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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.08.12

『無限スクロール』と『ドゥームスクローリング』について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


『「無限スクロール」「ドゥームスクローリング」から抜け出す方法を考える』

吉田:こども家庭庁は先月31日、SNSから子どもを守る対策について、中間整理報告書を発表し、『無限スクロール』は有害なおそれのある機能だとの見解を示しました。塚越さん、『無限スクロール』は、どんな機能なんですか?


塚越さん:『無限スクロール』は、その名の通り、SNSやショート動画などを見たときに、画面を下にスクロールして無限に見てしまうことでみなさんも経験があると思います。SNSの投稿もショート動画も数秒~数十秒で見えるので、ちょっとのつもりでアプリを開いたら無限に…ということで問題になっています。私も大学で教えているときに、コロナ禍のステイホーム期間中はオンラインで授業だったのですが、「ずっと家にいて気が付いたら1日5時間以上ショート動画を見ていました」なんていう報告を大学生からもらうこともあり、特にコロナ禍のときは多かったです。この『無限スクロール』の開発でよく名前が挙がるのが、アメリカのデザイナーのエイザ・ラスキンさんです。ラスキンさんは2006年、「次のページ」を何度も押す手間をなくすために、この仕組みを開発しました。ところがその後、SNS企業がおすすめ機能などと組み合わせ、利用者を画面に長くとどめるためにも使うようになってしまったため、ラスキンさんは、結果として人々の膨大な時間を奪うものになったと後悔を語っています。特徴としては、ページの終わりという“やめどき”がないですし、次に何が出てくるかわからない期待が続くため、反射的に操作を繰り返しやすくなります。いずれにしても、個人の意思の問題というよりも、“巧妙に環境を設計している”というふうに考えてもいいのかなと思います。最近の依存症の議論と同じで、個人の自制心だけの問題にせず、企業の設計責任も問うべきだと思います。


吉田:この『無限スクロール』について、こども家庭庁は有害なおそれのある機能という見解を示しているんですね?


塚越さん:はい、そうなんです。こども家庭庁の中間整理報告書では、ネットの悪影響やリスクについて、「サービスの機能や設計によって生じる場合も少なくない」と解説しています。その上で、無限スクロールやアルゴリズムに基づいたおすすめ機能など、ユーザーの注意を継続的に引きつける側面があり、その影響を考える必要があるといった内容が書かれています。一方で当然ながら、SNSの機能や設計に有用性があることも認めています。つまり、法律で一律に禁止機能を決めるのではなく、サービスの特性やリスクに応じ、ガイドラインなどで柔軟に対象を示していく方向ではないかなと私は読めました。実際に海外でも機能の制限は進んでいます。一律の禁止よりも、こういった無限スクロールをやめましょうなどといった、検証段階ではありますが、海外でもいろいろな議論があるということですね。世界的に未成年のSNS使用禁止が議論になっていますが、それとは別に、個別の機能制限など、より細かく規制を増やして、SNSのいいところを残しつつ健全化の方向に向けた議論が進んでいます。私は、無限スクロールなどは、未成年だけでなく、大人に対しても一定の規制があってもいいと思います。


ユージ:そして、塚越さんが前にも紹介していた『ドゥームスクローリング』。こちらも問題になっているんですね?


塚越さん:はい、『ドゥームスクローリング』というのは、ネットやSNSで“ネガティブ”なニュースやコンテンツのチェックがやめられなくなってしまう状態です。私たちはポジティブな情報よりもネガティブな情報に影響を受けやすい性質があり、これを利用してネガティブコンテンツに触れさせるSNSの設計が問題になっています。実際に旧Twitterの頃の研究ですけれども、おすすめに党派性の強い相手陣営に敵意のある投稿が表示されやすい傾向が確認されており、特に政治的な、社会的な対立を拡大させるおそれがあるということで、今のXも同じかと思いますが、直接の原因と断定はできないものの、ドゥームスクローリングは不安やストレス、抑うつ、心の健康状態の悪化との関連も報告されています。


ユージ:『無限スクロール』や『ドゥームスクローリング』は僕もやっちゃってるなぁと思うんですが、ここから抜け出すためにはどうすればいいんですか?


塚越さん:最初に言った通り、大きい企業がお金をかけてやっているので、個人の自制心だけの問題ではないんですよね。通知を切りましょうとか一般的な対策はありますよね。


ユージ:スマホから手を離しましょうとかね。


塚越さん:でも、そういった基本的な対策だけじゃ難しいですよね。個人的には、“やめどきを作る”。今、帰省で子どもがスマホ漬けになっている方もいると思うんですけど、家族みんなで大人も一斉に、例えば、食事中は使わないとか、夜は居間で充電して寝室に行こうとか、物理的に触らせない時間を作って、やめどきをみんなで作りませんか?ということで、大人も一緒にやれば子どももやらないし、我々にとってもそれが心の健康につながると思うのですが、いかがでしょうか?


ユージ:大人がルールを作らないといけないんですが、自分が人のことを言えるのかって…もう、本当に難しい……。子どもたちには、スクリーンタイムを設けているので、プレイ時間が決まっていて「もう終わっちゃった~」ってなるんですけど、そのあと、自分がスマホを触ってると「パパだけ(ズルい)~!!」とか言われちゃって…。


吉田:納得感が必要なんですよね。大人として背中を見せないと。


塚越さん:背中を見せていきましょう!

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