26.05.19
見えてきた自転車青切符の課題について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「自転車青切符、1カ月で2,147件 見えてきた自転車青切符の課題」
吉田:自転車の交通違反に対して警察が反則金の納付を通告する「青切符」制度。4月の導入から1カ月で、暫定で2,147件の青切符が交付されたことが警察庁のまとめでわかりました。今朝は、制度の運用状況や見えてきた課題について神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:改めてですが、「青切符」について教えてください。
神庭さん:正確には「交通反則通告制度」といいまして、比較的軽微な交通違反に対して、反則金を納めれば刑事処分を免れる仕組みのことです。反則切符の色が青いので青切符と呼ばれています。もともとは自動車やバイク、電動キックボードなどを対象にしていましたが、4月から16歳以上の自転車利用者にも適用されるようになりました。ちなみに、酒酔い運転やあおり運転など悪質・危険な交通違反に対しては「赤切符」の対象になりますので、これまで通り刑事事件として処理されます。
吉田:どんな行為が青切符の対象になるのかを改めて教えてください。
神庭さん:一時不停止、スマホの使用、踏切内への立ち入り、ブレーキがない自転車に乗る、スピードを出して歩道を通行して歩行者を立ち止まらせる、2人乗りをしながら赤信号を無視するなどなど、113種類の違反が青切符の対象になります。警察庁の「自転車ルールブック」によれば、傘差し運転や、イヤホンをつけて周りの音が聞こえない状態での運転も対象です。ただし、イヤホンを片耳のみに装着している時や、オープンイヤー型イヤホン、骨伝導型イヤホンのように、耳を完全には塞がないものについては、安全な運転に必要な音や声が聞こえる限りは違反にはならないということです。
ユージ:当初からたくさんの違反が対象になることが話題になっていました。警察庁の狙いはどこにあるのでしょうか?
神庭さん:1つは言うまでもなく交通安全です。交通事故の総数は減少傾向ですが、自転車関連の事故は年間7万件前後と横ばいで、全体に占める割合や自転車と歩行者による事故の発生件数は増加傾向にあります。自転車と自動車の事故は年間5万件ほど発生していて、自転車乗用中の死亡・重傷事故のうち、4分の3は自転車の側にも法令違反があったということです。青切符導入によってルール意識が高まって、こうした事故が減少することが期待されています。
ユージ:他にはどんな狙いがあるのでしょうか。
神庭さん:手続きの簡素化と迅速化です。2025年の自転車の検挙件数は6万件余りで、この10年で5倍くらいに増えています。従来の手続きだと、警察の捜査の後に検察官が起訴・不起訴を判断して、起訴なら裁判を受け、有罪になったら罰金を払って前科がつくという流れでした。取締りのための書類作成や取り調べ自体なども含めて、捜査機関の負担も大きかったです。そのうえ、検察に送致しても不起訴になって、違反者に対する責任の追及が十分にできないという問題がありました。そこで違反者に前科がつかないようにしつつ、スピーディーに処分できる青切符の導入に踏み切ったわけです。
吉田:導入から1カ月が経ちましたが、青切符制度は積極的に適用されているでしょうか?
神庭さん:警察庁の発表によると、青切符の対象となった違反は4月の1カ月で2,147件です。2025年の交通違反の検挙件数が月平均4,268件でしたから、検挙件数自体はむしろ減っています。いきなり取締りを強化すると反発も招きますから、慎重に運用しているのかもしれないですね。違反種別を見ると、一時不停止が40%、携帯電話の使用が33%、信号無視が14%、踏切への立ち入りが7%、自動車と逆向きに走る「逆走」などの通行区分違反が3%という結果でした。
吉田:1カ月経って、見えてきた青切符制度の課題は何でしょうか?
神庭さん:1つ目は地域ごとの不均衡です。読売新聞によれば、4月中の青切符交付件数は多い順に東京501件、大阪267件、愛知257件、埼玉223件、京都158件でした。一方、秋田、山形、三重、徳島、長崎、熊本、沖縄は0件だったんですね。必ずしも人口順というわけでもなく、大都市の神奈川は30件、福岡も38件でした。同じ制度なのに、都道府県をまたぐとセーフになったり、アウトになったりするようでは公平性が保てないですよね。青切符の規制対象はかなり広く、警察の運用次第で検挙件数を多くも少なくもできます。取締りの過程で恣意性が出やすくなっているのかもしれません。交通安全という本来の目的を忘れて安易な「点数稼ぎ」に走るようでは困りますし、逆に検挙件数ゼロで「やる気あるの」みたいな状態も困りますよね。全国で公平性のある制度運用をしてほしいなと思います。
ユージ:確かにそうですね。他にはどんな課題がありますか?
神庭さん:自転車道の整備が必要かなと思います。自転車は車道を走るのが原則ですが、道が狭かったり、路上駐車の車が放置されていたりで危険なケースも少なくありません。歩道を安全にするために自転車の取締りを強化した結果、今度は車道が危険になってしまって、「リスクが横に移動しただけでした」では意味がないですよね。歩行者も自転車も車も安全に移動できるよう、自転車道の整備を急ぐべきだと思います。また現状でも、13歳未満や70歳以上の方、もしくは身体障害のある方は自転車でも歩道を通行できます。ですから、車道の交通量が著しく多い場合とかは、歩道を走れるので、こうした点を改めて周知していくことも大切かなと思います。