26.06.04
削除申請0.1%、SNSの自由とルールは誰のため?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは、情報社会学がご専門の、学習院大学非常勤講師 塚越健司さんです。
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『削除申請0.1%、SNSの自由とルールは誰のため?』
吉田:SNSを運営する大手5社は、不適切な投稿への迅速な対応を義務づけた「情報流通プラットフォーム対処法」に基づく、2025年度の削除状況を明らかにしました。利用者からの申請を受けた削除率はいずれも50%未満で、X(旧ツイッター)は、非表示などを含めても0.1%でした。
ユージ:塚越さん、改めて「情報流通プラットフォーム対処法」について教えてください。
塚越さん:ネット上の誹謗中傷や権利侵害への対応を強化するため、去年の4月1日から施行された法律です。内容はいろいろありますが、大きな狙いは「削除のルールを強化する」です。規模の大きなSNS事業者には、削除申請の窓口をつくって、7日以内に削除するかどうかなどの対応をユーザーに通知すること、また実際にどのような運用をしたかを年に1回公表することが義務付けられています。対象となるのはGoogle(YouTube)やLINEヤフー(Yahoo!知恵袋など)、Meta、TikTok、そしてXなどがあります。報道によると、どの企業もユーザーからの削除申請に対して実際に削除したのは5割を下回りました。Metaは、「特定のユーザーにだけ非表示にする」といった対応を含みますが、削除率は46%でした。その他TikTokは24%、LINEヤフーは15%、Googleは7%。中でもXに関しては、なんと削除率0.1%でした。
吉田:Xは、0.1%。かなり低く感じますが、なぜ削除が進まないのですか?
塚越さん:前提として、SNS各社は自社で定めた方針で、AIや人間の手で自主的に年間数十万〜数千万件の投稿を削除をしています。対して、今回は「ユーザーからの削除申請」に対しての対応です。今回の法律では、削除申請について調査を行う専門担当者の設置が求められているのですが、対象の9社のうち8社は法令上の最低人数である1人しか置かなかった。そうなると迅速な対応は難しいので、有識者を中心に誠実な対応ではないとの声が挙がっています。その上で個別にみてみると、例えばLINEヤフーだと、全体で5500件ほどの申請に対して1000件に対応したということです。LINEヤフーは先程の専門家を4つのサービスに対して8人と、法令よりも多くは置いています。また表現の自由の観点から判断が難しい事例も少なくなかったとしていますが、全体としてはもう少し対応はできるのかなと思います。一方で削除率が少なかったのはXです。Xにはユーザーの削除申請だけではなく嫌がらせなどの報告を含めて年間で7600万件ほどと非常に多くありました。先ほどのLINEヤフーとは桁違いですが、これは数える基準をどうするかが各社で違っているので、ここは統一した方がいいと思いますね。で、実際に対応したのはおよそ8万件で、件数自体は多いとも言えますが全体でいえば0.1%ですね。件数だけでは単純比較はできないといいましたけれども、今後はいろんな比較軸をつくった方がいいと思います。特に、Xはイーロン・マスクがTwitterを買収してXになりましたが、大規模なリストラや運営方針を変えたことで、こういった削除をする担当者が非常に少なくなったんですね。また、SNSってどうしても誹謗中傷に近い発言が注目を浴びるので、ビジネス的によい投稿は、誹謗中傷などのトラブルは近い関係にあるということです。このあたりは削除申請に対して真摯に向き合ってほしいかなと思いますね。
吉田:SNSの規制、強化の動きが進んでいますね。
塚越さん:はい。総務省が火曜日にいろいろな報告書を出してるんですけども、SNS事業者に年齢確認の厳格化や、未成年への機能制限を義務付ける案が出ています。オーストラリアみたいに全面禁止にはならなくとも、少なくともこれから何かしら未成年に関して規制を強化していく。世界中でもいろいろ対応が進んでいるところがあるのかなと思います。
ユージ:SNSの投稿で困ったとき、そしてこれからのルール作りはどうでしょうか?
塚越さん:やはり誹謗中傷があった場合は日付入りでスクショするっていうのが大事です。もちろんそのSNS事業者に言ってもなしのつぶてということがありますけども、それ以外のいろいろな窓口がありますので、そういうところも使っていくことも必要になるかなと思います。いくら「リテラシーは大事」といわれていてもこういった問題は起きてしまうので、企業としても「自主規制」や、行政とも手を組んだ「共同規制」というのが必要になると思います。SNSはXやインスタグラムのように巨大でなくても、日本では最近「BeReal」が流行ったり、韓国発の「setlog(セットログ)」という、Vlogを簡単に作れるというのも若者を中心に流行ったりしています。これらもさらに大きくなっていくとこういった対応が必要になる。SNSってみんなが知っているもの以外にも今後まだまだ出てくるので、ずっと対応はしなければならないですね。