26.10.01
SNS年齢確認にマイナカードやスマートフォン活用案

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら
「SNS年齢確認にマイナカードやスマートフォン活用案」
吉田:こども家庭庁でSNSから子どもを守る対策の詳細な制度設計が始まりました。利用者の年齢確認を柱としてSNS事業者などに実効性のある方法を求める方向です。
ユージ:塚越さん、こども家庭庁は、どんな年齢確認の方法を考えているのでしょうか?
塚越さん:番組でも何度かお伝えしてきた、SNSの未成年の利用を制限する方法についてです。こども家庭庁が詳細な方向性を出してきたのでお伝えします。まず、今のSNSも年齢確認の仕組みはありますが、大体が自己申告で生年月日を入力するだけであまり意味がなく難しいところがあります。今回、こども家庭庁は4つの方法を検討しています。1つ目は、身分証明書をユーザーが撮影してアップロードする方法です。確認しやすい方法ですが、年齢以外の情報が出てしまったり、他人の画像で偽装する可能性があります。2つ目が、マイナンバーカードをスマホで読み取って、18歳以上や13歳未満ではないなど、最小限の情報だけ取得するという方法です。マイナンバーカードを使うというのは分かりやすいかなと思いますが、これだとマイナンバーカードを持っていない人がいるという課題があります。3つ目は、スマホ登録時の情報を使う案です。AppleやGoogleのアカウントに登録された年齢情報を使うという案です。子どものスマホは保護者が設定することが多く嘘をつきづらいということですが、これも基本は自己申告なので、やはり偽装はされやすいです。4つ目は、携帯電話の契約時に確認した年齢情報を使うことです。年齢だけ使えるメリットがありますが、やるとなれば通信事業者との連携が必要で制度を整えるのに時間もお金もかかります。携帯電話を契約したときの情報を使いますが、携帯電話を契約していない端末では、この方法による年齢確認ができないデメリットもあります。電話は使わず、Wi-Fiだけで使っているスマホやタブレットでは、この方法では確認ができないということになります。いずれもメリット、デメリットがあります。
吉田:SNSの年齢制限が進む海外は、どうしているのでしょうか?
塚越さん:やはり参考になるのは海外の事情ですが、まずEUでは今月「EU KIDS法案」が発表されまして、13歳未満はSNS禁止、13・14歳は保護者が管理する限定的なアカウントのみで、自分のアカウントを持てるのは15歳からという段階的な仕組みです。SNS事業者やアプリストアに年齢確認を義務付けるとともに、個人が特定されないよう、最小限の情報だけ利用するということです。イギリスでは「オンライン安全法」に基づいて、特定のコンテンツ(アダルト等)については、身分証の照合や、顔写真からAIが年齢を推定するなど、複数の手法で年齢確認を行うことになっています。また政府は、16歳未満のSNSの利用を禁止する方針も発表しています。また2025年末に、この分野で世界で最初に16歳未満のSNS利用を制限する法律を施行したオーストラリアでは、ガイドラインはつくるものの、年齢確認は各事業者に任せています。多くのサービスでは自己申告や、顔写真からAIが年齢を推定する方法などが使われていますが、抜け穴も指摘されています。世界各国でも「これは正解」という年齢確認方法はなく、日本も含めて試行錯誤している段階です。
ユージ:今回、子どものための年齢確認ですが、大人への影響はありますか?
塚越さん:基本は子どものためにするものですが、年齢確認をするということで、大人も新たな確認の手間が増えることになります。情報を提供するので、場合によってはプライバシーやセキュリティのリスクも出てきます。年齢確認のための巨大なデータベースができて、そこから情報流出が起きると被害が大きくなるということもあります。このあたりのメリット、デメリットのバランスをどう整えるかになります。
ユージ:塚越さんは、SNSの年齢確認、どうすれば良いと思いますか?
塚越さん:私は年齢確認をするなら、集める個人情報をできるだけ少なくする方式を選ぶべきだと思いますが、4つの方法のうちどれを選択するかはなかなか難しいです。年齢確認を厳しくすれば子どもを守れる、という単純な話ではないと思います。例えば性的な目的で子どもに近づく大人や、闇バイトに勧誘する大人がいる場合、問題なのは知らない大人から簡単にメッセージが届くといったSNSの仕組みにもあります。もし、子どもが抜け穴でSNSを使ったとしても、被害を最小限にする仕組みは大事だと思います。私の知り合いで駿河台大学教授の八田真行さんがYahoo!ニュースに書いた記事で、プラットフォームに対する対応策を示しています。例えば、未成年のアカウントは最初から非公開にして、知らない大人からのメッセージは届かないようにする。あるいは深夜の通知を止める、といった設計です。実際、MetaはInstagramの10代向けアカウントで非公開を初期設定にしており、大学生に聞いても最初から初期設定で非公開にしている人は多いです。万が一子どもが初期設定で使った場合でも、大きな被害にならないような設定もしておく2段構えが必要です。SNSの利用をある程度は制限する関所を作っておく。関所を通ってもガードレールを置いておく。この2段構えを今のうちから作っておくことが必要だと思いますね。