26.04.16
「就職氷河期世代への新支援プログラム」について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の学習院大学非常勤講師 塚越健司さんです。
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遅すぎる?まだ間に合う?
「就職氷河期世代への新支援プログラム」について
吉田:先週、政府は、いわゆる「就職氷河期」世代を対象とした新たな支援プログラムをまとめました。氷河期世代が今後、高齢化することを見据え、家計の改善や資産形成の支援などを進めるとしています。一方、ネットでは支援が遅すぎる…という声も上がっています。
ユージ: 塚越さん、改めて「就職氷河期世代」の方は、今いくつの世代でしょうか?
塚越さん:この就職氷河期世代は大体1970年〜84年頃に生まれて、概ね90年代前半から2000年代中頃に就活をした人です。だいたい今の40代前半から50代半ばの人で、数にするとおよそ1700万人いらっしゃるんですね。世代の中でもグラデーションはありますが、一番就職が厳しかったのが2003年卒業、今40代半ばの方で、このときの就職率がだいたい55%。今の学生は98%とか99%という感じなので、かなり厳しいですよね。なので、正社員になれなかったり、なれても低賃金が続いた、そういう世代ですね。
吉田:今回の新支援プログラムの内容はどうなっていますか?
塚越さん:支援は2019年〜2023年にも行われたのですが、不十分だったという指摘がありました。今回は新たに、2028年度までの3年間の集中支援となります。主な柱は3つあります。1つ目は、「就労・待遇の改善」です。ハローワークでは「相談から就職、そして定着」までを支援します。リスキリング支援も拡充して、オンラインの職業訓練も全国展開します。企業もこの世代を雇用した場合は「トライアル雇用助成金」というものが出るので、インセンティブも強化です。まずは働く機会をつくりましょうということですね。2つ目が「社会参加に向けた支援の継続と拡充」です。氷河期世代は、いわゆる「引きこもり」の方が注目された世代でもあって、社会的に孤立状態にある人が仕事に向かえるように支援しましょうというものです。あとは家族の介護と仕事の両立を支援する「介護離職防止策」も盛り込まれています。氷河期の上のほうの50代の世代になると介護と仕事が重なるので、そういう世代への手当がありますということですね。3つ目が、今回の目玉となる「高齢期を見据えた支援」です。非正規の方などは特に、老後の年金が十分に受け取れない「低年金リスク」があり、これを回避するための家計改善や資産形成支援。あとは「セーフティネット住宅」など、高齢者や低所得者でも入居しやすい住宅を確保するということです。氷河期世代は、はやい方だとあと10年程度で「高齢者」ということになりますので、低年金で住む場所がない、といった問題を今のうちに対策しましょうということですね。
ユージ:これに対して世間の反応はいかがでしょうか?
塚越さん:3つの柱のうち、特に老後の住宅支援など、体系的な支援を打ち出したのは一定の評価がありますが、ネットだと、「25年遅い」とか、50代に就労支援といっても年齢的になかなか再就職は難しいとか、要するに、「遅いよ」という声が目立つんですよね。特にですね、そういった枠を新たにつくっても、苦しい立場の人がまた競争する可能性もあります。気力としてもなかなか正社員に向けた動きを取ろうと思えなくなる方も多くなるんじゃないかという指摘もあります。一方で、最近は新卒でも初任給30万円とかインフレ世代が恵まれているようにみえる。なのに自分たちはデフレ時代に圧倒的に損をしたのに「自己責任」と言われてきた、といった感覚を持つ方もいるというわけです。なんでも世代で分ければいいわけではなくて、もちろん成功した人もたくさんいます。ただ、この世代は統計的にもバブル期世代よりも年収が低いとか、いくつかの統計的な数字があります。さらにいうと、世代内での競争と格差もあり、成功する人が目立つ一方で、非正規の女性も多く、格差の問題もあります。
吉田:塚越さんは、今回の支援プログラムどう思いましたか?
塚越さん:そうですね、この分野の専門家でもある千葉商科大学の常見陽平さんは、氷河期世代はある種の「自己責任グセ」があるのではと指摘しています。要するに、自分のせいではなくてそのとき人口が多くて日本経済がまずかっただけなのに、競争に勝てなかったのは自分のせいだ、と思ってしまうという。なんでも「自己責任」と抱えてしまうクセを持ってしまっているというのが世代的な特徴なのではという話です。そうなると、単にお金を出して支援しても、そういった方々のなかなか立ち向かえないという心理的なところに寄り添えるのか、という課題もあると個人的に思います。「自己責任ではないと思える社会」をつくる必要があります。あとやはり非正規の方でも安心できる社会設計が必要になると思います。特に、老後対策ですよね。あと10年程度でという話もありましたけど、そういったところに本気で総合的に対策を取るのが大事かなと思います。一方で、氷河期以外にも苦しんでいる人はいるので、そのバランスも必要です。