26.03.09
赤沢大臣が訪米、日米交渉の暮らしへの影響は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!
『赤沢大臣が訪米、日米交渉の暮らしへの影響は?』
吉田:赤沢経済産業大臣は6日、ワシントンでアメリカのラトニック商務長官と会談しました。トランプ政権が相互関税の代わりに発動した10%の関税について、15%への引き上げ時に日本を対象にしないよう要請しました。また、総額86兆円の対米投資についても協議するものとみられています。そこで今朝は今回の日米交渉が私たちの暮らしにもたらす影響について、神庭さんに解説してもらいます。
神庭さん:まずは、関税についてはどんなことが話し合われたのか?ですが、経緯を振り返りますと、トランプ関税を『違憲』としたアメリカ最高裁の判決を受けて、トランプ大統領は先月20日、別の法律に基づいて新たに一律10%の関税を発動することを決めました。そして、翌日には、やっぱり15%だと言い出したと…。今時点では10%ですけれども、近く15%に引き上げる方針で、ブルームバーグによると、EUは15%への引き上げ対象から除外されたということなんですよね。日本も10%で勘弁してください!15%には上げないでくれ〜!というのが赤沢大臣の要望なんですけれど、アメリカ側がどう答えたのかはわかっていないんですね。
ユージ:確か日本の相互関税はもともと15%でしたよね?
神庭さん:そうなんですよ。おっしゃる通り、当初のトランプ関税は15%でした。じゃあ、15%ならプラマイゼロかというと、ちょっと違っていて、日経新聞によれば、元々の日米合意では既存の関税と相互関税を合計して15%を超えないような『負担軽減措置』があったんですね。ところが、新たに発動した10%関税にはこうした負担軽減がありません。元々の税率が7%の品目の場合、これまでは15%の相互関税がオンされたとしても上限は15%に抑えられていたんですが、今は特例がないので、シンプルに7+10で17%になってしまいます。さらに5%上がると7+15で22%に…。これだと日本側にとっては損ですから、軽減措置の維持や15%アップの見送りを求めているものとみられています。
吉田:交渉のもう1つの焦点が86兆円の対米投資の行方です。こちらは、いかがでしょうか?
神庭さん:トランプ政権は日本に対して相互関税を25%に、分野別の自動車関税を27.5%にすると当初吹っかけてきました。石破政権下で赤沢大臣が頑張って交渉して、相互関税、自動車関税とも15%まで下がりました。それは良かったんですけれども、代わりに5,500億ドル、約86兆円の対米投資を約束させられました。利益配分はアメリカ9:日本1。ほとんどカツアゲに近いような条件なんですけれども、その第1弾として先月、オハイオ州にガス火力発電所、テキサス州に原油の積み出し港、ジョージア州に人工ダイヤモンドの製造施設をつくることが決まりました。そして、第2弾として、原子力発電所の建設、銅精錬施設の新設、液晶・有機ELディスプレー製造の3事業が有力視されています。読売新聞によると、投資額は第1弾で5.6兆円、第2弾で15兆円を超え、合計すると事業全体の4分の1前後になる可能性があるということなんですね。
ユージ:すごい金額ですね!メリットを教えてください。
神庭さん:1番のメリットは、トランプさんのご機嫌が良くなることで、身もフタもないんですけど、これが現実で、現代の朝貢外交と言ってもいいかなと思います。2番目のメリットは、エネルギー政策の強化ですね。日本のエネルギー自給率はたったの15.3%しかありません。なかでも原油は中東依存度が94%を超え、アメリカのイラン攻撃を受けたホルムズ海峡封鎖で甚大なダメージを被っています。ガス火力発電や原油輸出など、アメリカの資源政策に絡んでおくのは悪いことではないかなというふうにも思います。
吉田:一方でデメリットはいかがでしょうか?
神庭さん:最大のデメリットは円安です。巨額の円を売ってドルを買うことになるわけですから、当然、円安が加速します。今、日本が抱える円安リスクは大きく3つあって、1つは“高市政権の積極財政”。2つ目が“ホルムズ海峡封鎖に伴う原油高で貿易収支が悪化”。そして、3つ目が“86兆円の対米投資”なんですね。このトリプルパンチで円安が制御不能になってしまうと、物価高と景気後退が同時に起こる『スタグフレーション』に見舞われてもおかしくありません。日経新聞は専門家の分析を基に、1兆円の対米投資が1円の円安圧力になると報じています。今1ドル157円なので、ここから86円も円安に動いたら1ドル243円になるということですよね。さすがにそこまでデタラメなことにはならないと信じたいですが、円安への影響は注意深く見ておく必要があると思います。
ユージ:日本はどうしたらいいんですか?
神庭さん:アメリカの最高裁がトランプ関税を違憲と判断したわけですから、スジ論としては、投資額を下げてよ!とか、減額や利益配分を9:1じゃなくて5:5にしてくれよ!くらいのことは言って欲しいと思うんですけれども、過去の弱腰外交を見る限り、おそらく無理だろうと推測しています。だとしたら、とにかく牛歩作戦で対米投資を遅らせた方がいいと思います。第1弾発表!第2弾発表!みたいな感じでテンポよくポンポン発表しすぎなんですよね。もうフジロックの出演アーティストくらい、小出し小出しでゆっくり出した方がいいんじゃないかなと思っていまして、そうやっているうちにトランプさんの人気がなくなって失脚する可能性もゼロではないですし、中東情勢も多少は改善されるかもしれません。そうやってうまいこと小出し小出しで時間稼ぎ作戦をしてみたらどうかなと思います。