26.10.27
アニメ・ゲーム支援で政府が新組織設立へ

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。
神庭さんが注目した話題はこちら
「アニメ・ゲーム支援で政府が新組織設立へ」
吉田:政府は10月22日、アニメやゲームなど日本発のコンテンツの海外展開を支援するため、新たな組織の設立を検討する会議の初会合を開きました。損失が拡大したクールジャパンの反省を活かし、成功に結びつけることができるのでしょうか。神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:政府はどんな組織を立ち上げようとしているのでしょうか?
神庭さん:アニメ、ゲーム、映画などのコンテンツ産業は、現状だと経済産業省、文部科学省、総務省などがバラバラに所管し、予算をつけています。それだと無駄が多いです。新たな組織は、縦割りをなくし、各省庁の予算を一元的に管理することで、効率的にコンテンツ産業を支援していくことを目指しています。政府は2027年中に新組織を発足させたい考えです。日本経済新聞によると、海外市場の開拓に向けた調査や売り込み、海賊版対策などの企業支援、予算執行の透明性を担保するための独立した監査委員会の設置などを検討しているということです。今回、初会合が開かれた検討会議にはフジテレビや東宝の社長、ソニー・ミュージックエンタテインメントの会長らが参加しているということです。
吉田:実現すれば大がかりな組織になりそうですが、政府の目標はどこにあるのでしょうか?
神庭さん:高市政権は成長戦略の柱となる「戦略17分野」の1つにコンテンツを掲げています。とりわけ、ゲーム・アニメ・マンガ・音楽・実写の5つに力を入れているんですね。日本のコンテンツ産業の市場規模は13兆円を超えていて、実は半導体産業よりも大きいです。さらに、日本発のコンテンツの海外での市場規模は6兆円規模と言われています。政府は2033年に海外売上高20兆円を目指していますから、足もとの数字の3倍以上ということで、非常に野心的な目標と言えるんじゃないかなと思います。
ユージ:クールジャパンはあまりうまくいかなかったようなイメージがありますが、これはうまくいくのでしょうか?
神庭さん:やはり皆さん気になるのが、クールジャパン機構の失敗だと思います。朝日新聞によれば、2013年に設立した官民ファンド、クールジャパン機構は累積損失が約540億円まで膨らみ、廃止が検討されているということです。無駄遣いの一例を挙げますと、クールジャパン機構は、マレーシアのジャパン・ストアに9億7,000万円の公費を投じました。この店では1箱2万円もする国産ブドウやら、1箱1万円のモモやらが売られていましたが、客足が少なくて閑古鳥が鳴いていたと評論家の古谷経衡さんが2018年にレポートしています。投資の費用対効果以前の問題として、ファンド運営のための人件費に累計111億円、家賃や水道光熱費に25億円が消えるなど無駄な支出が多かったわけです。こういった失敗を繰り返してはいけないかなと思います。
吉田:そもそも国はアニメなどのコンテンツにどこまで関与すべきなんでしょうか。
神庭さん:ここはやはり一定の節度は必要で、コンテンツの中身について、ああだ、こうだと口を挟むべきではないと私は思います。日本の漫画やアニメ、ゲームが世界に冠たる文化として花開いたのは、規制が少ない業界で自由な試行錯誤が許されてきたからなんですよね。暴力表現や性表現についても、海外に比べてかなり寛容です。そうでなければ「進撃の巨人」や「約束のネバーランド」「ザ・ワールド・イズ・マイン」「殺し屋1」のような作品は生まれなかったと思います。政府が変にリーダーシップを発揮して表現の中身までがんじがらめに縛ろうとすれば、途端にその魅力は失われてしまいます。韓国のコンテンツ支援はその辺りの塩梅が上手で、お金は出しても口は出さないことが徹底されているんですよね。
ユージ:韓国はどんなコンテンツ戦略に取り組んできたんでしょうか。
神庭さん:ライターの飯田一史さんが、韓国コンテンツ振興院 日本ビジネスセンターの元センター長に取材した、2023年の現代ビジネスの記事によりますと、韓国はインターネットのインフラを整備する、人材育成のために学校や国営スタジオをつくる、といった間接的な支援に当たってきたそうなんですね。ゲーム業界に対しても、政府が「ゲームをつくろう」と号令を出すのではなく、eスポーツを盛り上げる方に注力するといった形で支援をしてきたということです。記事には「種をまいて水をやる『基礎』の部分に重点的にお金を投じた」というふうに書かれていて、なるほどなと思いました。
吉田:日本のコンテンツ支援、神庭さんはどう考えますか?
神庭さん:際限なく税金をじゃぶじゃぶ投入するっていうのはダメだと思います。クールジャパンの反省を踏まえて、失敗した時の撤退ライン、損切りラインを事前に決めておくことが大切です。何をやるかより、何をやらないか、引き算の支援を考えるべきじゃないかなと思います。DeNAのスマホゲーム開発に経済産業省が15億円支援する、というニュースが6月に報じられて炎上しました。資金力のある大企業にお金をばらまくよりも、まだ見ぬ才能が世に出てこられるような環境整備の方に予算を使ってほしいと思います。一方で、海賊版対策は個別企業では取り組みにくいので、国が旗振り役になるというのはとてもいいことだなと思います。OpenAIがジブリ風の画像を生成できるようにしたことが、一時波紋を呼びましたよね。AI企業や巨大プラットフォーマーが強引に日本のコンテンツをかすめ取ろうとしてきた時に、「いやいやいや、それおかしいでしょ」というふうに国としてしっかりと物言いをつける。あるいは最強弁護士軍団を結成して、弁護士費用を補助するくらいのことはしていただきたいと思います。