26.07.02
不登校、ギフテッド“多様性を包摂”する学習

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
『不登校、ギフテッド“多様性を包摂”する学習』
吉田:文部科学省が「学校に行けない」子どもと「学校の授業だけでは物足りない」子どもの為の新しい制度作りを進めています。
照英:塚越さん、まず 「学校に行けない」不登校の子どもへの取り組みを教えて下さい。
塚越さん:まず現状を見てみると、2024年度で不登校の小中学生はおよそ35万人と過去最高で、全児童・生徒の4%ほどになります。年々増えているのですが、特にコロナ禍の2021年から一気に増えました。一方、これまでも独自のカリキュラムを持つ「学びの多様化学校」などはありましたが、個々人の状況に合わせた計画的な指導は不十分な状態です。そこで国が新しく打ち出したのが「その子だけの個別カリキュラム」が作れる特例制度です。これまでは、「学校を休むと授業についていけない」といった課題がありましたが、新しい制度では必要に応じて下の学年の学習に戻って勉強することも成績として評価するといった対応ができます。1度つまづいたとしても「頑張れば認められる」という、子どもの意欲を促進するということです。他にも、学校の空き教室やオンラインも活用します。また、こうした学習計画は当事者や保護者の意向も汲み取って決める方針です。次の学習指導要領は2030年からですが、これについては目の前の課題なので、2030年よりも先行して進める方向です。
吉田:続いて、「学校の授業だけでは物足りない」「ギフテッド」と呼ばれる子どもへの支援はいかがでしょうか?
塚越さん:今回は不登校とは別に、特定分野で特異な才能を持つ「ギフテッド」。つまり「才能を与えられた人」に対する特例制度も示されています。ギフテッドは典型的にはIQの高さで捉えられていますが、特定分野で強い関心や能力がある一方で、授業が簡単過ぎて退屈したり、人間関係でつまづいてしまう人もいるので、その支援になります。今回の案では、学年を繰り上げる「飛び級」は行わず、普段は同じ学年の友達といながら、例えば数学が飛び抜けているのであれば通常の算数の授業は一部免除して、高校や大学の講義を受けたり、オンラインで大学の研究に参加できるようになります。こうした特例制度ですが、当面は小中学校の義務教育に限定して行われる見込みです。また、ギフテッドの基準はIQで区切るのではなく、日頃の様子や心理検査や本人への聴き取りなどを総合的に判断して決めるということです。機械的な区切りとなると、過度な競争や差別が生じる可能性があるので、あくまで総合的な判断ということで、本人の意思も重要かなと思います。
照英:そんな子どもたちの為の多様性を包摂する教育のあり方、塚越さんはどう考えますか?
塚越さん:不登校というと「やる気がない」といった見方も昔はありましたが、現在はそういった認識は随分と改善されたと思います。個別の対応でいえば、例えば最近は朝に強い人と夜に強い人が「クロノタイプ」という、遺伝的な影響があることも分かってきたので、朝早い1時間目などに登校するのが難しい人への対応を考える必要が出ています。このような、科学的にも多様な人材を育てる環境づくりが重要になっていますし、逆にいえば、こうした認識がこれまでなかったことから、不登校になっていることもあります。かつては「とにかく学校に戻す」ことが優先され、本人の状態に合わない対応が二次的な苦しさを生むこともありました。「大人になってもちょっと辛かった」っていう人もいらっしゃると思うので、「今後はそういうのはやめましょう」ということです。今回の制度は非常に重要なのですが、私が気になるのは現場の先生たちです。ただでさえ、現場の負担がすごい大変な状態なので、それをどうするかが大きな課題になるので、ここを忘れてはいけないです。個別学習ということであればAIも活用できるので、負担軽減の為にも前向きに検討すべきだと思います。不登校の原因はいろいろあるので、細かく見ていく必要がありますが、学校や家庭だけが原因じゃないので、抱え込まないっていう仕組みが大切なので、必要に応じてスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教育支援センター、福祉などが繋がることも必要です。いずれにしても、これから重要なのは「出席したか」だけを見る教育ではなく、その子の学びを尊重する教育が、結果的に社会にとっても有益になると思います。照英さんは保健体育の教員免許をお持ちということですが、こういった教育はどうでしょうか?
照英:「強制的な時代じゃない」っていう言葉が支えになると思います。私は山村留学とか離島留学とかを経験して取材に行ったことがありますが、親元を離れた子供たちが伸び伸びと教育を受けていたので、そういう傾向がもっと浸透してくれたら良いと思います。
塚越さん:いわゆる普通の学校もありますが、いろんな育て方や育ち方が重要だと思います。