25.03.04
7割の企業が初任給アップ。一方で、賃上げに潜む「2つの格差」

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
【7割の企業が初任給アップ。一方で、賃上げに潜む「2つの格差」】
吉田:帝国データバンクの調査で、今年4月に入社する新入社員の給与を前年度から引き上げる企業の割合が7割を超えました。神庭さん、まず今回の調査結果について詳しく教えてください。これは中小企業も含めた結果ということでしょうか?
神庭さん:はい、そうです。帝国データバンクによると、大手から中小企業も含めた調査で初任給を引き上げる企業が71%に達しました。引き上げ額は、「1~2万円未満」と答えた企業が41.3%で最も多く、平均引き上げ額は9,114円です。背景には人手不足による人材確保や物価の高騰、最低賃金の上昇などがあります。企業からは「物価上昇のなか、社員の生活のために初任給を引き上げる」「応募が来ないため引き上げるが、固定費が上がるのは中小企業にとってかなり死活問題」といった声があがったそうです。給与アップは嬉しいニュースですが、喜んでばかりもいられません。今日は2つの「賃上げ格差」に注目したいと思います。
ユージ:2つの「賃上げ格差」のうち、1つ目は何でしょうか?
神庭さん:大企業と中小規模企業の格差です。ユニクロやGUを運営するファーストリテイリングは、初任給を30万円から33万円にアップ。ソニーグループが3万8,000円増の31万3,000円、大和ハウスが10万円増の35万円と大企業からは景気のいい話が聞こえてきています。ただ、企業規模が小さい会社は、なかなか初任給アップに踏み切れていません。先ほどの調査でも、大企業・中小企業は7割ほどが初任給を引き上げるのに対して、小規模企業は62.2%と全体を大きく下回ってしまいました。
ユージ:くっきり差が出ているんですね。
神庭さん:そうなんですよね。初任給に限った話ではなく、賃上げ全般を見ても同様の傾向が出ています。NTTデータ経営研究所/NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの調査によると、従業員規模が5,000人以上の企業では58.9%が2023年と2024年の2年間どちらとも賃上げをしているのに対して、99人以下の企業では34.5%にとどまりました。賃上げの額についても、大企業ほど大きくなるなど二極化しているということです。中小企業は、日本企業の99.7%というのはよく知られるところですが、そのうち84.5%が小規模事業者です。そこまで賃上げの果実を行き渡らせないと、日本全体がなかなか元気になりません。違法な下請け叩きをバンバン摘発して、小規模な企業も価格転嫁しやすい環境をつくっていかないといけないなと思います。
吉田:続いて、2つ目の「賃上げ格差」は何でしょうか?
神庭さん:社内の世代間格差です。第一生命経済研究所の熊野英生さんのレポートによると、2019年と2024年の賃金を世代別に比較したところ「20~24歳が10.3%増」、「25~29歳が9.5%増」、「30~34歳が5.8%」「35~39歳が4.8%」と減ってきて、「40~44歳はガクンと落ちて0.1%」。私も42歳なので、いま涙をこらえながら読んでいます。「45~49歳は2.1%」で少し増えていますが、「50~54歳はマイナス3.0%」そして、「55~59歳は4.9%」とまた増えます。世代間格差が非常に大きいです。誤解のないように、初任給アップ自体は喜ばしいことで、妬んだり批判したりするのは間違いだと思います。ただ、そもそも格差が大きいところに、新卒や20代ばかり優遇されると、やる気を削がれる世代も出てくるかもしれません。
ユージ:僕と吉田さんも30代後半の世代です。20代と比べるとちょっと低いかなと思います。確かに内心、ちょっと複雑なものがありますよね。
神庭さん:2人の世代はマシなほうで、氷河期世代なんか、もっと大変です。若い頃は安い給料で働かされて、年を重ねても賃上げは薄いし、踏んだり蹴ったりです。「人手不足だから新卒の給与アップだ!」と企業がなるのは分かりますが、社外だけじゃなく社内の人もきちんとケアしてあげないと「やってられるか!」で退職する人も出てきます。だからこそ、企業側は、人材流出を防ぐリテンション=離退職の引き止めとしての賃上げも並行して考えておく必要があります。逆にいうと、50~54歳がマイナスなのは「もう、この歳で辞めることはないだろう」と企業側に足元を見られている部分もあるかもしれません。
吉田:こういった「賃上げ格差」の問題について、神庭さんはどう見ていますか?
神庭さん:初任給は上がるんだけど、その後の給与カーブの上昇が押さえつけられて、実は生涯収入はあまり変わらないとか、今までボーナスで渡していた分を基本給に回して、見た目の給与アップに見せかけるみたいなセコい手口をやっている企業もあるようです。新卒の皆さんはしっかりチェックして欲しいなと思います。あとは、企業の全体情報として内部留保にあたる利益剰余金は2023年度末で600兆円を超えています。先行き不安に備えて一定額を手元に置いておこうという気持ちは分かるのですが、それにしても溜め込みすぎですから。ステークホルダーである従業員に、もう少し還元してもバチは当たらないのかなと思います。従業員の人件費を単なるコストとしてだけ考えるデフレマインドから脱却して、「人材への投資」という風に捉え直していくことが必要なのかなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 4, 2025
『7割の企業が初任給アップ 一方で、賃上げに潜む「2つの格差」』について。
まず、1つ目は大企業と中小企業の格差ということでした。…
#ユジコメ ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 4, 2025
2つ目の格差は、世代間の格差ということで今の初任給と10年、20年前の初任給の例を出しながら神庭さんに解説いただきました。ただ、ここもよく見ないといけないポイントがあって、初任給は上がっていたとしても、全体をみると生涯年収はあまり変わっていないというケースがあるようです。…
#ユジコメ ③…
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 4, 2025