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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.07.15

不動産価格上昇の背景と対策のあり方

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「不動産価格上昇の背景と対策のあり方」

吉田:東京都心を中心に、マンション価格の高騰が止まりません。石破総理は10日、「日本人が普通に働いて23区で部屋を持てないとすればおかしい」と発言。参院選でも外国人による不動産購入に対する規制をめぐって議論が活発化しています。神庭さん、近年、高い高いとよく聞きますが都心のマンションはどれくらい値上がりしているのでしょうか?


神庭さん:昨年、売りに出された東京23区の新築マンションの平均価格は1億1,181万円ということです。2年連続の「億超え」です。


JOY:えー!買えないよ。


神庭さん:2014年は6,000万円弱だったので、ほんの10年で1.8倍以上も値上がりしたことになりますね。


JOY:価格の上がり方、怖いですね。


神庭さん:パワーカップルの定義は色々ありますが、仮に世帯年収1,400万円のパワーカップルだとしても、ここまで高くなるとなかなか手が届かない。多くのサラリーマン世帯にとっては東京23区に家を買うのは夢のまた夢、みたいな状況になってきています。インフレや人手不足で建築コスト上がっているのもありますが、投資・転売の活発化や外国人マネーの流入も高騰に拍車をかけていると言われています。


JOY:本当、すごい価格になっていますが、どうして外国人に日本の不動産が人気なんですか?


神庭さん:特に、東京・湾岸のタワーマンションは中国の方に人気があります。中国では個人が土地を所有することができません。ですから、政治体制やルールの変更である日突然、財産が没収されるみたいなことも起こるかもしれません。中国人富裕層には、資産を安全に国外に逃したいという欲求があります。彼らからすると「安いニッポン」である、東京の不動産は非常にお買い得に映ります。上がったとはいえ、ニューヨークやロンドンに比べるとまだまだ安いということで、「潤」(ルン)といって、資産だけではなく、自分自身が日本に脱出、移住することを目指している方もいます。中国の厳しいゼロコロナ政策や規制の締め付けに嫌気がさした人もいます。中国は、教育競争が非常に過酷なので日本の方が楽だからということで、子供の教育のために日本にくるという方もいます。単に投資用ではなく、自分が住むために湾岸タワマンを買っているという方もいます。


吉田:外国人の不動産購入が増えているのは東京だけの話なんでしょうか?


神庭さん:実はそんなことはありません。北海道のニセコや長野県白馬村など、外国人に人気のスキーリゾートでは、不動産価格もガンガン上がっています。1日に発表された路線価で、白馬の上昇率はなんと32.4%。2年連続で全国1位となりました。絶大な経済効果の一方で、地元住民との間で摩擦も起こっています。外国人観光客が夜中に騒ぐ、ゴミを放置するといったトラブルもあるといい、日経新聞は地元住民の声として「隣町よりもスーパーの食品やガソリン価格も高い。住みづらくなっている」「もう自分の生まれ故郷とは思えない。引っ越しも考えないと」といった悲痛な声を紹介しています。


JOY:地方も無関係の話ではないですし、いいことばかりではないんですね。そもそも日本では外国人の不動産取引に規制はないのでしょうか?


神庭さん:2021年に重要土地利用規制法という法律が成立して自衛隊や米軍の基地、原発の周辺1キロ、国境に近い離島など安全保障上、重要なエリアに関しては、国が土地所有者の名前や国籍を調べられるようになりました。特に重要度が高い「特別注視区域」では、200平米以上の土地を売買する際に事前の届出が必要になります。ただし、それ以外の不動産取引については、外国人の購入に対する規制はほとんどなく世界的にもガバガバだと言われています。


吉田:海外では規制がありますか?


神庭さん:カナダでは、自国民が住宅を手に入れやすくするため、2023年から外国人の住宅購入を禁止しています。シンガポールも同じ年に、外国人が住宅を買う際の印紙税を30%から60%に倍増させました。1億円の物件を買ったら、6,000万円の税金がかかります。オーストラリアでも最近、外国人投資家が中古住宅を購入することを禁止しました。各国、かなり厳しめの対策をとっています。


吉田:日本はどうしたらいいのか、神庭さんはどんな対策が必要だと思いますか?


神庭さん:例えば、日本人は中国の土地を購入することができません。外交は「相互主義」が基本なので、中国の方が日本で不動産を購入する際に何らかの制約を設けることは一定の合理性があるかなと思います。シンガポールのように税率を調整するのも1つの手段です。一方で、いきなり外国人の不動産購入を全面禁止するような強すぎる規制をかけるのは危険かなと思います。不動産バブルが崩壊すれば、外国人だけでなく日本人の不動産投資家も含み益が吹っ飛び、景気が一気に冷え込んでしまいます。日本は平成バブルの際、地価を下げるために「総量規制」といって金融機関の不動産向け融資を制限しました。結果、地価は下がりましたが不動産バブルは大崩壊し、そのまま失われた30年になりました。それが、さらに伸びて失われた40年にならないように、バランスの取れた規制を行う必要があります。あとは、外国人が日本でペーパーカンパニーをつくって、そこから賃貸するみたいな抜け穴も出るので、それをどう塞ぐか。精緻な制度設計が求められると思います。中長期的には、外国人を排除するよりは日本経済を強くして「安いニッポン」を脱却する。日本人の中間層の所得を増やして、普通にマイホームを買えるようにしていくことが王道かなと思います。


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