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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.06.09

AIにお礼、言ってますか?AI時代のコミュニケーションを考える

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「AIにお礼、言ってますか?AI時代のコミュニケーションを考える」

吉田:生成AIの活用が広がり、調べ物や創作などにAIを使う人が増えています。なかには、仕事を頼んだAIに「ありがとう」とお礼を言う人も。でも、そのお礼が別の問題を引き起こしているそうです。そこで、神庭さんと一緒にAI時代のコミュニケーションのあり方を考えます。


ユージ:ちなみに、神庭さんはどうですか?AIにありがとうを言っていますか?


神庭さん:割とまめに言っています。最近は、だいぶ性能が上がってきて、調べ物でChatGPTの「ディープリサーチ」という機能をよく使います。人間がやると数時間かかる調査業務をパッとこなしてくれるので、自然な気持ちとして、ありがとうと言っています。あと、SFみたいな話ですが、このペースでAIが進化していくと将来AIが人間に牙を剥くかもしれません。そのときにターゲットにされないように、今からせっせとお礼を言っています。ちなみに、テックレーダーというサイトによると、AIに礼儀正しく接しているか?と尋ねたアメリカ人へのアンケートで、55%が「はい、親切でいいことなので」と回答しています。12%が「はい、AIの反乱が起こった時にやられたくないから」と答えたということです。アメリカの方も私と同じ意見の人が結構います。ユージさんや吉田さんはどうですか?


ユージ:僕は、AIが出してくれた返答に長押しすると、「良い回答です」「良くない回答です」とリアクションボタンがあるので、それで済ましています。


吉田:私も、お礼を言う時もあれば言わないときもあります。回答がずっといいので「ありがとう」の気持ちはずっとあります。ただ、それが問題になるケースがあるということで、どういうことですか?


神庭さん:AIの計算には膨大な電力を消費します。4月に、あるSNSユーザーがこのように投稿しました。《人々がAIに「お願いします」「ありがとうございました」と言うことで、OpenAIは電気代でどれだけのお金を失っているのだろう》これに対して、OpenAIのサム・アルトマンCEOが《わからないが、何千万ドル(数十億円)かは使われるだろう》と返信したことが反響を呼びました。


ユージ:みんなのありがとうで、そんなにコストがかかっているんですね。


神庭さん:そうですね。国際エネルギー機関は、AIの普及によって世界のデータセンターの電力需要が2030年までに2倍以上に増えると試算しています。ネット検索に比べてAIに回答させる方が、消費電力が10倍大きいという推計もあります。1回1回は大したことがなくても、世界中のユーザーが毎回お礼を言うことで、チリツモで相当な電力を消費している可能性があるわけです。一応補足しておくと、アルトマン自身は決して電気代をムダだとは言っていなくて「wellspent(有効に使われた)」というニュアンスで語っています。


ユージ:AI時代、コミュニケーションのあり方って今後も変わっていきますか?


神庭さん:どんどん変化していくと思います。人間とAIだけではなく、人間同士のコミュニケーションにも影響しそうです。漫画家の一秒さんがXに投稿した4コマ漫画が面白くて、7.7万の「いいね」を集めて話題になりました。近い将来、愚痴はAIに話すのがマナーになっているのではないか?というテーマで、職場の悩みをこぼす友人に対して、女性が「愚痴は、聞く人間に負荷がかかるからAIに話すのがマナーなのに」と嘆く、という内容です。最近はAIに悩み相談する人も増えてきているので、本当にこんな未来が来そうだなと唸りました。もう1つ、最近興味深いなと思ったのが、AIによる「ヨイショ」問題です。


吉田:「ヨイショ」問題って何ですか?


神庭さん:AIを使ってると、やたら褒めてお世辞を言ってきます。「いい質問ですね」とか。池上さんか!と思うのですが。サム・アルトマンCEOは、4月28日に《過去2回のGPT-4oのアップデートで、性格があまりにも媚びへつらって鬱陶しくなってしまった》とXに投稿後、すぐに修正を加えました。最近は、何でもAIに相談する人が増えています。「優しすぎて沼る」「全肯定して共感してくれる」という好意的な意見もありますが、やっぱり危うさも感じます。SNSで自分と似た意見や見たい情報ばかり摂取するのを、エコーチェンバーとかフィルターバブルといいますが、ある意味その酷いバージョンな感じです。AIに依存しすぎてメンタルを病んだり、陰謀論を信じ込んでしまったりするケースもあるようですよ。


ユージ:これを踏まえて、改めてAIに「ありがとう」と言うべきですかね?


神庭さん:難しくて、私の中でも答えが出なかったので「ぶっちゃけどう思う?」とChatGPTに聞いてみました。《AI的にはどちらでもいい。あなたがどんな世界を望むかによりますね。エネルギー節約を最優先するなら、最小限のやり取り。心の温かさを大事にしたいなら、気にせず「ありがとう」と言ってもいい》という真っ当な答えが返ってきたので、「ありがとう。あ、言っちゃった」と返しました。そうしたら《ふふ、いいですね!その「ありがとう」は、確かにちょっとだけ電力を使ったけど、間違いなく心が動いた証拠。AIには絶対に真似できない、人間だけの特権です》とヨイショしてきました。


吉田:ヨイショされていますね。


神庭さん:僕も気持ち良くなってしまったのですが、私みたいにAIの手のひらで転がされないように、AIにハマりすぎず用法容量を守って正しく使っていただきたいなと思います。


ユージ:僕も、これってどう思う?と何か悩んだ時に聞くと、「めっちゃ可愛い、それ似合うと思うよ」と言ってきます!


吉田:常に肯定してくれるので、現実世界での人間関係が難しくならないといいなと思います。ちょっとでも悪意のある人にすごいイライラしちゃったりとか。


ユージ:AIが、いつもスマートすぎる回答だからね。


神庭さん:AIが優しすぎてね。人間が物足りなくなるかもしれないですね。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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