26.10.21
『ふるさと住民登録制度』実証スタート…その懸念点は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
『「ふるさと住民登録制度」実証スタート…その懸念点は?』
吉田:日経新聞によりますと、愛着を持つ地域を登録して接点を持つ「ふるさと住民登録制度」の実証が今月16日に始まりました。塚越さん、まずは「ふるさと住民登録制度」について、改めて教えてください。
塚越さん:地方は人口減少が課題で、地域のお祭りや環境保全の担い手など、いろいろな分野で人材が不足しています。そこで、住んでいる人だけでなく、地域に愛着を持っていたり、継続的に関わりたい人を「ふるさと住民」として登録する制度が「ふるさと住民登録制度」です。故郷から上京した人はもちろん、旅行でその地域が気に入った人などが、住民票を移さずに登録できるというものです。登録には2種類ありまして、1つは誰でも登録できる「ベーシック登録」です。こちらは好きな地域を登録しておくと、イベントの案内やボランティアの募集などの情報を受け取れます。もう1つが「プレミアム登録」です。こちらは自治体が指定する地域活動に年3回以上参加するのが条件で、交通費や宿泊費の補助などを受けられる場合があります。内容としては、お祭りの運営ボランティアや獣害対策として放置されている柿を収穫して干し柿をつくるなど、自治体ごとにさまざまです。今回の「ふるさと住民登録制度」は「ふるさと納税」のようにお金を寄付するのではなく、地域との人的なつながりをつくることが目的です。
吉田:今月16日に始まった実証では、どんなことを行う予定なんですか?
塚越さん:今回は全国220の自治体が参加して、事前に募集した2,000人~3,000人程度を対象に12月まで実証を行います。具体的には、専用アプリの使いやすさや自治体が情報発信をしたり、地域活動に参加する人を募集したりする仕組みを検証します。例えば、山口県の美祢市では、カルスト台地で有名な「秋吉台」の自然環境を守る活動への参加を呼びかけます。また、長崎県の佐世保市では、進学で市外に出ていく若者が多いため、卒業後も故郷とのつながりを保つために活用したいとしています。今回の実証結果を踏まえて、総務省は来年3月の制度開始を目指していて、4月から本格的な活用につなげていく予定です。
ユージ:この「ふるさと住民登録制度」は、懸念点もあるようですね?
塚越さん:総務省が都道府県を含む1,788の団体を対象に行った調査では、全体のおよそ74%が参加に前向きで、地域の活性化や課題の解決につながるといった意見が多くありました。その一方で、およそ2割にあたる330の自治体が事務負担、およそ1割にあたる193の自治体は財政負担の大きさを懸念しています。そもそも人口減少が進む自治体では、職員も不足しているので、新しく登録する人を募集したり、情報発信やボランティアの受け入れを行うのにも、人手もお金も必要になるのが負担ということですね。そのため、国としては、システムの利用料を一定期間無料にしたり、自治体への財政支援を行う予定ですが、それだけで継続的に運営できるかは別問題です。また、人気の高い観光地がある自治体と交通の便が悪く知名度も低い自治体では、登録者を集める条件が違いますので、この制度によって、かえって自治体間の格差が広がらないかという懸念点もあり、考えが必要になります。
ユージ:「ふるさと住民登録制度」。塚越さんはどうご覧になっていますか?
塚越さん:自治体によっては人口減少などさまざまな課題がありますので、関係人口を増やすのは必然的な流れだと思っていて、私はいいことだと思います。ただ、「ふるさと」つながりで言えば、「ふるさと納税制度」がありました。いい部分もありましたが、地域とあまり関係のない返礼品など、本来の意図とは異なる過剰な競争も問題になりました。今回は返礼品ではなく、人とのつながりですが、登録者数が多ければ多いほどいいという評価基準になってしまうと、これもまた違った競争になってしまう可能性もありますので、そうならないように、どういう評価がいいのか、どのような人との交流ができれば財政支援を増やすのかといった評価軸、ルールづくりが必要だと思います。一方で、今回は住民票を移すわけではないので、いろいろな奪い合いにはならないとも思いますので、健全な人と人とのつながりを増やしていくことを重視してほしいと個人的には思います。あとは、東京に住んでいても、ある地域が好きだということで、そこのニュースを見聞きしていくうちにその地域の選挙なども気になったりすると思います。そうすると、関係ないけど関係のある人たちがそういう場所の政治を見ることになると、政治の透明化などにつながると思います。今住んでいる方も、関係人口を増やしていくと、単にボランティアということだけではなく、自分たちの住環境の向上などにもつながると思います。いずれにしても、「ふるさと住民登録制度」にはまだまだ課題があることは当然なんですけれども、自治体も生き残りということもありますので、みなさんで適切に競って関係人口を増やしいい住環境になるように努めてほしいなと思います。