26.06.24
英語教育にAIを使うこと

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
「英語教育に『AIの適切な活用』、指導要領に初めて明記へ…外国語を学ぶ意義を考える」
吉田:読売新聞によりますと、文部科学省は先週の6月18日木曜日、教科書や授業の基準となる学習指導要領の改定に向け、英語教育の取りまとめ案を提示しました。英語教育での「AI=人工知能の適切な活用」を初めて指導要領に明記、外国語を学ぶ意義も再定義しました。塚越さん、この英語教育の取りまとめ案について詳しく教えてください。
塚越さん:今回の取りまとめ案は文科省の諮問機関の「中央教育審議会」で大筋了承されまして、2030年度以降の学習指導要領に反映される見通しです。もう少し先ですね。AIの活用については、生徒の発音練習や英会話の相手、また英作文の添削などが想定されています。AIと教育について、文科省は2024年度から、全国の選ばれた小中高校でAI活用のモデル事業をはじめたのですが、使ってみると英語の発音や作文など、話す力と書く力が伸びたということです。簡単にいえば、AIが「個人指導」してくれるということで、文科省側も、AIが英語教育を大きく変える可能性があるという見方をしています。一方で今回の会議では、AIによる翻訳技術が向上したことで、英語学習の意義を生徒に説明するのが難しい、という指摘がありました。それだけAI翻訳が優れていて、影響力が強いということです。この英語を学ぶ意義について取りまとめ案では、異なる言語や文化を尊重して、国内外の多様な他者との共生につながる点や、人間同士の対話はAIよりも視野が広がることを指摘しています。また、AIの回答が正しいかを判断するにも、語学力が欠かせない、といったことも示されています。いずれにしても、外国語教育にAIは強い影響が出るわけですが、現状は学校現場の判断に委ねられているので、学習指導要領に位置づけをしないと格差がでてしまうといった指摘もされました。
吉田:「英語教育の取りまとめ案」、どのようにご覧になりましたか?
塚越さん:簡単にいえば、AIは強い影響力があるので、うまくAIを使っていくための方向を打ち出したと思います。一方で、AIが便利すぎると外国語を学ぶ意義を見失う生徒も出てくるので、AIも大事ですけれども、リアルの英語話者と実際に会話する機会を増やして、「外国語って、自分が話せると嬉しい」という「体験」、この「体験」を増やしていくことも重要になると私は思います。
ユージ:世界に目を向けると、授業でAIを使う国は増えてきているようですね?
塚越さん:そうなんですね。OECD(経済協力開発機構)が小中学校の教員を対象に行った2024年の調査があります。この1年間で授業でAIを使ったという小中学校の教員は、国際平均だと36%ですが、日本は17%でした。対象の55カ国のうち54位と、非常に利用率が低いです。AIを使うことへの懸念点を聞くと、日本では「児童・生徒の偏った見方を増大させる」とか、「プライバシーやセキュリティの不安がある」っていう声は大体5割ということで、これも国際平均より高いんですよね。一方で海外では相対的にAIの利用が進んでいて、例えばオーストラリアのニューサウスウェールズ州だと、学校向けに生成AIツールを開発して、質問にすぐ回答するのではなく、考え方や調べ方を示す機能を搭載したものを導入しているということです。最近はChatGPTにも学習モードというのがありまして、すぐに正解を教えるのではなく、一緒に子どもと考える機能がありますけど、それが「学校特化型」ということだと思います。他にも様々な事例があるので見ていくと、使わないということよりも、「どううまく使うか」に焦点が当たっているように思いますね。
ユージ:英語に限らず、学校の授業でAIを使うことについて塚越さんはどうご覧になってますか?
塚越さん:一言で言うと、現状はケースごとにAIの使い分けというのが重要ということに尽きます。最近は教科書もデジタルか紙がいいのかで議論がありますが、これもやはり「使い分け」の議論なんですよね。もうひとつは、異なる人や文化を「体験」してもらうことで、広い意味での教養をつけることも重要なのかなと思います。AIで効率的な個別学習ができるようになってきているので、そこで勉強した分、空いた時間で体験をしてもらう。体験というものがなくなってしまうと、やる気が失われる、意欲がなくなりますよね。そうすると「じゃあもういいよ、全部AIに任せちゃう」ということで、大学でも様々な調査がありまして、外国語の課題を全部AIに任せて提出したことがあるという学生も増えているという調査もあります。これも小中高でも起きそうじゃないですか。もしかすると、すでに起きているかもしれない。基礎的な体力をつけるという意味でも、ある程度自分でやっていくということは重要なので、そこを考える必要があると思う一方で、「最近の若者は」という感じで、AIは全部ダメと言ってしまうと、それはそれでおかしいじゃないですか。これは昔から言われることなので、すぐに否定するのではなく、若い人は新しい頭の使い方ができているシーンもあるので、そこはそこで考える必要があるかなということも指摘しておきたいですが、ユージさんはいかがでしょうか?
ユージ:いや、もうこのAIは本当にすごいなと思っていて、最近はAIに入力するだけじゃなくて、会話するバージョンもあるじゃないですか。それで僕自身が全く話せない言語の外国の方と本当に会話できたことがあって、それを実感した時に、うわあ、もういよいよこのAIでいいのかもしれないと思ってしまった自分がいましたね。
塚越さん:そうですね。すごくレベルが高いんですよね。
ユージ:高いですね。塚越さん、ありがとうございました。