26.04.13
アメリカ、イランによる停戦協議の行方は?

番組コメンテーターと気になるニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。
今朝のテーマはこちら!
アメリカ、イランによる停戦協議の行方は?
吉田:アメリカとイランは11日、パキスタンの首都イスラマバードで戦闘終結に向けて協議しましたが、合意に至りませんでした。そこで今朝は双方の主張や日本への影響などについて、神庭さんに解説してもらいます。まずは、11日の停戦協議の結果ですが、改めてどうなったのか教えてください。
神庭さん:アメリカとイランは仲介国のパキスタンで21時間にわたって議論したが、主張の隔たりが大きく、物別れに終わりました。アメリカのバンス副大統領は12日の会見で「合意に至らず、帰国する」と述べました。読売新聞によれば、バンス氏は「米国にとってというより、イランにとってはるかに悪いニュース」「我々は柔軟に対応し、かなり譲歩した」などと説明しました。ただ、バンス氏はイラン側が提案を受け入れるか「様子を見る」という言い方もしていまして、協議が完全に打ち切られたのかはわかりません。イラン政府は日本時間12日早朝の段階でXに《双方の技術チームが専門的な文書を交換している。一部で意見の相違が残っているものの、交渉は継続される見通しだ》と投稿しているんですね。
ユージ:アメリカとイランは、どんな主張をしているんでしょうか?
神庭さん:朝日新聞によると、アメリカは15項目、イランは10項目の提案をしています。アメリカの15項目には「既存の核能力の解体」「核兵器の開発を今後しないという約束」「国内でのウラン濃縮を全面禁止」「高濃縮ウランの国際原子力機関への引き渡し」など核関連の主張がかなり多いです。ホルムズ海峡については「常に開放し、自由な国際航路として機能させること」と要求しています。一部イランにとって有利な内容も含まれていまして、「国際社会による制裁の全面的な解除」「原発での発電など民生用の原子力計画の推進を支援」といった項目もあります。
吉田:イラン側の10項目は、どんなことを求めているのでしょうか?
神庭さん:ひとつは「イランへの新たな攻撃を行わないこと」。これは停戦協議なので当然の主張と思います。このほか「ホルムズ海峡におけるイランの支配権の維持」「イランによるウラン濃縮の容認」「イランへの賠償金の支払い」など、アメリカの主張と真っ向から対立するような訴えが並んでいます。イランに対する制裁の解除も求めてまして、ここは唯一アメリカが妥協しやすい部分かなと思います。
ユージ:なぜここまで協議が難航しているのでしょうか?
神庭さん:アメリカはさっさと停戦してイランから引き上げたがっているんですが、イラン側は早期停戦のメリットが薄いんです。イランの戦略はホルムズ海峡を武器化して、原油価格をつり上げて、世界経済を人質にとることです。ガソリン価格が高騰してアメリカの世論が怒って、トランプさん率いる共和党が中間選挙でボロ負けするというシナリオを思い描いているわけですよね。むしろ紛争の長期化、泥沼化を望んでいるということだと思います。持久力勝負でマラソンを走っているイランに対して、トランプさんがいくら「おい100メートル走で勝負しようぜ」と持ちかけたところで響かないと。競技が違うというところかなと思います。交渉ごとでは急いでいる方が足もとを見られるんですよね。イランはトランプさんの焦りを見透かして、到底のめないような高い球を投げてきているようにも見えますね。
ユージ:今後の交渉の行方はどうなりますか。
吉田:一筋縄ではいかず、長期化しそうです。最大のリスクファクターはイスラエルなんですね。2週間の停戦が決まってすぐにレバノンをイスラエルが攻撃して300人以上が死亡しました。イスラエルとアメリカは「レバノンは停戦の対象外」と主張しているんですね。イスラエルのネタニヤフ首相は汚職の罪で起訴されていますが、安保上の理由から裁判での証言の延期を求めています。ロイターによると、裁判では実刑判決が出る可能性もありますが、ネタニヤフ氏の公務の都合で繰り返し延期されているということです。戦争を続けている限り、裁判に出なくて済むわけです。イランのアレフ第1副大統領は《「アメリカ・ファースト」の代表団との交渉なら、双方および世界にとって有益な合意が成立する可能性が高い。しかし「イスラエル・ファースト」なら合意は成立しないだろう》とXに投稿しているんです。
吉田:日本への影響はいかがでしょうか?
神庭さん:ここは一番心配なところですが、今後の展開としては、「2週間の停戦期間がさらに延長される」とか、あるいは「交渉決裂で戦争が再開して、カーグ島、原発攻撃、地上侵攻とさらに紛争が激化する」など、複数のシナリオが考えられます。イラン戦争が長期化した場合、原油高騰が待ったなしですから世界経済はクラッシュします。日本でもあらゆるモノの値段が上がり、スタグフレーションに陥るリスクが高まります。ナフサショックによる医療品への影響や、尿素不足による肥料・食料品の値上がりも懸念されるところです。もちろん電撃的に早期停戦が実現する可能性もゼロではないですけれども、そこに対して淡い期待を抱くよりは最悪ケースを想定した方がいいと思います。イランがホルムズ海峡に敷設した機雷の一部が行方不明になっているという報道もありましたし、またアメリカによる逆封鎖の話も出ています。今後、首尾よく停戦交渉がまとまったとしても、ホルムズ海峡が安全に通れるようになるには時間がかかるかもしれません。戦後最大のエネルギー危機ですから、ガソリン補助金をじゃぶじゃぶ入れてる場合じゃなくて。今すぐ資源の確保と節約、省エネに向けて動くべきなんじゃないかなと思います。