26.08.10
防衛白書が公表『新しい戦い方』って何?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!
『防衛白書が公表「新しい戦い方」って何?』
吉田:2026年版の防衛白書が先週、公表されました。ドローンやAIなどの技術を取り入れた「新しい戦い方」について新たに章を設けたほか、中国・ロシア・北朝鮮などの動向や安全保障上の懸念について伝えています。そこで今朝は、防衛白書のポイントについて神庭さんに解説してもらいます。まずは、最新の防衛白書、どんなことが書かれているのか?教えてください。
神庭さん:一番のポイントは、ドローンやAIを使った「新しい戦い方」について、1章を割いて説明していることです。白書によると、ウクライナ戦争では、安いドローンを使って相手方の高価な装備品や生活インフラを叩くということが行われています。さらに、カメラを積んだドローンと衛星をネットワークでつなぎ、集めた情報をAIで分析。そして、現場の状況をすぐに指揮官に共有するような体制が取られているということなんですよね。また、中国は無人航空機の空中戦を想定して、AIアルゴリズムの競技会を開催。DeepSeekのAIモデルを無人航空機や軍用車両に活用しているそうです。
ユージ:軍事の世界も日に日にテックだったりいろいろな技術を導入したり進んでいるんですね。
神庭さん:そうなんですよ。アメリカのイラン攻撃では、安価なドローンを迎撃するために高価なミサイルが大量投入されました。日経新聞が報じたアメリカの戦略国際問題研究所の推計によると、イラン製ドローン「シャヘド136」は1機3万5000ドル(約550万円)です。それに対して、ドローンを迎撃するアメリカのパトリオットミサイルは1発約6億円。「自転車をフェラーリで撃ち落とす」と言われているくらいコスパが悪いわけですよ。技術的に撃ち落とすことができても、物量の戦いになった時にお金の方がもたなくなっちゃうわけですよね。CNNによれば、アメリカはイランとの戦争で高高度迎撃ミサイルシステムの迎撃ミサイルを80%近く使い果たし、パトリオット用迎撃ミサイルのおよそ半数を消耗してしまったということなので、これが現代の「非対称戦」の現実ですよね。
吉田:この「新しい戦い方」に日本はどう対応しているんでしょうか?
神庭さん:自衛隊ではドローンを使った防衛体制「SHIELD」を構築しています。陸自であれば、上陸してきた車両などを探知・攻撃するための個人でも持ち運びできる小型ドローン。海自であれば、艦艇から発射し警戒監視や敵艦艇への攻撃を担うドローン、ないしは、水上ドローン。空自であれば、レーダーサイトに飛来したドローンを撃ち落とすドローンなどの活用に取り組んでいるということです。
ユージ:自衛隊でもドローンの活用が進んでいるんですね。
神庭さん:2024年には、海上自衛隊の護衛艦「いずも」がドローンで空撮されたとみられる事案が発生し、中国の動画サービス「Bilibili」で映像が公開されました。当時の防衛大臣は「実際に撮影された可能性が高い。防衛関係施設に対してドローンにより危害が加えられた場合、我が国の防衛に重大な支障を生じさせかねないことから、極めて深刻に受け止めています」と話しています。ドローンを活用した防衛、また、ドローン“からの”防衛は日本にとって喫緊の課題になっています。
吉田:防衛白書のその他のポイントは?
神庭さん:政府は4月に「防衛装備移転三原則」と運用指針を改訂し、護衛艦や潜水艦、戦闘機、ミサイルなど、殺傷力のある武器の輸出を原則的に解禁しました。白書ではこの点について、同盟国・同志国の抑止力を強化し、生産能力を国内で確保する上でも大きな意義があると指摘しています。また、防衛と民間の両方に使えるデュアルユース技術が防衛力強化に不可欠だとして、デュアルユースへの投資が日本企業の競争力を高め、経済成長にもつながると強調しています。もちろん実際にそういう側面もあると思うんですけれども、防衛白書に「経済成長」という文字が出てくると、一瞬、ん?経済財政白書かな…という感じもしますよね。
ユージ:最後に日本の安全保障の課題についてはどうですか?
神庭さん:大切なのは、防衛費の捻出かなと思いますね。読売新聞によると、アメリカのヘグセス国防長官は5月の安全保障会議で同盟国に対して「ただ乗りは終わりだ」と宣言し、防衛費をGDP比で3.5%に引き上げるよう要求しました。日経によれば、日本の防衛関連費は10兆6千億円規模でGDPの1.9%。しかもこの1.9%という数字は2022年度のGDP560兆円を基準に算出したもの。今はインフレで名目GDPがぶくぶくに膨らんでますから、2026年度のGDP見通しは690兆円にもなります。分母が大きくなっているせいで、今年度基準だと防衛費の比率は1.5%にしかならないんですよ。アメリカが求める3.5%を達成しようと思ったらプラス2%が必要ということなので、14兆円弱の新規財源を見つけないといけません。これは非常に大きな負担です。食料品消費税の減税で年5兆円の財源が必要だとヒーヒー言っているのに、どうやって3.5%の軍事費を達成するのかはシンプルに疑問ですよね。日米協調の為替介入の見返りに、高い武器を買わされるみたいなことにならないといいなと思います。金額ありきではなく、本当に有効な防衛装備や自衛隊員の待遇引き上げなどにお金を使っていただきたいですよね。