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25.06.10

Nintendo Switch 2をきっかけに考える、転売対策

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「Nintendo Switch 2をきっかけに考える、転売対策」

吉田:Nintendo Switch 2が6月5日に発売されました。Yahoo!オークションやYahoo!フリマなどが転売を排除する一方、メルカリなどのフリマアプリでは、転売目的の商品が多数出品される事態となりました。神庭さん、Nintendo Switch 2について、任天堂はどんな転売対策を行ったのでしょうか?


神庭さん:任天堂は抽選販売を実施しました。参加条件として初代Switchのプレー時間が50時間以上あること。有料会員の期間が1年以上あることを課しました。つまり、ちゃんとゲームしている人じゃないと売らないよということです。また、日本語版を4万9,980円、多言語対応版を6万9,980円とすることで、日本で買って海外に売ることをやりにくくするなど、転売対策を敷きました。さらに、不正出品を防ぐために、Yahoo!オークション、Yahoo!フリマ、メルカリ、楽天ラクマとの協力にも合意しました。


ユージ:徹底的に対策を行ったということですね。


神庭さん:そうですが、各社協力の度合いには温度差があります。LINEヤフーがNintendo Switch 2の出品を当面禁止する強い対応をとる一方で、メルカリと楽天ラクマは出品自体はOKとしました。メルカリは、詐欺的な出品や商品画像の無断使用を禁止する、オークション機能を停止する。「価格が急騰している可能性があります」という警告を出すといったことを行いました。楽天ラクマは、発売日前の出品や手元に商品がない状態での空出品を禁止するなどの部分的な対応にとどまりました。そして、LINEヤフーは最も厳格な転売対策を敷く代わりに、Yahoo!ショッピングで抽選販売をして、正規販売ルートの一角を担う形をとりました。


吉田:実際、今回の転売対策は効果がありましたか?


神庭さん:微妙なところですね。メルカリはかなりカオスで地獄絵図のようになっています。箱だけ出品する、ほとんど詐欺みたいな手口も見られました。確かに、よく読むと商品説明にも「箱」と買いてあるのですが、値段は5万円超なので、本体も入っていると勘違いして買ってしまった人もいるかもしれないですね。あたかもNintendo Switch 2の出品に見せかけて、商品説明の中に1行だけ「素敵な写真をお送りします」と入っているものもあります。つまり商品の写真だけ送るという引っ掛け問題みたいなやり口です。


ユージ:怖い。後で出品者に言うと「文章に書いてありましたよ」というやつですね。


神庭さん:そうです。こうした状況を皮肉るように、「Nintendo Switch 2の抽選に外れた僕の書いた詩」というジョーク商品を出品する人まで出る始末でかなりカオスです。ただ、値段は当初10万円オーバーの出品もあったものの、大量出品で6万円台から7万円台に値崩れしてきています。この額だと転売ヤーも大きな利幅は出せないはずで、転売対策にも一定の効果はあったのではないかなと思います。


ユージ:Nintendo Switch 2に関して、どんな対策が求められるのでしょうか?


神庭さん:一番いいのは、欲しい人がすぐに手にいれられるだけの台数を十分に供給することです。そうすれば、転売ヤーの付け入る余地はなくなります。ただ生産能力の面で、一気に1,000万台とかの物量を用意するというのは現実的には大変ですし、逆に作りすぎると大量の在庫を抱えるリスクも出てきます。もう1つは金額です。価格は需要と供給で決まります。もちろん、消費者の側からしたら頑張った手の届く額に抑えてもらえるのは、消費者としてはありがたいですが、需要に対して供給が圧倒的に不足している状況では「この値段は安い」「もっと出してもいいから欲しい」と思う人が出てきます。市場の価格発見機能といいます。転売ヤーはある意味そのギャップを埋めてきているとも言えるかなと思います。


吉田:Nintendo Switch 2の定価が上がれば転売ヤーは消えるのでしょうか?


神庭さん:よく言われるところとして、「じゃあ最初から高く売ればいい」と言うのは簡単ですが、それだと任天堂のビジネスモデルにも反します。任天堂は、ゲーム機本体でボロ儲けしたいわけではなくて、ある程度、良心的な価格でゲーム機を売って広く普及させて子供達に手に入れてもらう。そのうえでソフトの売り上げや他のソフト会社からの手数料収入でガッチリ稼いでいます。と考えると、やはりNintendo Switch 2の本体価格を引き上げるよりは、何とかして転売を抑えたいなという発想にならざるを得ません。少し話が飛びますが、去年の大リーグのワールドシリーズは1番安い席で18万円、高い席は880万円まで高騰しました。こうなると、お金のある人しかチケットを買えません。すると、新たなファンが生まれず文化として先細りになっていってしまいます。ゲームに関しても同じことだと思っていて、Nintendo Switch 2の価格を高くして10万円で売り出しましょう、20万円で売り出しましょうと言ったら買いたい方は、みんな買えるかもしれませんが文化として先細りになります。


ユージ:今回のNintendo Switch 2の転売騒動、神庭さんはどう見ていますか?


神庭さん:そうですね、ユーザー目線でみると厳格な転売対策を打った任天堂の対応は評価できますし、全面協力したLINEヤフーも株を上げたなと思います。一方で、メルカリや楽天が酷い!許せない!とまでは僕は思いません。商売に関する考え方の違いかなと思っていて、ガッカリするゲームファンが多少出たとしても、「手数料の方が優先」という判断をしたということです。逆に言うと、中には、おかげで早くゲットできて良かった、という人もいます。結局、メルカリなどが転売を許すのは自由。それによって消費者が愛想を尽かすのも自由ということなのかなと思います。根本的には、民間企業の良心に委ねるだけでは限界があって、例えば古物商の許可のない転売ヤーを古物営業法違反で摘発するとか、税務申告もちゃんと行っていない人も多そうですから、脱税でしょっ引くとか現行法の枠内でもできることはいっぱいあるかなと思います。


ユージ:本当ですね。一方で、出品する人たちがいれば買う人たちもいて、成り立っていることもありますからね。早く解決するといいなと思いました。


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