22.03.03
『ニュークリア・シェアリング』について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
BuzzFeed Japan編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!
『ウクライナ情勢を踏まえた安全保障政策「ニュークリア・シェアリング」』
吉田:ウクライナ情勢を踏まえた今後の安全保障政策をめぐり、今、『ニュークリア・シェアリング』が議論の対象として浮上しています。
ユージ:神庭さん、この『ニュークリア・シェアリング』について教えてください。
神庭さん:日本語でいうと『核共有』と言います。核兵器を持たない国々がアメリカの核兵器を自分の国に配備することで“核をシェアする”。そして、『核抑止力』を共有する政策なんですね。安倍元総理が先月27日にフジテレビ系の討論番組でこんなふうに発言したことが話題になりました。「核の問題は、NATOでも例えば、ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリアは核共有をしている。自国に米国の核を置き、それを航空機で落としに行くのはそれぞれの国だ」と、「日本はもちろんNPTの締約国で非核三原則があるが、世界はどのように安全が守られているかという現実について議論していくことをタブー視してはならない」と、これを受ける形で共演していた橋下徹さんも「核は絶対使ってはいけないが議論は必要だ」といふうに同調したんですね。
ユージ:何故そういう議論が出たんでしょうか?
神庭さん:1991年の旧ソ連の崩壊後にウクライナは、ロシア製の核弾頭、数千発を保有する世界第3位の核保有国になったんです。ウクライナとしては、核を持ち続けたい意向があったんですけれども、1994年の『ブダペスト覚書』で、アメリカやイギリス、ロシアが“ウクライナの安全を保障します”ということと引き換えに核の放棄を決定しました。96年までにロシアに核兵器を引き渡しているんですね。これに関してウクライナのクレバ外務大臣は、先月22日のアメリカのテレビ局のインタビューで「過去には戻れない」と述べたうえで、核放棄について「間違いだった」という趣旨の発言をしているんです。こうした流れのなかで、「ウクライナが、もし、核を持ち続けていれば、ロシアの侵攻はなかったのではないか?」とか、「日本も自国を守るために核の保有が必要なのではないか」といった言説が出てきているということなんですね。ただし、当時のウクライナには、核兵器のメンテナンスとか運用をする十分な能力がなくて、老朽化などに対応できない状況でした。なので、「結局、手放すしかなかったんじゃないの?」という指摘も専門家からは出ています。チェルノブイリ原発事故の苦い教訓も、核放棄の判断に影響したと言われていまして、歴史の“if”を考えるにしても、そうした史実は丁寧に見ていく必要があるのかなというふうに思います。
ユージ:日本政府はどういう考えなんでしょうか?
神庭さん:安倍元総理のテレビでの発言の翌日、岸田総理は参院予算委員会で、ニュークリア・シェアリングについて「非核三原則を堅持するという、わが国の立場から考えてこれは認められない」と明確に否定しました。『非核三原則』とは、核兵器について、『持たず』・『作らず』・『持ち込ませず』と定めた日本の国是なんですね。ただ、実際にはですね、核兵器を積んだアメリカの艦船が日本に寄港したり、領海を通過したりすることを容認するような“密約”が過去に日本とアメリカの間にあったことが明らかになっています。アメリカは「核積んでますよ~」といちいち宣言しないですし、日本もわざわざ聞かない、と…。なので、非核三原則の最後の『持ち込ませず』に関していうと、事実上、骨抜きになっていたということなんですね。自民党の国家戦略本部は、野党時代の2011年、実態に合わせて『非核2.5原則』に転換することを打ち出しているんです。
吉田:神庭さん、ウクライナ危機をめぐって、『憲法9条』についても論争が起こっているようですね。
神庭さん:共産党の志位和夫委員長はTwitterに、「仮にプーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が、憲法9条なのです」と投稿して、このツイートに対して、自民党の細野豪志衆院議員は、「論ずべきは、憲法9条があれば、日本はウクライナのように他国から攻められることはないのか、ということ。残念ながら答えはノーだ」というふうに厳しくツッコミを入れました。核共有の話も含めてですね、“右の人も左の人も好き勝手言ってるなぁ…”という印象はあるんですけれども、ただ、外交安全保障についての議論を深めること自体は大事なので、この際どんどんやった方がいいのかなというふうには思います。もともとの持論を正当化するために、ウクライナ問題を利用するのではなくて、ウクライナと日本のどこが似ていて、何が違うか?を冷静に分析してですね、日本の立ち位置を見定めていかないといけない。ウクライナとの共通点は、近隣国と領土問題を抱えていて、しかもロシア、中国、北朝鮮のいずれも核を保有しているということですよね。異なるのは、ウクライナがまだNATOに加盟すらしていないこと。一方で日本は、アメリカと日米安保条約を結んでいて、核の傘に守られていて、米軍基地もある。軍事的に孤立無縁のようなウクライナの状況を見て、「日本もこうなるんじゃないか!?」、「アメリカは本当に助けてくれるのか?」と疑心暗鬼、パニックになる前に共通点と相違点をしっかり考えておく必要があるかなというふうに思います。
吉田:世界の中の日本についてもっと知る必要がありますね。
神庭さん:そうですね。アメリカは世界の警察を引退して影響力が低下していて、中国、ロシア、北朝鮮、イランと四正面で相対さないといけない。しかも、国連安保理は、ロシア、中国の拒否権もあって機能していないという状況もあって、ニュークリア・シェアリングの議論が出てきているんですけれども、やっぱり、唯一の被爆国に生まれて、僕も『はだしのゲン』を読んで育っていますから、正直、もろ手を挙げて「どんどんやれ!」というふうには、なかなか思えないんですね。『抑止力』があるのはわかる。わかるんだけど“…”、その『…』の中で葛藤してる感じです。仮に、仮にですけれども、日本が将来、核を保有することになったとして、それは、「核武装ヒャッハー!」とか、「強いぞ日本!」みたいな勇ましいものであってはいけないし、ある種の痛みと重みを伴う“苦渋に満ちた決断”になるんじゃないかと思うんですよね。なので、どんな道を選ぶにしても、地に足のついた冷静な議論が欠かせませんし、そう思ってですね、最近、かわぐちかいじ先生の『沈黙の艦隊』を読み始めたところです。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 3, 2022
「ニュークリア・シェアリングついて」
ニュークリア・シェアリングというのは核共有のことで、核兵器を持たない国々がアメリカから核兵器を借りるという形で自分の国に置くことで核抑止力になるのではないか?と言われています。#ワンモ
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 3, 2022
「ニュークリア・シェアリングついて」
ニュークリア・シェアリングというのは核共有のことで、核兵器を持たない国々がアメリカから核兵器を借りるという形で自分の国に置くことで核抑止力になるのではないか?と言われています。#ワンモ
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 3, 2022
核を持つことで抑止力になるということが確かではないので、核を持つことによってどういう影響を日本に与えるかなどを考え、しっかりと議論はしていった方がいいのかもしれません。#ワンモ