26.06.02
一般販売がスタートした、世界初の完全養殖ウナギについて

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【一般販売がスタートした、世界初の完全養殖ウナギについて】
吉田:世界初となる完全養殖のウナギの一般向け販売が始まりました。ウナギの漁獲量が激減するなか、資源を守る切り札となるのでしょうか。完全養殖の可能性や課題について神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:神庭さん、改めて、ウナギはどれくらい減っているのでしょうか。
神庭さん:ピークの1960年代にはウナギの漁獲量は3,000トンを超えていたのですが、2022年には59トンまで激減してしまいました。ウナギの稚魚であるシラスウナギも1960年代には200トン以上獲れていたのですが、2025年に養殖池に投入された量は18トンにとどまりました。ニホンウナギは、国際自然保護連合の絶滅危惧種にも指定されています。実はジャイアントパンダよりも危機の度合いが深刻なんです。そんななか、大分県佐伯市の山田水産が、国立研究開発法人水産研究・教育機構からの技術移転を受けて、シラスウナギの量産に成功。一般向けの試験販売にこぎつけました。水産資源の保護につながるのではないかと期待されています。
吉田:話題になっている完全養殖ウナギは、どこで買えるのでしょうか。
神庭さん:山田水産のオンラインショップや築地の専門店で販売をスタートしたのですが、私が日曜日に確認した時点では「規定数量に達したため、販売終了」という表示が出ていました。7月には日本橋三越本店でも売り出す予定だということです。また、イオンのネットスーパー「Green Beans」やイオンショップでも数量限定で販売していますね。値段は「Green Beans」が重さによって4,860円〜5,940円。イオンショップの方は、ギフトボックス入りで2尾1万584円〜1万2,960円という価格設定になっています。
ユージ:やっぱり気になるのは味ですよね。高市総理はXの投稿で「脂のりが抜群、ふっくらととろけるような口当たりで、お箸が止まりませんでした」と絶賛していました。
神庭さん:本当に絶賛していたので、私も気になって「Green Beans」で注文して食べてみたのですが、本当にふわふわ。もうお店かなっていうレベルで、めちゃめちゃ美味しかったです。もう5,000円払ったので忖度なく言います。美味しいです。
ユージ:やっぱり美味しいんだ。
神庭さん:完全養殖ウナギと従来の養殖ウナギを食べ比べた産経新聞の外崎晃彦記者は、完全養殖は赤みがあって色がテカテカしており、肉質はやわらかく感じたそうです。一方、従来の養殖ウナギは茶色っぽく、肉質は引き締まって感じたといいます。ただし、開発・研究している山田水産側の見解としては、色味はあくまで「タレの色の違い」、サイズや、やわらかさは「個体差」であって、完全養殖と普通の養殖の違いというわけではないようです。
吉田:そもそも「完全養殖」と、これまでの「養殖」はどう違うのでしょうか。
神庭さん:日本産ウナギのほとんどは養殖ですが、養殖といっても、天然のシラスウナギを獲ってきて養殖池で育てる方式なんですね。完全養殖がすごいのは、親ウナギから卵を採取して、人工孵化させてシラスウナギ、成魚へと成長させて、再び卵を採取するというサイクルをすべて人の手で完結できる点です。天然資源に依存しなくて済みます。ニホンウナギの生態は非常にミステリアスで、水産庁の資料によれば、日本から2,000キロ離れたマリアナ諸島付近で孵化し、仔魚からシラスウナギへ成長しながら東アジアを回遊します。そこから河川や河口域で5年から15年かけて大人のウナギになり、マリアナ諸島付近へ戻ってくるとみられています。ただ、産卵場所が特定されたのは2011年とつい最近のことで、詳しい生態もわかっていません。そんな状況で完全養殖と量産化を実現したのは、快挙と言っていいんじゃないでしょうか。
ユージ:かなり試行錯誤があったのでしょうね。
神庭さん:おっしゃるとおりですね。エサの改良がひとつのブレイクスルーになったといわれていて。NNN(日本ニュースネットワーク)によれば、10年前はアブラツノザメというサメの卵をエサに使っていたのですが、非常に高額でした。改良を重ねてニワトリの卵や脱脂粉乳などを使ったエサに切り替えることで、劇的にコストを削減。従来は卵からシラスウナギに育てるまでに4万円かかっていたそうなんですけれども、20分の1以下の1,800円まで下げることに成功したということです。また、水槽の改良や稚魚の生存率アップも大量生産につながりました。JNN(ジャパンニュースネットワーク)の取材によると、1990年代はウナギの赤ちゃんからシラスウナギになるまで生き残れる確率がたったの0.3〜1%だったそうです。それが今は10〜15%まで歩留まりが上昇したということです。
吉田:今後の課題は何でしょうか。
神庭さん:やはりコストの削減かなと思います。10年で20分の1以下に下がっただけでも十分すごいですが、天然のシラスウナギに比べるとまだ3倍くらい高いです。これから先の10年でさらにコストを引き下げられれば、一気に完全養殖が広がるんじゃないかなと思います。書籍『結局、ウナギは食べていいのか問題』の著者である海部健三さんは、日本の養殖ウナギの半分以上が密漁ないし不透明な流通を経ていると推測しています。密漁は反社会的勢力の資金源にもなっておりますから、完全養殖が広まっていくことで、流通の健全化につながるといいなと思います。それからもうひとつ大事なのが、海外への技術流出を防ぐことです。私たちに馴染みのあるところでいうと、シャインマスカットは中国に流出してしまったことによって、100億円以上の損失が出たともいわれています。ウナギに関していうと完全養殖にこぎつけたわけですから、その轍を踏まずに、日本発の技術をしっかり守っていただきたいと思います。