。また偽情報対策で重要なのは、どういうルールで情報を削除したのかなど、その基準などをある程度公開する、説明責任があると明記しています。偽情報対策に関するデータをファクトチェック機関や研究者に情報を開示する義務があるので、企業だけでなく社会全体で対策を考えることもできるようになるかなと思います。


ユージ:では、今回日本ではどんな対策が考えられたのでしょうか?


塚越さん:今回の与野党協議では、SNSの事業者に自主規制を求めています。例えば、偽情報で注目を集めて収益を「稼ぐ」投稿者に対しては、支払いを停止するといった処置や、あるいは候補者などから投稿の削除を受け付ける体制を整備すること。また、生成AIで作成した画像であることを警告表示するといったことを求めます。ただ、何でもかんでも投稿を削除することは、「表現の自由」に抵触する可能性もあるので、投稿の削除に関しては、逆に投稿した人からの異議を受けつけつつ、場合によっては復活させる仕組みも必要と記載もしています。要するに、「これが偽情報だ!」とバシッと決めるのは、なかなか難しいということですね。ただEUなどに比べると、日本はSNS事業者側の「自主規制」を求める傾向が強いです。EUはかなり法的に罰則などを強く行っているので厳しい態度がある。この違いはあるのかなと思います。一長一短あると思いますが、私はEUのように事業者が行った削除の情報などをファクトチェック機関や研究者に開示することで、長期的に偽情報への対処を社会全体で防止できる仕組みづくりの土台はつくった方がいいかなと思います。実際、4日の協議でもEUの対応を参考にする案も出ています。そのあたりは、ちょっと気になるところかなと思います。


ユージ:塚越さんは、SNSの偽情報対策で大事なことは何だと思いますか?


塚越さん:この手の話題になると、まず皆さんが言うのが「ネットリテラシー」を鍛えましょうということです。


ユージ:言いますね。皆さん自身が鍛えていきましょうと言いますよね。


塚越さん:そう!騙されないようにしましょう、と言っています。分かる、分かるんですけど無理です!どんどん巧妙になっていくので、諸外国をみても罰則規定をどんなにやってもいたちごっこなのは良くないことですがしょうがないことです。


ユージ:今、みなさんネットリテラシーが高い方じゃないですか?


塚越さん:高いですよ。それでも、難しくなっています。そういう意味で、私がいつも言っているのが「騙されることを前提にする」ということです。人はいつか騙されます。僕は専門家ですが、それでも騙されることがあります。騙されて間違いを言われたときに、恥ずかしい気持ちになります。逆にそういう記憶があるからこそ、隠したくて誰かが騙されたときに「騙されちゃって!」と言ってしまうケースがあると思います。誰かを叩いているネットの言論空間の少なくない場面です。そういう心理が働いているのかなと。自分も騙されて、「言いたくない!」「恥ずかしい!」となり、人が騙されるときに強く言っちゃうこともあります。となると、大事なのは素直に「これは騙されちゃった」とか、「これはこういうふうに思ってたけど騙されたから考えを変えます」など、そういうことが許される社会に事情があって「騙されちゃったんだな」と思うことが大切です。心理的に気分が良くないときは騙されやすくなるので、専門家もSNSに入っていき一緒に対策を考えることも必要かなと思います。それ自体は、なかなか難しいです。例えば、アニメ「鬼滅の刃」では、鬼は元々人間で何で鬼になったのか理由があるわけです。人間が強く何かいう時には理由があるということをみんな考えたうえで騙されることがあるけれど、皆さんが騙されたことを言えるような社会にして、少しでも底上げをできるようにできたらいいなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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