26.04.21
小田急電鉄の駅員が小型カメラを装着、カスハラ対策の今を考える

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝のテーマはこちら!
小田急電鉄の駅員が小型カメラを装着、カスハラ対策の今を考える
吉田:小田急電鉄は16日、小田急線の全70駅で駅員の胸に装着する小型カメラを導入しました。客同士のトラブルや犯罪行為、カスタマーハラスメントが発生した際に使用するということです。今朝は、カスハラの現状や課題について神庭さんと考えます
ユージ:神庭さん、まずは小田急電鉄の取り組みについて教えてください。
神庭さん:「ウェアラブルカメラ」という小さなカメラを胸の部分に装着するんですね。これは常に録画し続けるわけではなく、いくつかの場面に限って運用します。1つ目はカスハラや駅構内でのトラブルなど異常が発生したときに、駅員さんが対応状況を記録する場合。2つ目が駅構内の不審物や設備の不具合などを発見したときにその状況を記録して、関係各所へ共有する場合。3つ目は安全確保や事実確認の必要性などから駅長が必要と認めた場合。小田急線の全70駅に計90台、1駅あたり1〜3台配備するということです。
ユージ:これ、心配なのが乗客のプライバシーという問題が出てくるかなと思うんですけど、どういった配慮がされているんでしょうか?
神庭さん:小田急側は「録画データは駅長管理のもと適切に保管し、定められた目的以外には使用しない」としています。カメラには50時間分の録画データが保存できて、録画容量に達すると古いデータから順次消えていく仕組みだということです。
吉田:小田急はどうして小型カメラを導入することになったんでしょうか?
神庭さん:暴力や暴言などのカスハラが増加傾向にあり、駅員さんの安全が脅かされている、というのが大きいです。トラブル対応にリソースを取られれば、結果として他のお客さんへのサービスも低下してしまいますから。そうした事態を防ぐために小型カメラ導入を決めたということです。
吉田:鉄道関係はやはりカスハラが多い傾向にあるのですか?
神庭さん:日本の鉄道というのは非常に定時運行で、精密なダイヤは世界でもトップレベルだといわれています。「時間通りが当たり前」に慣らされた乗客は、少しのズレも許せないせこい人間になってしまっている可能性があります。私もせっかちな人間なので、完全に自戒を込めてですけれど。最近は相互直通運転が増えて1路線の遅れが他にも波及しやすくなっているので、そこでイライラをためている乗客も多そうです。ラッシュ時の東西線とか、皆さんかなり殺気立ってますからね。深夜とか早朝は酔っ払いの相手もしないといけません。酔客同士のケンカもあります。本当に駅員さんは大変だなと頭が下がりますね。
ユージ:昨日乗った新幹線も出発が3分遅れたことに対して「誠に申し訳ございません」と社内アナウンスが流れて、こんなアナウンスって日本くらいしかしてないんじゃないかって思ってしまいました。実際に鉄道におけるカスハラにはどんなものがあるんですか?
神庭さん:「罵声大会」の動画を見たが、あれは本当に酷かったです。
ユージ:罵声大会!?
神庭さん:鉄道の写真を撮影する「撮り鉄」という趣味がありますよね。大半はマナーを守って楽しんでいると思いますが、一部、常軌を逸した人たちがいて、思うような写真が撮れないと駅員さんや通行人に罵声を浴びせると。次々に怒号を発する様子が大声大会のようなので「罵声大会」といいます。昨年10月にSNSで拡散された、奈良の近鉄・大和西大寺駅での罵声大会は特に酷かったです。J-CASTニュースによると、撮り鉄たちは駅員さんに対して「下がれよ、安月給」「殺すぞ!」「うっせぇ、ボケ」「なめてんのか」「ぶっ飛ばすぞ」などと罵りました。近鉄は「今後、同じような事象が発生すれば、躊躇せずに警察に通報します」とコメントしています。
ユージ:これは働く人を守る何かがやはり必要ですね。
神庭さん:撮り鉄に限らず、日夜カスハラに晒されている駅員さんたちの苦労を思えば、小型カメラの導入は当然かなと思います。駅員さんを守り、言った言わないのトラブルを防ぐことができます。小田急だけでなく、すべての鉄道会社で導入してほしいなと思います。駅員さんみんながカメラを装着するようになれば犯罪の抑止効果にもつながるんじゃないかなと思います。
吉田:鉄道以外ではどんなカスハラ対策が進んでいますか?
神庭さん:ローソンは2024年から店員さんの名札に、任意のアルファベットやイニシャルを使えるようにしました。セブン‐イレブンもイニシャルや「店長」「スタッフ」などの役職名でOKになりました。ファミリーマートも「偽名」というか仮名も使えるということで。もはや名札いらないんじゃないかという気もしますが、従業員を守るための取り組みがあるということで。なかには「名前覚えたぞ」とか「SNSにあげてやるからな」とスゴんでくる客がいるらしいです。ちょっと珍しい名前だと、顔と合わせて特定され、ストーカー被害に遭うリスクもあります。重要な対策かなと思います。
吉田:他に神庭さんが注目している動きはありますか?
神庭さん:はい。日経新聞によると、国土交通省が4月から、国民からの苦情などの電話対応をコールセンターに全面委託しました。若手官僚は「もう4時間怒鳴られずに済む」と安堵しているということなんですね。それ自体はとてもいいことだと思うんですけど、結局コールセンターで誰かが代わりに怒鳴られているとしたらこれって本質的な解決ではないですよね。国家公務員の代わりにコールセンターの非正規職員の方がカスハラを強いられることになったとしたらグロテスクな話だなと思うんです。10月からすべての企業にカスハラ対策が義務付けられます。「お客様は神様」なんて昔はいいましたけど、神様じゃなくてただの人だと。「お客様の人間宣言」が必要じゃないかなと思っています。この際ですね、呼び方もお客「様」じゃなくお客「さん」に統一したらいいんじゃないでしょうかね。