26.02.23
トランプ関税に違法判決、日本への影響は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!
『トランプ関税に違法判決、日本への影響は?』
吉田:トランプ関税を『違法』としたアメリカ最高裁の判決を受け、トランプ大統領は20日、別の法律に基づいて、新たに一律10%の関税を発動することを決定。さらに翌21日には、税率を15%に引き上げると表明しました。そこで今朝は、二転三転するトランプ関税の今後と日本への影響について、神庭さんに解説してもらいます。まずは、改めてトランプ関税とは何か、簡単に教えてください。
神庭さん:トランプ関税には大きく3種類ありまして、1つ目が日本を含む全世界にかけた『相互関税』。2つ目が麻薬対策などを理由に中国やカナダ、メキシコに対してかけた『国別関税』。この2つは、『国際緊急経済権限法(IEEPA/アイイーパ)』を根拠にしています。そして、3つ目が、自動車や鉄鋼・アルミなどに対する『分野別の関税』です。こちらは『通商拡大法232条』というまた別の法律に基づいています。
ユージ:今回の判決はどんな内容なんですか?
神庭さん:相互関税と国別関税の2つは「緊急事態だから、大統領の権限で輸入を規制するね」というロジックをとっていましたが、今回の判決で『違法・無効』だと判断されました。根拠法となるIEEPAは「大統領に関税を課す権限を与えていない」というのがその理由です。確かにIEEPAの条文をどこを読んでも『関税』なんて一言も書かれていません。そもそもが無理筋だったわけで、当然の判決かなと思うんですけど、自動車などの分野別関税に関しては、元から裁判の対象外なので特に影響を受けずに今後も継続されることになります。
ユージ:トランプ大統領は、ずいぶん怒っているみたいですね。
神庭さん:はい、これはもう激おこですね。
ユージ:激おこ!?
神庭さん:最高裁の判事は9人いて、このうち6人が違法判決に賛成しました。判事は保守派が6人、リベラル派が3人ですから、本来ならトランプ大統領有利の判決が出ても全然おかしくはないんですけれども、今回はリベラル派3人に加えて保守派3人が賛成したということなんですよ。さらに、この中にはトランプさんが指名した2人の判事も含まれていたんですね。トランプさんは賛成した判事たちを「国の恥」「外国の影響を受けている」とボロクソに批判しています。そうやって叩かれることが分かっていても、法の支配と司法の独立を貫いた6人の判事は立派だと思います。アメリカの威信を守ったと言えるのではないでしょうか。
吉田:看板政策の関税が否定されたトランプ大統領は、今後、どんな行動に出るんでしょうか?
神庭さん:IEEPAではなく、『通商法122条』という別の法律で全世界に10%の関税をかけると表明しました。翌日には、やっぱり15%にすると言い出したんですね。ただ、通商法に基づく関税は150日間の期間限定で、延長するには議会の承認が必要になります。なので、そうやって時間を稼いでいる間に別のやり方で関税をかける方法を探るのではないかなと思います。どの法律に依拠するにしても、事前の調査が必要になったり、品目が限定されたり、あるいは、議会の承認が必要だったりと、IEEPAに比べて手続きに時間がかかるんですね。となると、「オレの言うことを聞かないと関税を上げるぞ!」というトランプさんお得意の恫喝外交は、今後やりづらくなって、パワーダウンすることは間違いないと思います。普段の乱暴なジャイアンから、劇場版ドラえもんのジャイアンみたいに一気に優しくはならないかもしれないですけど、“ちょっと丁寧なジャイアン”くらいには変わるかもしれないですね。
ユージ:すでに支払われた関税は返ってくるんですか?
神庭さん:これまでに徴収された関税額は、総額20兆円以上になるとみられています。住友化学やリコー、豊田通商、川崎重工業、横浜ゴムといった日系企業が関税の返還を求めて提訴していますが、すぐには返ってこないかもしれないです。少なくとも判決には、関税の返還について全く触れられていないんですよね。トランプさんも「今後5年は法廷で争うことになる」と言っています。11月の中間選挙を控え、トランプさんは各世帯2,000ドル、日本円で約31万円ものバラマキをやろうとしていて、そのための原資として、関税収入を当てにしているので、なるべく返したくないわけです。なので、なんだかんだ理由を付けてズルズル先延ばしを狙うのではないかという気がします。自民党の小野寺税調会長はFNNの番組で「最高裁でトランプ関税は違法だと示されたのだから、『支払った関税は返してください』というのは当然だ」とおっしゃっていましたが、私もそう思います。
ユージ:日本はどう対応するべきだと思いますか?
神庭さん:一番の焦点は関税引き下げと引き換えに約束させられた5,500億ドル、約85兆円もの対米投資の行方です。投資とは名ばかりで実際はカツアゲに近い内容。利益配分はアメリカ9:日本1という屈辱的な条件になっているんですね。ただ、関税は違法という判決で大前提が覆ったわけですから、本来であれば金額や利益配分もゼロベースで見直すべきだと思います。せめて「9:1でなく、50-50にしましょうよ」ぐらいのことは言ってほしいと思うんですけれども、現実には厳しいと思っていて、衆院選の期間中、円安を防ぐためにアメリカにレートチェックで協力してもらったことで、高市政権は大きな借りを作りました。トランプさんはこの“貸し”を最大限、恩に着せてディールしてくるはずなんですよ。ですから、3月19日には『日米首脳会談』があります。高市首相にはぜひ、日本の国益を守るために頑張って、トランプさんと交渉していただきたいと思います。