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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.06.11

コメの『生産調整』、政府が見直しへ…新たな所得補償も検討

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【コメの『生産調整』、政府が見直しへ…新たな所得補償も検討】

吉田:読売新聞によると、政府は、コメの価格高騰を受け必要な生産量確保のため、事実上の減反にあたる「生産調整」を見直す方針を固めました。コメの価格下落で農家が経営難に陥る事態を防ぐ観点から、新たな所得補償の実施も検討する、ということです。塚越さん、まずは「コメの生産調整」と、その見直しについて、詳しく教えてください。


塚越さん:最近の報道でよく知られましたが、日本は1971年からコメの減反政策を2018年に廃止されるまで続けました。その後も農水省は生産量目安を示していたり、コメから麦や大豆に転作する農家へ補助金を出すなど、いわゆる「生産抑制」の状態が続いていました。人口も減る日本なので今後需要が一気に増えるとは思いつつも、少なくとも最近のコメの需要を見誤ったと言われている中、この政策を見直す動きが自民党内からも出ています。そこで石破総理はコメの増産を進める一方、コメが余って価格が下落して、農家さんの手取りが生産費を下回った場合、農家への所得補償制度をセットで検討しています。


吉田:石破総理は、農林水産大臣だったとき、「生産調整」の見直しを訴えていたので、今回は再挑戦ということですか?


塚越さん:そうです。石破総理が農水大臣だった2009年に、生産調整の緩和と所得補償のスキームに関する論文を書いていて、以前から農業改革を求めていました。ただ2009年当時は、自民党のいわゆる「農水族議員」を中心に猛反対され、実現しませんでした。なので、石破総理自身は農水族議員でもありますが、考え方は主流から外れている方です。今でも石破総理は、この考えを重視しており、今回は小泉大臣と連携して推進する動きもあるということです。一方で、これに反対しているのが今回も「農水族議員」です。中でも農水族のドンと呼ばれるのが「森山幹事長」で、6月5日に群馬県で行われた会合の中で、コメが安くなればいいというだけでは食の安全保障は成り立たないと、釘を刺しています。このあたりは、小泉大臣が備蓄米を随意契約に切り替える際、自民党の農水部会といった、党内の正式な手続きを行わなかったということで、農水族議員から批判があるということです。ただ、その後、小泉大臣は森山幹事長と話し合うこともあり、メディアがいわゆる「対立図式」にするのはよくない、といった発言も小泉大臣はしています。その後もコメの増産を訴えたり、輸入米についての発言もあるので、政府自民党の中でも対立や駆け引きがあるのは事実かなと思います。


ユージ:あとは、農家の「所得補償」の実施も検討する、ということですが、どこまで補償するのか、ルールを決めるのは難しそうですよね。


塚越さん:そうですね。先日の予算委員会では、野党が農家への所得補償を求めると、石破総理も必要性を認めつつも、すべてを補償すると政策が成り立たなくなるとも述べています。その上で、例えばコストを下げる努力に対して補償するとか、様々な方法を議論すると言っていて、関係閣僚会議でも政策を検討するよう指示しました。所得補償制度は、民主党が政権をとった時期にも実施されましたが、方法については批判もあり、自民党政権になってから廃止されました。このあたりは、やるとなれば実際に国会で与野党含めて議論して欲しいかなと思います。


ユージ:「コメの生産調整、見直し」と「コメ農家の所得補償」。塚越さんは、どうご覧になりましたか?


塚越さん:どこまでするかは別にしても、ある程度、生産調整と所得補償を緩和して、将来的に輸出を広げていくことは長期を見ても大事だと思います。一方で、農家といっても大規模農家と中小兼業農家ではかなり差があります。数え方にもよりますが、いわゆる大規模農家は全体の10%もありませんが、農業売上の4割程度を占めていて、すごく多いです。生産性もかなり違う兼業農家さんですが、農家さんの数でいうと中小や兼業農家さんが圧倒的に多いです。農家さんの中にもいろいろなタイプがあります。今後、大規模農家を増やして生産性を上げる議論がありますが、そもそも農業人口が減っていることもあります。農家さんがどこまで対応できるか、推し進めることはできるのかという話があります。個別補償の範囲をどうするかなど、かなり細めて慎重にやっていかないと上手くいかない部分もあるのかなと思います。ここが、肝なのかなと思います。もう1つ、最近思うのが自民党の中の争いです。小泉大臣がフューチャーされて、色んな対立図式があります。農水族と小泉大臣の対立があると思いますが、ちょっと振り返ると元々の自民党の減反政策のツケという部分が今回のコメ不足にあるわけです。気付くと、小泉大臣がこの対立の図式を強く言えば言うほど、炎上します。そこを我々メディアがフューチャーしすぎるのはよくありません。コメ政策の話をちゃんとやって今後の将来の日本の絵をちゃんと考えなければいけません。メディアが、言いすぎるのも僕はどうかなと思っていて気をつけないといけないなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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