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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.06.01

W杯の放映権料が高騰!ユニバーサル・アクセス権を考える

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【W杯の放映権料が高騰!ユニバーサル・アクセス権を考える】

吉田:3月に行われた野球のWBC、ワールド・ベースボール・クラシックは、地上波のテレビ放送がなく、Netflixが独占配信したことで賛否の声があがりました。また今月11日に開幕するサッカーW杯でも、放映権料の高騰が問題化しています。そこで今朝は、大規模イベントを誰もが気軽に観られるようにする「ユニバーサル・アクセス権」について、神庭さんに解説してもらいます。


神庭さん:ユニバーサル・アクセス権とは、国際的なスポーツ大会など大きなイベントを幅広い国民に無料で観られるようにしよう、という考え方です。日経新聞によると、イギリスではサッカーW杯などの独占配信が原則的に禁止されています。朝日新聞によれば、イギリスでは五輪やサッカーW杯、テニスのウィンブルドン決勝などの試合を有料放送をするためには、無料放送を提供する必要があるということです。国によって制度や運用はまちまちですが、韓国、ドイツ、フランス、台湾にもユニバーサル・アクセスの仕組みがあるそうです。


ユージ:これ、日本で議論が始まっているんですよね?


神庭さん:スポーツ庁と総務省は先月20日、スポーツ中継のあり方を議論するための有識者会議を設置し、論点整理を始めました。松本洋平文部科学大臣も会見で「収入や年齢、地域などに関わりなく幅広く国民がスポーツに親しむことができるように、国民のスポーツを観る機会の確保をすることが重要」と話しています。


吉田:背景にはやはり放映権料の高騰があるんでしょうか?


神庭さん:その通りです。有識者会議の資料に記載された推定価格によると、WBCは2017年の約10億円から2026年は約150億円と15倍に跳ね上がっています。これだとNetflixのようにお金が潤沢にあるプラットフォームでないとなかなかお金が出せないですよね。W杯はもっとすごくて、1998年のフランス大会は約6億円だったのに、2002年の日韓大会で10倍の約60億円に上昇し、今回の北米大会は400億円以上と推計されています。日本ではNHK、日本テレビ、フジテレビ、DAZNが放映権を獲得しましたが、とんでもない金額です。このまま円安が続くと、いつかW杯もテレビで観られなくなってしまうかもしれないということなんですよね。


ユージ:有料放送の広がりには賛否両論あるんですか?


神庭さん:賛否は割れています。WBCの時の否定的な声を振り返ると、福島県の地元紙・福島民報は「地上波ねぇ、ラジオもねぇ、ネトフリ契約分かんねぇ、福島県民が戸惑い」と吉幾三タッチで報じていました。首都圏ではラジオ放送がありましたが、福島だとラジオアプリの有料契約が必要だったということです。球界のご意見番・広岡達朗さん、94歳も「ネットなんとかの視聴方法がよくわからん。娘に手続きをやってもらおうかとも思ったが馬鹿らしくなってやめた」「商業主義も甚だしい」とRONSPOの記事で怒りを露わにしていました。


ユージ:ポジティブな意見もあるんですよね?


神庭さん:「カメラワークが秀逸ですごく臨場感があった」「ワンコインではコンビニ弁当も買えない時代に500円でこれだけの感動を味わえたのはコスパ最高」など肯定的な意見も多かったです。 私は野球にまったく詳しくないですが、B'zの稲葉さんがカバーした『タッチ』の動画は何度も見ました。ああいう仕掛けはさすがネトフリという感じでした。面白かったのは「意地でも観ない」と言っていた徳光和夫さんが、Netflixのチェコ戦の中継に出演して「Netflixさまさま」「契約して本当に良かった」とすっかり手のひら返ししていたことです。徳さん以外でも、観てみたら意外と良かったという方は多そうだなと思います。


ユージ:ユニバーサル・アクセス権、課題はなんでしょうか?


神庭さん:そもそもスポーツだけが特別なんですか?スポーツの中でもカバディやセパタクローではなくてサッカーや野球だけを対象にするとしたら、線引きをどうするのかという問題があるわけです。例えば、「嵐のラストコンサートを無料で見せろ」なんて言ったら、当然ふざけるなというツッコミが入るわけじゃないですか。「映画の国宝をタダで観たい」と言ったら、大人しく映画館かサブスクで観てねという話になると思います。ではW杯やWBCはどう違うのか、それは人気が問題なのか、伝統の話なのか、その辺りの説明も必要になってくると思います。ユニバーサル・アクセス権という権利で一体何を守ろうとしているのか、というのも大事なポイントかなと思います。


ユージ:どういうことでしょう?


神庭さん:視聴者を守るということであればまだ分かるんですが、テレビ局の既得権を守る話にすり替わってはいけないと思います。総務省の調査でも、スポーツ中継に関して、50歳以上はNHKや民放のテレビ、10〜20代はネット配信で視聴するケースが多い、という結果が出ています。決してネット=悪ではないわけです。ユニバーサル・アクセスというのは、私なりの言葉に翻訳すると「お茶の間アクセス」ということなのかと思います。ただ今の時代、個々人の趣味嗜好が細分化し、もはやお茶の間自体が崩壊しているわけです。家族の食卓でも、画面は別々。お父さんはサッカー観て、お母さんがドラマ観て、子どもは推し活しているかもしれません。大衆なき時代の「ユニバーサル」って何?ということを改めて問い直した方がいいのではないかなと思いました。


ユージ:僕も考えさせられました。テレビで観たい一視聴者である一方で、ビジネスでもあるので、ここは難しいところだなと思いました。

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