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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.03.04

高校の授業料無償化へ、その課題は?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


『高校の授業料無償化へ、所得制限を撤廃する改正法案を閣議決定…その課題は?』


吉田:政府は先週金曜日、2026年度から高校の授業料の無償化を拡充する改正法案を閣議決定しました。所得制限を撤廃し、私立高校の支給額を引き上げます。塚越さん、こちらの改正法案について、詳しく教えてください。


塚越さん:高校の授業料無償化は、そもそも2009年に政権交代した旧民主党の目玉政策として2010年度から始まりました。当初は公立・私立ともに、現在も基準額となっている11万8,800円という、公立の年間授業料に相当する額が支給されました。さらに私立の場合は、所得に応じて支援金が加算されました。一方で高所得層への支援などが問題視されたこともあって、自公政権に戻った2014年度からは、年収910万円以上の高所得世帯には制限がつくことになりました。ただ、その後も私立への就学支援の機運は高まっていて、例えば2025年度では、私立の場合は年収590万円未満の世帯には最大で39万6,000円が支援されています。それが今年の4月からは、所得制限が完全に撤廃されるだけでなく、私立については支給の上限額が年間授業料の全国平均となる45万7,200円へ一律で引き上げられる見込みです。文科省によりますと、この所得制限の撤廃によって、4月からは新たに80万人が加算の対象になるということです。なお、来年度からは留学生のような定住が見込めない外国籍の生徒は支援金の対象外になります。ただ、グローバル人材確保の観点から別の制度で支援するといった報道もあります。この法案は今の国会に提出されて、年度内の成立を目指すということですね。


吉田:『高校授業料の無償化の拡充』については課題があると思うのですが、こちらについて、改めて教えてください。


塚越さん:高校授業料の無償化というと、2024年度から支援の拡充を始めた大阪府が有名ですけれども、やっぱり、弊害も指摘されています。なんといっても、“公立の志願者が減少”です。2024年度の大阪の入試では、公立の志願者が今の入試制度になった2016年以降で過去最少を記録しました。また私立だけを受ける専願者も、過去20年で初めて3割を超えたということで、“公立離れ”が起きているということです。あとは、私立への支援金が多いことに納得がいかない保護者の声もあるんですね。例えば、読売新聞の取材記事では、子どもが公立高校に入学したある母親は「子どもの同級生だった子が私立に入学しました。ただ、その同級生の家族は毎年海外旅行できるような裕福な家庭なのに、私立に行っても支援額が高いことに損をした気になる」と話しています。


ユージ:そう感じちゃう人も中にはいますよね。


塚越さん:そうですね、ちょっとね…。額の差があるということですよね。また、文科省によると、2026年度に在籍する生徒は見込みも含めておよそ330万人ですが、そのうち私立は130万人程度です。文科省はこれまでの支援と4月からの拡充分も含めた支援全体で、5,800億円の予算を計上しています。もともと私立への支援もありましたが、かなり裕福な家庭も対象になるので、私立の生徒は増える可能性はありますね。ただ、もちろん私立に入学しても、授業料以外で入学金や施設利用料などで公立よりもお金がかかります。


ユージ:学費以外でというと、例えば、制服とかもそうだったりするんですかね?


塚越さん:そうなんです。だから、場合によっては年間90万円以上かかるケースもあったりします。なので、半分くらいしか補助されないという言い方もできるんですよね。ただ、授業料だけみると、私立は公立の4倍近くになるので支援金には大きな差があります。あとは無償化にはメリットも指摘されていまして、例えば、教育の機会均等の観点からみると、低所得層でも私立進学を希望できたり、公立と私立の間で特色を強めるための、よい競争が生じるということもあります。他方で、余裕のある家庭は支援金分を塾代などに回せるので、結局所得による教育格差は埋まらないといった指摘もありまして、機会均等を目指すなら所得制限があった方が良いと思う点もありますね。


ユージ:高校授業料の無償化を拡充することについて、塚越さんは、どうご覧になっていますか?


塚越さん:もともとは、公立には全員行けるようにしましょうということで、その上で、私立にも支援をっていう話だったんですけれども、もう全体的には、両方同じ土台になるのかなというところですよね。それはそれで良いところもあるんですけれども、例えば、公立は人が減っていく可能性があると言われていて、特に地方の公立だと教育のインフラになっていまして、生徒が減って統廃合が進むと、ますます地域で公立が選べなくなってしまうという懸念もあるんですよね。あとは個人的には、教員をやっている友人がいて、教員って激務なんですよね。なので、そういうところの支援も考えてほしいというところもありますね。


ユージ:そうですね!確かに先生への支援は僕も考えてほしいと思います。


塚越さん:なので、制度の在り方をこれから考えるということもありますし、あとは、該当するご家庭の方はメリットもありますので調べてみてほしいと思います。

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