25.06.16
ボーナスの給与化は得か損か?
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
「ボーナスの給与化は得か損か?」
吉田:今月、ボーナスが出るという方も多いと思いますが、ソニーグループや大和ハウス工業、バンダイなど、日本を代表する大企業がここ数年、相次いで賞与の給与化を進めています。そこで今朝はボーナスを給与化するメリットとデメリット、そして企業側の狙いについて神庭さんに解説してもらいます。まずは、会社がボーナスを給与化する狙いについて教えてください。
神庭さん:人手不足のなかで優秀な若手人材、特に新卒を獲得するための競争力を高める狙いがあります。ソニーグループは冬のボーナスを廃止して、その分を月々の給与と夏のボーナスに振り分けることにしました。結果、新卒社員の初任給は、3万8,000円上がりました。賃上げ分の1万円も合わせると4万8,000円のアップです。大和ハウス工業もボーナスと給与の配分を見直し、新卒初任給を25万円から35万円に大幅アップさせました。バンダイも2022年にボーナスの一部を給与に回すことで、初任給を22万4,000円から29万円へ約30%引き上げています。求職者は月給に着目する傾向にあるので、ボーナスも合わせた年収ベースでは大きく変わらないとしても、月給が高い方が見栄えがいい、ということですね。
ユージ:働く側にとってのメリットは何かありますか?
神庭さん:メリットの1つ目は、家計が安定して資金計画が立てやすくなることです。ボーナスは業績に応じて上下しますが、基本給は変動するリスクが低いです。住宅ローンや教育費なども支払いやすくなるのかなと思います。2つ目のメリットは、こんな会社辞めてやる!と思った時にいつでも時期を選ばず転職できることです。ボーナスが貰えるのは嬉しいですが「黄金の手錠」という言葉があって、ボーナスがあるが故に、退職・転職の判断が制約されることもあります。そういう拘束がなくなります。3つ目のメリットは、人によって社会保険料負担が下がることです。ABEMAニュースが報じた社会保険労務士の藤井貴子さんの試算によると、年収1,000万円の40歳の会社員が月給に加えてボーナスを年2回受け取る場合、年間の社会保険料は約148万円。これがボーナスなしで12分割で受け取ると128万円超で済むので20万円弱浮く計算です。年収500万円の場合でも、ボーナスなしの方が2万円ほど安くなるそうです。ただ、給与とボーナスの比率など前提条件によっても得か損か変わってくるので、そこはご注意ください。
ユージ:デメリットはどうでしょうか?
神庭さん:住宅ローンをボーナスの時に多めに返している人は、返済計画を見直す必要が出てくると思います。もう1つは、やる気やモチベーションの面です。ボーナスに比べ基本給はあまり下ブレしないかわりに、すぐに上がることも少ないです。ボーナスの額が個人の達成度、貢献度に応じて決まる会社の場合、ボーナスがなくなったり減ったりすると、やる気が削がれるケースも出てきます。あとは、デメリットとまで言えるか分かりませんが、ドカンと大きなお金が入ってくる方が嬉しいとか、ボーナスがないと「ご褒美感」がなくなって、大きな買い物や旅行などを検討する機会が減る、消費意欲が減退するという人も中にはいるかもしれないですね。
吉田:では、会社側のメリット、デメリットはどうでしょうか?
神庭さん:先ほど申し上げた通り、人材獲得力が高まるのは企業にとってのメリットです。総人件費を増やさずに、ある意味数字のトリックのような形で月収を増やすことができます。安定志向の社員・従業員にとっては嬉しい話ですから、会社への定着にも繋がるでしょうね。一方のデメリットは、業績が悪化した際の調整弁がなくなることです。ボーナスは業績次第で下げればいいですが、基本給は下げにくいですよね。不況期などに人件費が重荷になるリスクがあると思います。もう1つは、インセンティブがなくなって労働者のモチベーションが下がることです。加えて、ボーナスという「黄金の手錠」の引き止め効果がなくなることで、時期を選ばずポロポロ社員が辞めてしまう可能性はあります。ただ、こういう人はたとえボーナスがあったとしても、どうせ半年後には辞めていたわけなので、たいして変わらないという考え方もできるかなと思います。
ユージ:結局ボーナスの給与化は得なのか、損なのかどっちでしょうか?
神庭さん:人によるとしか言いようがないです。多くの労働者にとって、メリットの方が大きいのではないでしょうか。今後追随する企業も増えると思いますが、数字のマジックでボーナスを給与に付け替えるだけでは意味がないと思っています。一歩踏み込んで、ボーナスってそもそも何なのか?をよく考えた方がいいと思います。多くの日本企業ではボーナスが単に賃金の後払いだとか、給与の延長線上で捉えられがちです。社員みんなが貰えて、金額であまり差がつかないという会社も結構あるのではないでしょうか。対照的に、外資をはじめとした成果主義の企業では、業績や個人の成績に連動したインセンティブとして運用されています。ボーナスをなくすのであれば、代わりに年俸制を導入して、年俸の額を能力や成果と連動させるとか、社員のやる気を引き出すためのプラスαの工夫が欲しいなというところです。新卒を誘い込むための小手先の給与改革ではなく、年齢に関係なく頑張って成果を出した人が報われるような、公平な報酬制度を実現していくことが大切じゃないかなと思います。
ユージ:本当ですね。個々に合った企業体制、柔軟なシステムが求められてくるのかなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) June 16, 2025
テーマは「『ボーナスの給与化』は得か損か?」
今朝は神庭さんにボーナスを給与化するメリットとデメリットを解説していただきました。…
#ユジコメ ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) June 16, 2025
デメリットとしては、住宅ローンなどボーナス払いを利用している場合は返済計画を見直す必要があることと、
ボーナスという「ご褒美感」がなくなって、やる気が削がれたり、ボーナスを使っての消費意欲がなくなってしまうという気持ちの部分への影響が大きくあると思います。#ワンモ
#ユジコメ ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) June 16, 2025
給与化で一定でもらいたい人、ボーナスとしてまとまった形でもらいたい人、これについては人によって変わってくると思います。それぞれが望んだ給与体系が選べることが1番ベストですが、企業としては個別対応を管理することは難しいと思います。#ワンモ
#ユジコメ ④
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) June 16, 2025
実は僕の周りの企業では、それぞれの給与体系が違うというところもすでにあったりするので、実現は可能だと思います。会社での制度の整備・設計が必要にはなってくると思いますが、給与については個別に対応できることが1番理想なのかなと個人的には思います。#ワンモ