26.02.24
「プラスの影響」と考える企業はおよそ25% どうなる消費減税

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!
【「プラスの影響」と考える企業はおよそ25% どうなる消費減税】
吉田:先の衆院選でも争点の1つになった消費減税。高市総理は2月20日の施政方針演説で、食料品の消費税を2年間限定でゼロにすることについて「検討を加速する」と語りました。一方、帝国データバンクの調査では、消費減税を「プラス」と捉える企業は25.7%にとどまりました。そこで今朝は消費減税の行方や課題について、神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:高市総理は消費減税について何と説明しているのでしょうか?
神庭さん:高市さんは施政方針演説で、給付付き税額控除を導入するまでの間の負担軽減策として、2年限定での食料品の消費税ゼロについて言及しました。スケジュールや財源も含め、実現に向け「検討を加速する」という方針をあらためて示したのですね。夏前に中間取りまとめを行い、税制改正関連法案の早期提出を目指すということです。補足しておくと、給付付き税額控除というのは、減税と給付金を組み合わせたハイブリッドな仕組みです。税や社会保障にまたがっての大改革が必要になるため、どうしても数年単位の時間がかかります。それまでの「つなぎ」として、2年間の食料品消費税ゼロをやりたいというのが政府与党の考えなんですね。
吉田:そんな中、消費減税に関して、企業側はどう受け止めているのでしょうか。
神庭さん:今月実施された帝国データバンクの調査によれば、消費減税に関して「プラスの影響の方が大きい」と答えた企業は25.7%で4社に1社にとどまりました。「特に影響はない」が48.2%で半数近く、「マイナスの影響の方が大きい」と回答した企業も9.3%あったんですね。小売業からは「消費意欲は確実に高まると思われ、その分ダイレクトに売り上げは増加する」「まとまった金額の支出が必要な耐久消費財の購買意欲が高まるきっかけとなる」といったプラスの評価が寄せられました。半面、飲食業からは「食品の消費税0%はマイナスの影響が大きい」との声もあがったんですね。これは安いテイクアウトに需要が集まるので、飲食店にとっては逆風になるということかなと思います。
ユージ:一方、僕ら消費者はうれしい声が多いような気もしますけれど。どうなんでしょうか?
神庭さん:意外に賛否は拮抗していまして、衆院選後に行われたFNN(フジニュースネットワーク)と産経新聞社の合同世論調査によると、2年に限った食料品の消費税ゼロについて「実行すべき」が52.5%、「実行すべきでない」が40.3%に達しました。「財源が赤字国債の発行以外に見つからない場合、どうするべきか」という質問だと、「減税すべきでない」の方が56.8%で逆転。「赤字国債を発行して減税すべきだ」は33.0%にとどまりました。衆院選では各党が消費減税を訴えるなかで唯一、税率の維持を掲げた「チームみらい」が比例で381万票を獲得して、11議席に躍進しました。消費減税に反対する人たちの受け皿になったとみられているんですね。ですから、世論も消費減税一色というわけではなくて、慎重な意見も意外に多いということです。
吉田:そもそも、消費減税は、効果を期待できるのでしょうか?
神庭さん:何に対する「効果」なのかによって答えは変わってきますね。景気対策としてなら、需要をふかす効果はあります。ただ結果として物価は上がりますから、そもそもインフレ下で景気対策をすべきなのかという話にはなると思います。ですから物価高対策としては逆効果で一時的に税込み価格が下がったとしても、「インフレ税」ですぐに帳消しになってしまいます。低所得者の保護対策としてならどうか。確かに助かる人はいるでしょうけれども、別に困っていない人たちの税率も一緒に下がってしまいますから、政策として効率が良くないんですね。では、選挙対策のメッセージとしてはどうか。これは非常にわかりやすく効果は抜群と言えるのではないでしょうか。
ユージ:消費減税についての課題は何でしょうか?
神庭さん:マーケットの評価だと思います。消費税は一般会計の3分の1を占める日本の税収の柱です。安易に下げれば、市場は敏感に反応します。あくまでも2年限定ということですから、無期限の減税を訴えている野党よりはマシですが、マーケットが「財政がゆるんでいるんじゃないの」「責任ある積極財政の“責任”はどうなっているの」というように判断した場合、国債価格の下落や円安が進むリスクがあります。大体、レジの改修に1年かかると言っていた話はどうなったのか。1年かけてレジを変えて、2年消費税を下げて、また戻すのに1年かかるとしたらトータル4年がかりということなのか、それとも戻す時は一瞬なのか。ちょっとよくわからないですよね。
吉田:消費減税、神庭さんはどう見ていますか?
神庭さん:誰であれ税金が下がるのは嬉しいですが、副作用もよく見極める必要があるかなと思います。少なくとも消費減税は、今の日本が1丁目1番地で進める政策なのかなっていうのは、ちょっと疑問が残るんですよね。給付金をばらまくのに比べたらだいぶマシですけれども、私はこの消費減税はせいぜい4丁目5番地くらいの話ではないかと思っていて。
ユージ:もっとできることがあるのではと?
神庭さん:優先順位ですよね。現役世代の負担軽減を考えるのであれば、本来1丁目1番地は社会保険料の削減とか社会保障費の抑制であるべきじゃないかなと思います。消費税は老いも若きも、日本人も外国人も、赤字企業であっても平等に負担しています。取りっぱぐれがない。そこを下げる代わりに、現役世代の社会保険料を上げようとか、金融所得課税や資産課税を強化しよう、みたいな話になっていった時に、それは日本社会の活力を奪うことにならないか、かえって世代間格差を拡大することにならないか心配です。
ユージ:ありがとうございました。