25.03.03
高校無償化で日本の教育はどうなる?その影響と課題

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
「高校無償化で日本の教育はどうなる?その影響と課題」
吉田:自民・公明・日本維新の会の3党は2月25日、高校の授業料無償化について合意しました。そこで今朝は、高校無償化の影響と課題について神庭さんに解説していただきます。早速ですが、高校の無償化、具体的に何がどう変わるのでしょうか?
神庭さん:もともと「就学支援金制度」というものがあり、公立や私立の高校に通う生徒に対して一定額が支給されていました。ただし、所得制限があって、年収590万円世帯だと上限39万6,000円。590〜910万円の世帯だと11万8,800円が上限で、それ以上の所得がある世帯は0円でした。この所得制限を撤廃しようというのが、今回の3党合意です。2段階ロケットのようになっていて、まず第1段階、今年の4月から年収に関係なく全世帯に対して、公立の授業料相当額である11万8,800円を支給します。さらに第2段階は、来年4月から私立高校に通わせる場合の上乗せ分に関しても所得制限をなくして、最大45万7,000円を支給します。これは私立高校の授業料の平均額と一緒です。
ユージ:すごい、大盤振る舞いですね!
神庭さん:子ども1人を私立高校に通わせたら137万1,000円。2人なら合計274万2,000円が浮くわけなので、子育て世帯にとっては非常にインパクトが大きいです。奨学金の充実や高校の施設整備なども合わせるとトータルの予算規模は5,000億円を超えます。ただ、国民民主との間で協議している103万円の壁をやめた場合、7~8兆円の財源が必要になることを考えると、自民・公明からしたら「予算案に維新が賛成してくれるなら5,000億円なんて安いものだよ」と思っているかもしれません。国民民主からしたら、維新・前原氏にしてやられたというところじゃないかなと思います。
吉田:無償化のメリットは、何でしょうか?
神庭さん:日本の公的支出に占める教育費の割合は8%。OECD諸国36カ国の中で、ギリシャ、イタリアに次いでワースト3位です。高齢者の社会保障費に比べて、将来世代への教育投資ははるかに低いです。高校授業料の無償化は、教育への支出を増やす政策なので、その点では肯定的に評価できるかなと思います。あとは「勉強が得意なのに、貧しくて高校進学を諦めざるを得ない」という子を減らして、教育の機会均等、スタートラインの平等を実現できる、という声もあります。
ユージ:デメリットはどうでしょうか?
神庭さん:1つ目は、「無償化、無償化」というけど実際には公費負担、税金による補填であるということです。何らかの形で有権者や将来世代が財源を担保する必要があります。2つ目は、無償化されるのは、あくまで「授業料分」だけだということです。私立に通わせれば、入学金、寄付金、施設維持費など他にも様々な費用がかかります。修学旅行も海外なら高額です。3つ目は、先ほどのスタートラインの平等という話と矛盾するようですが、所得制限撤廃で家計に比較的余裕のある人が「その分を塾代に回しちゃえ」となった時に、受験競争が苛烈化して、かえって教育格差が広がってしまう可能性があります。4つ目は、少子化対策としての効果はあまり期待できないということです。韓国は、2021年に高校を完全無償化しましたが、昨年の合計特殊出生率は0.75で日本の1.20人に比べても非常に低いです。5つ目は、私立が実質的に公立のような扱いになると、独自性や校風が薄まってしまうかもしれないという部分ですね。
ユージ:懸念もあるということですが、他に課題はありますか?
神庭さん:一番大きいのは公教育、公立高校が空洞化する懸念です。都市部と地方で差があるのですが、特に都市部では「どうせ授業料がタダなら…」と私立に生徒が流れがちです。ダイヤモンド・オンラインによると、完全無償化に舵を切った大阪では、2024年度の府立高校入試で全日制145校中70校が定員割れになりました。今後、統廃合が進む可能性があります。東京も同様で、24年度入試では都立トップの日比谷高校で辞退者が多数出て、5年ぶりに2次募集をすることになりました。私立からしたら、無償化は神風が吹いたようなものです。少子化で本来なら学校数も減っていくはずでしたが、ゾンビ私学が延命したり、便乗値上げに走ったりする懸念もあるかなと思います。
ユージ:高校無償化について、神庭さんはどう考えますか?
神庭さん:私立優遇になりすぎないように、公立を守る仕組みも考えた方がいいと思います。前にも言いましたが、公立に落ちたら即私立に行くしかないという状況は、生徒・保護者にとってリスクです。公立内で複数校を受験して、合否判定できるようにしてはどうかなと思います。あとは、社会全体として見るとホワイトカラーの事務職が余り、ブルーカラー、エッセンシャルワーカーは不足しています。大学全入で誰もが4年制大学に進学する社会は、本当に良い社会なのか?と僕は思っています。高卒の人たちがしっかりリスペクトされて、良い待遇を得られる社会の方を目指すべきだと思います。
ユージ:なるほど。それもそうですね。
神庭さん:大学合格率を競っている私立高校にじゃぶじゃぶお金を流し込むよりも、高専や工業高校、農業高校、水産高校、看護・介護・福祉系など「手に職」を持てるような学校を中心に「選択的無償化」をするやり方も本当はあったのではないかと思います。
ユージ:僕も、それはすごくいいアイデアかなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#ユジコメ ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 3, 2025
テーマは「高校無償化で日本の教育はどうなる?その影響と課題」
神庭さんも今日番組の中で話していましたが、
今回の高校の授業料無償化で学校に力を入れていくことは大切です。
ただ、そこから先の大学に進むための道筋を一生懸命整えようとしすぎる必要はないと思います。#ワンモ
#ユジコメ ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 3, 2025
個人的に思ったのは、必ずしも高校に行く人たちだけを支援する制度ではなく、
高校に行かない選択肢を選んだ若い人たちにとっても、何か支援をしてあげられるような制度があってもいいと思います。#ワンモ
#ユジコメ ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 3, 2025
また大学合格率を競う私立高校ばかりではなく、高専や工業高校、農業高校、看護、介護福祉系など、手に職を持てるような学校を中心に選択的無償化をするというやり方も出てくるといいのではないでしょうか。#ワンモ