network
リポビタンD TREND NET

今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.02.19

理系文系がなくなる?高校教育改革の“グランドデザイン”

null
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


『理系文系がなくなる?高校教育改革の“グランドデザイン”』


吉田:2040年に向けた高校教育改革のグランドデザインが、今月、文部科学省から発表されました。文系と理系がなくなるかもしれない、普通科と専門高校、どちらも“時代に合った学び”に作り替える、『グランドデザイン』について塚越さんに教えていただきます。


ユージ:この『グランドデザイン』とはどんな内容なのでしょうか?


塚越さん:まず、大きいところだと、普通科の文系・理系のバランスの見直しです。現在の普通科では、おおむね文系の生徒が5割、理系が3割で、残り2割は文理に分けていないコースという感じなんですね。これを2040年ごろには、文系と理系の割合をだいたい半々くらいにして、将来的にこうした区分にとらわれない方向性を示しています。例えば、全ての普通科で“情報”や“データ活用”といった文理横断の学びに取り組むことを目標にしています。また、工業や商業、農業などの専門高校では、実験設備を整えたりビジネス経験を増やすなど、“実務的な学び”を強化しましょうということですね。


吉田:『グランドデザイン』の狙いは何でしょうか?


塚越さん:少子化の中で、ただでさえ人材不足なのがAIやデジタルといった分野ですよね。この領域を扱える人材の育成という狙いがあります。理系やデジタルに強い人を増やしつつ、社会や経済も理解できる人材を育てたいということです。今の高校は普通科の多くが文系で、とりわけ、理系の女性が少ないことが課題になっています。数学が苦手だから文系というのは、将来の選択肢を狭めることになるといった問題意識もあるということですよね。また、私立高校の授業料無償化の流れもあって、“公立高校ならではの魅力を打ち出さないと…”という危機感もあるということです。いずれにしても、国も3,000億円規模の基金をつくるので、今後は配分の方法なども詰めていくものだと思います。本格的な実行は、各都道府県が行うということです。


ユージ:学習や就職の面で子どもたちへの影響はどうでしょうか?


塚越さん:これからの公立高校は、1、2年のうちは文系・理系を分けすぎずに、情報やデータ活用、それに関わる『探究』といった授業などを行っていきます。また、地域企業や自治体と一緒のプロジェクトに取り組む機会も増やして、学びの経験を増やしていくという感じですね。一方で、進学や就職についてですが、高校で探究やプロジェクトの成果を増やしていくのであれば、大学入試や企業の採用でも、こうした成果を評価しやすくなる可能性があります。なので、将来的には、これまで以上に筆記試験以外が評価されるようになると考えられます。これについては、大学や企業も評価の仕組みを考える必要があるかと思います。ただ、探究やプロジェクトが多くなると、そもそも高校の学習時間が多くなって負担が増える可能性もありますし、暗記や筆記試験の点数もやっぱり大事かなというところもあり、バランスが難しいところです。さらにいうと、学校や先生の負担が増える可能性もありますね。特に理系に関しては、探究活動を支える専門チームも必要になるので、教員の側の人材も重要になってくると思います。


ユージ:今回の高校教育改革のグランドデザインについて、塚越さんはどう見ていますか?


塚越さん:日本は15歳、中学の段階では国際的に理数系のリテラシーは高いという結果が出ています。なので、本人の意向が一番大事なのは言うまでもないのですが、やっぱり、“理系アレルギー”はなくした方がいいというのもありますし、一度文系か理系かを選ぶとなかなか変えるのは難しいので、1、2年はあまり分けずに広く学ぶのもいいと思います。その上で、15歳の人口は2040年になると今より3割くらい減ってしまう見込みなんですよね。なので、教員不足が叫ばれてますけど、変な話、悪い意味ですけど、教員不足が解消されるかもしれない。なぜなら、子どもが少ないからということですよね…。ただ、そうやって子どもが少なくなると、逆にきめ細かい教育がより重要になります。なので、単なる詰め込み型ではなくて、今も増えてますけど、体験やプロジェクトを増やすのは合理的かなと思います。特に今回の改革案でいうと、AIを使えば暗記や筆記試験の勉強はもっと効率的になるのではないかと私は思っているんですよね。教員の役割も減るので、その分、対話や探究に時間を振り分けるための改革という見方もできるのではないかなと思います。あとは、専門性の高い教員や企業と連携できる人材などの人材育成も大事になってくると思います。最後にですね、日本の場合といいますか、私もそうなんですけれども、日本の学校では、言われたことはすぐにやれますが、自分から何かをするというのは苦手じゃないですか?どうしても空気読んじゃってね…。大学の講義でも、学生を当てるんですけど、それが一番いやだと言われてしまうんですよね。


ユージ:苦手な人多いですよね…。その気持ちわかります。


塚越さん:私もその気持ちわかります。わかるんですけれども、空気を読んで何もできないということよりも、自分からいろんなことをできる人材が一番求められているので、そういったことを探究やプロジェクトで増やしていただけると、大学に入っても、もっともっといろんなことを言ってくれて、それが新しい社会を担ってくれるのではないかと、大学教員としてもそう願っているので、そのあたりの改革も頑張っていただきたいなと思います。

  • X
  • Facebook
  • LINE
Top