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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

23.12.11

多子世帯の大学授業料 無償化
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「多子世帯の大学授業料 無償化」

吉田:政府は少子化対策の一環として、3人以上の子どもがいる多子世帯について、2025年度から子どもの大学授業料などを無償化する方針を固めました。所得制限は設けないということですが、具体的には、どんな仕組みが検討されているのでしょうか?


神庭さん:もともと「高等教育の修学支援新制度」という仕組みがあり、世帯年収380万円未満は入学金や授業料が減免されてきました。今年の春の段階で、子どもが3人以上の多子世帯や、私立の理工農系の学部に進む場合については、来年度から減免対象となる世帯収入の上限を600万円まで引き上げることを決まっていました。今回さらに支援対象を広げ3人以上の子どもがいる世帯については、2025年度から所得制限なしで入学金・授業料を無償化することが検討されています。大学以外に短大や専門学校なども含まれる見通しだといいます。


ユージ:僕も非常に興味がある話題ですが、賛否が分かれているようですね。


神庭さん:そうです。SNS上の賛成意見としては、「めっちゃ助かる」「ありがたい」「まさに異次元」「子どもが多いと習い事や塾、食費などのお金がかかる。これならもう1人、という可能性も広がる」など当事者らを中心に歓迎の声が広がっています。一方、反対意見・慎重意見としては「18年後にこの制度が続いている保証がない」「“3人目以降”なら分かるが、子ども3人全員無償化は不公平」「子どもが3人いない家庭は多子世帯の大学授業料を税金で負担して、自分の子どもは奨学金を借りて大学卒業させるのか」「1人目、2人目から段階的に補助する方がいいのでは」といった疑問の声が上がっています。


ユージ:神庭さんの意見はどうでしょう?


神庭さん:これまでも何度かお話しをしてきましたが、少子化の大きな原因は未婚化です。結婚する人数が減っていることです。ニッセイ基礎研究所の天野馨南子さんのリポートによると、初婚同士の婚姻数が1970年は91.5万件あったものが、2021年は37.1万件。実に6割も減っています。一方、すでに結婚した夫婦から生まれる子どもの数はそんなに落ちていなくて、半世紀前の86%ほどをキープできています。重要なのは、子育て支援=少子化対策ではないということ。いきなり3人目を狙う前に、まずは若い人が結婚できる、子どもを1人産んでも大丈夫だと思えるだけの経済環境、雇用環境を整えることの方が先決だと思います。また、無償化が大学側にとって良くない影響を及ぼすことも懸念しています。


ユージ:どういうことですか?


神庭さん:少し引いた目で見ると、少子化でピンチになっている大学の支援策という風にも捉えられます。私立大学の半数が定員割れで、3分の1が赤字に陥っています。少子化のことを考慮せずに、大学をポコポコつくりすぎた結果です。これからさらに18歳人口が減っていくなかで、大学の統廃合や再編は避けられないと言われています。無償化で大学に行く人が増えると、本来であればそのまま募集停止になるはずだったゾンビ大学が延命してしまう可能性があります。そういうゾンビ大学や、目先のお金のために外国人留学生をかき集めているような大学に大事な税金が流れないように、大学の規模や研究力、あるいは受験生の学力に応じて無償化の対象となる大学に絞り込みをかける必要があるのではないか。加えて、学費が何千万円もかかる私立の医学部まで全額補助するとなるとバランスを欠くので、この点でも支援対象の精査が必要です。


吉田:もう1つ気になった、東京都が発表した高校の授業料無償化も話題ですよね。


神庭さん:こちらも話題になっていますよね。国の支援制度で、もともと年収910万円未満の世帯に関しては、公立でも私立でも高校の授業料が助成されてきました。東京都の場合はさらに、国の支援金に上乗せして支援をしていて、現状でも年間で上限47万5千円までの助成があります。ただし、世帯年収910万円という縛りがあるので、こぼれ落ちてしまう人も多かったです。その所得制限を撤廃するということで、非常に話題になっています。大学無償化に比べると、東京都の高校無償化の方は賛否の「賛」が多い印象です。大和総研によると、東京23区の30代子育て世帯の年収中央値は1,000万円に迫っています。都内で子育てしようと思うと、それくらいお金がかかるということ。3年間で子ども1人142万5,000円、2人で285万円が無償になるとすると、家計へのインパクトは相当大きいです。メリットを得られる人の絶対数が多いので、そのぶん賛成意見も多いのかなと思います。来年の都知事選を控えて、小池さんは策士だなと思いますね。


ユージ:一方で、課題はあるのでしょうか?


吉田:都内は私立中高一貫校が多く、中学受験が非常に過熱しています。私立中学に関してはこれまで通り、有料ですが「高校分だけでもお金が浮くなら、うちも中学受験をさせてみようか」と考える家庭が増えると、中受熱がさらにヒートアップしそうです。公立高校の工業科や商業科では、生徒に資格や技術など「手に職」をつけて社会に人材を送り出してきましたが、「どうせなら私立に」と各家庭が私立シフトを強めると、そういった専門性のある公教育が空洞化してしまうリスクもあります。出産費用でも同じことが起きましたが、公費が投入されるとイタチごっこのように便乗値上げが始まります。あわせて便乗値上げを防ぐような仕組みも必要だと思います。


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