26.05.18
米中首脳会談、何が決まった?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【米中首脳会談、何が決まった?】
吉田:アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席は5月14日と15日に北京で会談しました。米中両国は関税や台湾をめぐって、何を話し合ったのか?さらに、日本への影響について神庭さんに解説してもらいます。まずは、注目の米中首脳会談、何が決まったのか教えて下さい。
神庭さん:アメリカと中国がお互いにかけ合っている関税について、一部の品目で引き下げることで合意しました。品目などはまだ明らかになっていないです。米中というと一時は100%超えの相互関税をかけ合っていたので、その時の印象が強いかもしれないですが、今は10%で実は日本と変わらない。その関税をさらに下げて、経済面で接近を図ろうとしています。この他、中国がアメリカのボーイングの航空機を購入することも決定しました。中国の乳製品・水産品とアメリカ産の牛肉・鶏肉に関しては、関税以外の障壁を減らして貿易を拡大していくということです。ただ、気になる所もあります。
ユージ:何でしょうか?
神庭さん:関税引き下げの発表が中国側から出ていることです。トランプ大統領は首脳会談後の会見で「関税については議論していない」と話していました。中国に対するファイティングポーズを崩したとなると、MAGAなど国内の熱烈なトランプ支持者から不満が出ます。そうならないように、慎重な情報発信をしているのかもしれないです。関税については首脳会談の前日に韓国で開かれた閣僚級協議で大筋決まっていたようなので、厳密には嘘ではないかもしれないですが、成果を誇りたい中国と玉虫色にしておきたいアメリカの温度差を感じます。ボーイングの航空機に関しても、アメリカメディアの予測では500機の大量受注になるのではと言われていたのに、蓋を開けたら半分以下の200機だけでした。
ユージ:アメリカ側は当てが外れたということですか?
神庭さん:そうなります。トランプ氏は「最大で750機まで増やす約束も含まれている」と胸を張りましたが、事前予測を下回ったことで失望売りが広がり、ボーイング株は大幅に下落してしまいました。
吉田:経済面以外ではどんなことが話し合われたのでしょうか?
神庭さん:台湾について、習近平氏から強い言葉で警告がありました。日経新聞によれば、習氏は「適切に処理できなければ両国は対立・衝突し、中米関係を極めて危険な境地に追い込む」と述べたそうです。また、FNNによると会談の冒頭ではこんな風に話したということです。《米中両国は、いわゆる「トゥキディデスの罠」を乗り越え、大国間の関係における新たなかたちを切り開くことができるか》《歴史の問い、世界の問い、そして人々の問いと言えるでしょう。また、大国指導者である私とあなたが共に書き上げるべき時代の答案でもあります》と言いました。ここでキーワードになるのが「トゥキディデスの罠」という言葉になります。
ユージ:この聞き慣れない「トゥキディデスの罠」。どういう意味でしょうか?
神庭さん:トゥキディデスというのは古代ギリシャの歴史家。紀元前431年にスパルタとアテネの間で起こったペロポネソス戦争について記述した人です。この戦争の背景には、経済大国として台頭してきたアテネに対する覇権国スパルタの恐怖があったと言われています。同じような構図は歴史上何度も繰り返されており、米国の政治学者グレアム・アリソンはこれを「トゥキディデスの罠」と名付けました。習近平氏はこのたとえが好きなようで過去にも使っています。トランプ氏を前にして、中国をアメリカと並び立つ大国、それもアメリカが恐怖を抱くような存在だと言ってるわけで、考えようによってはかなり大胆な発言です。ウォール・ストリート・ジャーナルは《習氏の真意は、必要なら武力を用いて台湾を奪取するという中国のもくろみに干渉し、戦争を引き起こすリスクを冒さないようトランプ氏に警告すること》だと指摘しています。
ユージ:米中首脳会談、神庭さんはどう受け止めましたか?
神庭さん:中間選挙を控えて目の前のディールに焦るトランプ氏ですが、中国に手玉に取られていないか気掛かりだ。米中首脳会談は年内にあと3回開かれると言われていますが、第1回戦は中国優位で進んだ印象を受ける。アメリカの台湾戦略は1980年代にレーガン政権が示した「6つの保証」がベースになっていて、台湾への武器売却については中国と事前協議しないことが歴代政権の方針だった。ところがトランプ氏は、台湾への武器売却を「するかもしれないし、しないかもしれない」「非常に有効な交渉材料だ」と述べ、ディールに使うような言い方をしています。
ユージ:日本はどう向き合うべきでしょうか?
吉田:アメリカと中国の「G2」が急接近して台湾問題で不用意な「手打ち」をされたら困りますし、一方で事態がエスカレートして台湾有事に発展するのも困ります。日米同盟の重要性は今後も変わらないですが、盲目的な対米依存も危険です。アメリカにおんぶに抱っこではなく、「自分の足で立つ」「自分の国は自分で守る」という防衛体制を確立しないといけない。一方で中国との対話の窓口を閉ざすことなく、両大国の間でドンパチが起きないように危機の抑止に努めることも大切です。今こそバランス感覚のある外交が求められていると思います。