network
リポビタンD TREND NET

今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.03.03

出生数70万人で過去最少、東京・石川では増加の背景

null

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!


「出生数70万人で過去最少、東京・石川では増加の背景」

吉田:2025年の出生数は70万5,809人で前の年から2.1%減少、10年連続で過去最少を更新しました。一方、都道府県別で見ますと、東京と石川で増加に転じています。今朝は、各自治体の少子化対策の現状と課題について、神庭さんに解説してもらいます。


ユージ:神庭さん、まず今回の70万人という数字について教えてください。


神庭さん:厚生労働省が発表した人口動態統計の速報値です。「あれ、60万人台じゃなかったっけ?」という人もいるかもしれませんが、今回のデータは外国人も含む数字なんですね。日本人だけに限ると2024年の段階ですでに68万人まで落ち込んでいます。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、外国人も含めた出生数が70万人台になるのは2042年のはずでしたが、それがもう2025年の段階でそうなってしまっているということで、少子化が予測よりも17年も早まっている。政府の認識があまりにも楽観的すぎるので、今すぐ正確なシミュレーションをやり直すべきではと思います。


吉田:そうした中で、東京が増えたというのはどうしてでしょうか?


神庭さん:東京はやっぱり首都ですから、人が集まってくる磁場があることが大きいと思います。都道府県別の転入超過数は、東京都が6万5,000人余りで最も多いです。進学や就職で大勢の人が東京にやってくると。そして、結婚、出産しやすい20代・30代の若年層が多いので、出生率が低くても、出生数は結果として多くなると。「チルドレンファースト」を掲げる小池都知事は、潤沢な税収を背景にして、子育て支援にお金をドバドバ注ぎ込んでいます。2024年には国に先駆け、所得制限なしの「高校授業料無償化」に踏み切りましたし、その他にも18歳までの子供1人に月5,000円を給付する「018サポート」であったり、子供が生まれるとカタログギフトから13万円分の育児用品がもらえるサービスもあります。0歳児から2歳児の保育料無償化、公立学校の給食費無償など、とにかく手厚い。こうした充実した支援に惹かれて、東京で子育てしようと考える人も多いのではないでしょうか。


ユージ:石川県も増えているということですけれど、これは何でですか?


神庭さん:石川県も「エンゼルプラン」というものを策定して、結婚、出産、子育て支援に取り組んでいるのですが、今回に関して言うと、能登半島地震や豪雨被害などの反動が大きそうです。2年前までデータを遡ると、2023年の7,070人から、震災があった2024年に6,387人までガクッと落ちていると。それが2025年に6,515人までちょっと戻したという推移なので、2年前に比べると500人以上少ないわけですね。復興の兆しというふうに考えるといいことではありますが、決して手放しで喜べるような数字ではありません。


吉田:小池都知事は「チルドレンファースト」を掲げていますけれども、子育てしやすい街の特徴というのは何かありますか?


神庭さん:はい。日経クロスウーマンと日本経済新聞社がまとめた「共働き子育てしやすい街ランキング」が参考になります。7位が同率で4つあって、奈良県奈良市、愛知県豊田市、北海道札幌市、福岡県北九州市。6位が愛知県豊橋市。4位が2つあって、兵庫県神戸市、栃木県宇都宮市。2位が2つあって、千葉県松戸市、東京都福生市。そして1位が東京都品川区というふうになっています。


ユージ:上位の街はどういう取り組みをしているのですか?


神庭さん:1つは保育体制の充実です。東京で0歳から2歳の第1子保育料を無償化しているよというのはさっきも言いましたけど、このランキングのリリースによると、豊橋も所得制限付きで無償化していますし、宇都宮、札幌、北九州、豊田、奈良では第2子の保育料を無償化しています。2位の福生では、保育所などの3歳から5歳クラスの給食費を無償化していて、同率2位の松戸も、保育インフラに余裕があって、医療的ケア児の受け入れにも力を入れているということで。あとは、小学校6年生まで希望者全員が学童保育に入れるというのも大きいでしょうね。そして1位の品川区は、乳幼児に限らず幅広い年齢の子供たちへの支援を打ち出しているのが特徴です。2024年度からは小中学校の学用品(絵の具など)を所得制限なしで無償化。2025年度には中学校の修学旅行を無償化しました。そして、今年4月の新入生からは中学校の制服も無償化する予定だそうです。他にも、朝食を食べていない子供にパンを渡すとか、給食がない夏休みにも仕出し弁当を提供するとか、食に対する支援も非常に充実しているんです。


吉田:たしかに手厚いですね。それでも止まらない少子化ですが、対策の課題は何でしょうか。


神庭さん:子育て支援ってとっても大切ですけど、必ずしも少子化対策とイコールではありません。手厚く無償化するほど、教育投資とか受験戦争というのはどんどん加熱して、子育てが高級品化しちゃうというジレンマもあります。若年層が子育て支援の充実した自治体に移ると、そのエリアでは子供が増える。でも日本全体で子供が増えるとは限りません。中長期的には、地方や郊外から東京、大阪、福岡などの大都市圏に若年層が集まる「多極集中」がどんどん進んでいくと思います。非常に残念ですけれども、少子化を何とかできる段階というのはもうとっくに過ぎてしまっているんですね。全国知事会は人口減少を前提に賢く縮む「スマートシュリンク」というものを提唱しています。今後も「少子化を防ぐんだ、止めるんだ」というよりは、もう激しい少子化が進んでいく前提に立って、都市と地方の役割分担や、インフラ・行政サービスの効率化を進めていく必要があるのではと思いますね。


ユージ:自治体によってこれだけ取り組みの差があるのですね。どこか1カ所がすごいいいだけで少子化対策に繋がるとは限りませんし。


神庭さん:人が移動するだけだと、解決にはなりませんからね。

  • X
  • Facebook
  • LINE
Top