24.09.11
自民党総裁選の候補が打ち出した『解雇規制の緩和』 その懸念点は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
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「自民党総裁選の候補が打ち出した『解雇規制の緩和』 その懸念点は?」
吉田:自民党総裁選挙への出馬を表明した小泉進次郎元環境大臣が「聖域なき規制改革」を掲げ、「解雇規制の緩和」を打ち出しました。河野太郎デジタル大臣も同様の主張をしています。塚越さん、この「解雇規制の緩和」について詳しく教えてください。
塚越さん:まず「解雇」は、会社が一方的に労働者との労働契約を解除することですが、正当な理由がない限り労働者が解雇されないための法律や規制が「解雇規制」です。労働基準法では、会社側による解雇権の濫用を防いで、労働者の権利を保護するため、一定の制限が設けられています。日本の法律では、現在でも企業による解雇そのものはできるのですが、実際は条件が厳しかったり社会的批判もあり、実際に解雇を行うことは難しいとされています。一方、給与は高いけどそれに見合った仕事をしていない、あるいはできない状況にある方、すでに「社内失業」しているともいえる人(とりわけ中高年男性層に多いですが)を経営者側は問題に感じているのですが、解雇規制があるので解雇できません。なので、経営者側からは以前から規制緩和を求める声がありました。
吉田:この「解雇規制の緩和」について、小泉さんと河野さんは、それぞれどのような考えを示しているのでしょうか?
塚越さん:小泉進次郎さんは6日の出馬会見で、大企業の解雇ルールを見直すことで、人材の流動性を高めると強調して、「不退転の覚悟で来年には国会に法案を提出する」と、かなり踏み込んだ主張をしています。具体的に言うと、解雇を認める条件を変更し、通常は解雇前に希望退職者の募集や配置転換をする努力が義務付けられていますが、これを大企業に限っては撤廃して、その代わりにリスキリングや再就職支援を課すこととしました。「大企業に限る」ということですが、様子をみながら変えていきたいということです。一方の河野太郎氏も「解雇規制の緩和」について、正規雇用は1度雇うと簡単には解雇できず、非正規雇用の人を正規採用するのに企業は躊躇してしまうので、制度を柔軟にすることは、正規非正規の格差を縮めることにつながると述べています。加えて河野氏は、会社都合の解雇の場合は、一定の金銭補償のルールが重要としており、金銭補償があれば次の仕事に余裕を持てるとしています。日本では不当解雇として裁判で争い、和解などで金銭が支払われるケース(労働審判)がありますが、河野さんが念頭に入れていると思われるのは、解雇が不当だと感じた際に、裁判で争うのではなく、最初から企業が解決金を支払って労働者がOKであれば、それで終わりにしようということが考えられます。実際にこうした制度を導入しているドイツでは、補償額を「勤続年数×月収×0.5」と定めて、年齢によっても変化させるものです。法律で決まっています。重要なのは、労働者の申し出が前提になっていて、さらに企業が一方的に解雇できるわけではないルールになっている点ということです。ドイツでは解雇と金銭補償が一体になっていることが重要かなと思います。
ユージ:「解雇規制の緩和」は、これまでにも政府が検討してきたと思いますが、労働組合が強く反対しているようですね?
塚越さん:もともと2015年、当時の安倍政権が掲げた「成長戦略」にも不当解雇された場合に職場復帰ではなく、金銭を支払う「金銭解決制度」も検討されたのですが、労働組合側は「不当解雇が正当化される」「リストラに悪用される」といった反対の声があり、導入されませんでした。その後にも厚生労働省が論点整理をして報告書をまとめていますが、実現はしていません。確かに、お金を払えば解雇できるという状況になれば、悪用も考えられます。一方でドイツのようなルールを整えれば、お金を払えば解雇し放題ということとも違うかと思います。
ユージ:「解雇規制の緩和」について、塚越さんは、どのようにお考えですか?
塚越さん:成長産業にリスキリングで労働者が転換できれば、結果的に社会全体の賃上げにもなります。産業化は流動化しているので、こういった解雇規制すること自体私は悪いことではないのかなと思います。やはり解雇する際に金銭補償だけではないので、経営者側に沿ったものではありません。小泉進次郎さんが話していますが、金銭補償だけでなく、リスキリングや再就職。退職した方が、その後違う業種にいけるかそういったところのハローワークの強化などパッケージングができないと、とりわけ就職氷河期世代や中高年層の労働環境が悪化するかなと思います。中間層が没落してしまうことになってしまいます。誰が総裁になろうとこういった解雇規制が争点になる場合が、パッケージング化します。ただ退職されることが金銭保証だけではなくて、他のパッケージをやりましょうではありません。でないと、バランスが崩れて一気に状態が悪化する可能性があるので、ここは十分に我々気を付けないといけないと思います。
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