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25.06.17

年金制度改革法が成立、その内容と課題

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「年金制度改革法が成立、その内容と課題」

吉田:先週、年金制度改革法が参議院本会議で可決・成立しました。神庭さん、まずは今回の改革法のポイントを教えて下さい。


神庭さん:1つ目は「106万円の壁」の撤廃です。年収106万円になると厚生年金の社会保険料を納めないといけなくなるので、年の瀬が近くなると106万円にならないように就業調整をするパートやアルバイトの人が多発していました。これは国が率先して「もう働くな」と言っているようなもので、社会全体にとって非効率です。なので、働き控えをなくすために「年収106万円以上」という賃金要件を3年以内になくすことにしました。そして、「従業員51人以上」という企業規模の要件も段階的に緩和して、10年後には撤廃するということです。


ユージ:そうなると、必然的に手取りが減る人も多くなりそうですね。


神庭さん:そうですよね。180万人が新たに厚生年金に加入する見通しになっています。いわゆる主婦年金、第3号被保険者を減らして、自分で厚生年金保険料を払う人を増やしたい、というのが国の本音ではないでしょうか。一方で「週20時間以上」という労働時間の要件は残りましたので、今後は106万円の壁から「週20時間の壁」になります。どうしても社会保険料を払いたくない人は、週19時間までに労働時間を抑えることになります。


吉田:ポイントとして、基礎年金の「底上げ」についても話題になっていました。これはいかがでしょうか?


神庭さん:自民・公明・立憲の合意に基づいて、基礎年金の「底上げ」をすることを法律の付則に盛り込みました。年金は3階建てになっていて、1階が「基礎年金」。自営業者や主婦・学生も含めて、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が入ります。そして2階が会社員や公務員が加入する「厚生年金」です。こちらは報酬によって増減します。年金財政の検証結果によると、今後30年ほど0%前後の経済成長が続くと仮定した場合、2階の厚生年金は比較的余裕があるものの、1階の基礎年金は2057年度までに現在の水準から3割ほど低下してしまう見通しになりました。そこで、氷河期世代の低年金を防ぐために2階にあたるサラリーマンの厚生年金の積立金からお金を流用して、1階の基礎年金を「底上げ」することにしました。


吉田:これについては批判もありました。成立した背景は何でしょうか?


神庭さん:厳しい批判もあって、「厚生年金の横流しは横領」「人が貯めたお金勝手に使うとか泥棒」などネットの反発は根強く、自民党は当初、底上げを見送る方針でした。ところが、立憲民主が「あんこの入っていないあんぱん」だと批判し、修正案を提案して自民・公明がこれを丸のみしました。朝ドラに引っ掛けたのかもしれないですが。もちろん、あんぱんを貰えて嬉しいという人もいるかもしれませんが、僕は盗んだあんこであんぱんをつくるのは大問題だと思います。サラリーマンはATMじゃないぞ、と言いたいですね。


ユージ:他の変更点で注目ポイントは何でしょうか?


神庭さん:結構、重要な変更が目白押しです。高所得者の保険料引き上げがあります。ボーナスを除く給与収入が年798万円以上ある会社員の保険料を段階的に引き上げ。最大で月9,000円の負担増になります。ボーナス抜きとはいえ、年収798万円。ボーナス込みだと1,000万超ですから。取れるところから取る発想は、いいことなのかどうかということです。もう1つが、「在職老齢年金」の見直しです。高齢者が働きながら年金を受給する際に、一定以上の収入があると年金が減額・停止されます。その支給停止の基準額を今の月50万円から62万円に引き上げます。もう1つ、iDeCo加入年齢を「65歳未満」から「70歳未満」に引き上げる。遺族厚生年金の支給条件を男女で揃えるといった改革ポイントが出てきます。


ユージ:いろいろと重要なところが変わってます。一度、時間を作って、自分で確認した方がいいですね。


神庭さん:関わるところは、チェックした方がいいと思います。


ユージ:今回の年金改革について、神庭さんはどう見ていますか?


神庭さん:大きく2点、指摘したいです。1つ目はいい加減正直に話そうよ、ということ。「年金があれば老後は安心」というのは大きなミスリードです。「基礎年金だけではとても食べていけないから、別途貯蓄なり投資なりして備えてくれ」と国はハッキリ言うべきだと思います。「一時的に負担が増えても後でもらえる年金も増えるよ」とか、「流用っていうけどサラリーマンの基礎年金も増えるんだからいいじゃん」とか、政府は聞こえのいいことばかり言います。サラリーマンは自己負担だけでなく、事業主負担も合わせると、実質2倍の保険料を払っています。それも含めて、本当にお得と言えるのか?ウソ偽りなく正直に話して欲しいなと思います。


吉田:もう1つは何でしょうか?


神庭さん:2つ目は公平な負担です。厚労省は二言目には助け合い、支え合いだと言いますが、現役世代の方々には、これが「奪い合い」に聞こえています。サラリーマンだけが歯を食いしばって「カラダもってくれよ!リーマン界王拳10倍だっ!」と叫んでいる状態です。助けて欲しいのは現役世代の方だよと思っている方も多いと思います。もちろん、本当に困っている人は助けるべきだと思いますが、再分配というのは保険ではなく税金でするものです。「底上げ」したいなら全世代が公平な税負担で手当てするのが筋じゃないかなと思います。1階の基礎年金を100%税負担の最低保障年金にして、生活保護と一体的に運用するとか。本来なら大手術が必要な話です。「おいしいあんぱんが焼けたよ。つぶあんかな?こしあんかな?」じゃなくて、パン工場を土台から建て直すくらいの抜本的な改革をしなくてはいけません。そこに、ぜひ踏み込んでいただきたいなと思います。


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