26.08.11
山の日に考える、富士山 噴火の可能性 その時、何が起こるのか?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!
「山の日に考える、富士山 噴火の可能性 その時、何が起こるのか?」
吉田:今日は「山の日」。日本を代表する山と言えば、日本一の高さを誇る富士山です。富士山は活火山で、政府は「富士山の大規模噴火はいつ起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らしています。そこで、もし富士山が噴火したら何が起きるのか?そして私たちはどう行動すべきなのかについて、国のシミュレーションなどをもとに神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:リアリティーを感じられない人もいると思いますが、富士山の噴火が起こる可能性は、どれぐらいあるんでしょうか?
神庭さん:活火山である以上、いつ噴火してもおかしくないんです。過去5600年の間に180回の噴火があったとされてるんですけれど、1707年の宝永大噴火を最後に300年以上、噴火が確認されていません。ですが、だから大丈夫という話ではないんですね。藤井敏嗣東大名誉教授は内閣府の動画で、こんなふうに訴えています。「富士山は、もともと非常に活発な火山。平均すると30年に1回は噴火している。それが、最近の300年以上、非常に静かな状態が続いているという意味で、富士山の活動としては少し異常な状態」「次の噴火はもういつ起こっても不思議はない。富士山は若い活火山ですからね。必ず噴火します」と仰ってるんですね。専門家の「必ず噴火する」という言葉は重いなと思います。
吉田:富士山が噴火した場合、どんな被害が想定されますか。
神庭さん:近隣自治体であれば、噴石や火砕流、溶岩流の直接的な被害が予想されます。加えて厄介なのが、火山灰による被害なんですね。ここからは政府や東京都などのシミュレーションをもとにお話ししたいと思います。火山灰は首都圏など遠隔地まで被害が及ぶリスクがありまして、風向きや天候など条件次第では、噴火してから1〜2時間で東京に火山灰が到達するそうです。山梨県の富士山付近で50センチ以上、神奈川県相模原市で最大30センチ、東京・新宿でも最大10センチ程度の降灰が想定されているんですね。首都圏だと雪が10センチ積もったら大変なことになりますけど、火山灰は雪のように溶けてなくなったりしませんから、「除灰」といって人間が片付けないといけないんですね。降り積もる火山灰の総量が実に4.9億立方メートル。東京ドーム400個分、東日本大震災の廃棄物の10倍にも相当するということなんですね。
吉田:それだけ火山灰が降ると、当然、生活にも影響が出ますよね。
神庭さん:健康面では、灰が目に入って角膜を傷つけたり、気管支や肺に入って呼吸器系の疾患が悪化する恐れがあります。「灰」と聞くと、たき火の灰のように柔らかいものを想像するかもしれませんが、火山灰はガラスのように尖っていて硬いので危ないんですよね。基本は屋外に出ない方がいいんですけど、やむを得ず外出する場合もマスクやゴーグルが欠かせません。
ユージ:「備蓄」っていうアイテム、みんな持ってますけどゴーグルやマスクまでっていう人は少ないかもしれないからね。想像以上に危険ですね。
神庭さん:交通インフラにも支障が出ます。航空機は機体や滑走路への影響で便数が制限される可能性があります。鉄道は火山灰で電車とレールの間に通電不良が発生して、運休を余儀なくされる恐れがありますし。2輪駆動車は、道路に10センチ以上の火山灰が積もると通行不能になるんですね。雨が降ってぬかるんだら3センチでも走れなくなってしまいます。移動手段が徒歩だけということになり、大量の帰宅困難者が出るかもしれません。交通が寸断されると、生活物資も手に入りにくくなります。
ユージ:他にはどんな影響が考えられているんですか。
神庭さん:一番怖いのは、電気や水道などのライフラインが止まることです。3ミリ以上の降灰に加えて雨が降ると、漏電を防ぐための「碍子」の能力が落ちて停電発生のリスクが高まります。また、火力発電所でも火山灰のせいで吸気フィルターの交換回数が増え、発電力が低下してしまいます。浄水場や下水処理施設、携帯基地局なども電力に依存していますよね。停電の後、さらに非常用発電設備まで止まってしまうと、連鎖的に断水や通信障害に発展する恐れもあります。上水道に関しては、河川の水質が悪化して浄水施設の処理能力を超え、水道が飲めなくなる可能性もあります。下水道も、火山灰の流入で詰まったり、逆流したりする恐れがあるんですね。
吉田:火山灰対策、どうしたらいいのでしょうか。
神庭さん:非常に悩ましいのですけれども「できる限りその火山灰が降り注ぐエリア内に留まって、自宅等で生活を継続する」というのが政府の基本方針なんですよね。なんでだよ、逃げ出したいよと思ってしまうかもしれませんが、交通が麻痺している状況で何百万人が一斉に移動しようとしたら大パニックになってしまいます。備えるべきことは地震とあまり変わらなくて。江戸時代の宝永大噴火は16日間続きました。少なくとも1週間分の水や食料、非常用トイレは準備しておきたいところです。火山灰対策のゴーグルとマスクも必須になります。ただし、何があっても自宅を動いてはいけないというわけではありません。30センチ以上の火山灰が積もり、土石流の危険があるとか、火山灰の重みで家屋が倒壊しそう、といった状況では堅牢な建物や安全な場所に避難する必要があります。酷暑なのにクーラーが使えなくて、火山灰のために窓を閉め切らざるを得ないといった場合も、命にかかわるので避難を検討するべきかもしれないですね。防災は知ることが一番大切です。YouTubeに内閣府や東京都のシミュレーション動画が上がっていますので、ぜひ皆さんご覧いただければと思います。