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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.07.09

日本版DOGE(ドージ)について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


「日本版DOGE(ドージ)について」

吉田:補助金を見直す「日本版DOGE」の各省庁の自主点検結果が出そろいました。およそ120件ある減税などの優遇制度のうち、廃止の方向を明示したのは1件のみでした。


ユージ:塚越さん、「DOGE」といえば、アメリカで先に動いていましたね。


塚越さん:アメリカのDOGEは「政府効率化省」とも呼ばれて話題になりましたが、正式な省庁ではありません。大統領令で大統領府内に置かれた期限付きの組織で、政府全体のITや人員削減、支出見直しを進めようとしました。イーロン・マスクさんが主導したことでも話題になりましたが、そもそも決定権が限られており、各省庁の抵抗も強くありました。マスクさんもいろいろあって離れていきましたよね。DOGEはこの2026年7月に解散したのですが、すでに去年2025年の11月の段階で組織としての機能を失っていたということです。


吉田:そんなDOGEの日本版は、どんな組織なのでしょうか?


塚越さん:今回はアメリカではなく、このDOGEを踏まえた日本版の「DOGE」が誕生したことが注目されました。この組織は2025年の11月に内閣官房に設置され、片山さつき財務大臣が担当閣僚についています。効果の乏しい税制優遇や補助金、基金などをチェックして、必要のないものは廃止する。そこで得られた財源を、防衛やAI、半導体といった「優先度の高い分野」に充てることが目的です。簡単にいえば、無駄を削減して、必要なところに回しましょうということです。


ユージ:これは、いいことですよね。


塚越さん:それ自体はいいことかなと思いますが、今年2026年の1月〜2月に国民から集めたおよそ3万7,000件の意見をもとに、6月末までに各省庁が自主的な点検をしました。そこで、どんな結果が出るかと思ったのですが、13の機関が合わせて120件の税優遇(減税)や補助金をチェックしましたが、今回の自主点検だけでは、廃止の方向に動いたのは、企業の事業再編に関わる軽減措置の1件だけだと、日本経済新聞が報じています。この結果を受けて、片山大臣も「満足いくものではない」と述べています。


ユージ:結果は1件だけということで、これは「成果なし」「失敗」と言われても仕方ないですかね…。


塚越さん:なかなか厳しいですよね。どう見るかですが、一方では、省庁は無駄のない仕事をしているとも言えますけれども、そもそも各省庁に自分たちの制度を点検させるっていうのはなかなか厳しい。自分たちでやったものを自分たちで「これは無駄でした」とは言いづらいですよね。なので、これは制度設計の問題と思うところもあります。また、莫大な予算を持っていたりして大きい組織なので、点検するには時間が短いといった可能性もあると思います。


ユージ:確かに、身内の仕事を、そう簡単に無駄だとは言いづらいですね。


塚越さん:さらにいうと、日本でもすでに、税金の使い方を外部からチェックする機関として「会計検査院」があるんですね。たまにニュースで聞くことがあると思います。会計検査院は内閣から独立した機関で、国の収入や支出を検査します。しかも単なる帳簿チェックだけではなく、そのお金の使い方の効率性や有効性の観点からもチェックします。実際に会計検査院の指摘によって廃止されるものもあります。政策を廃止する権限はありませんが、重要な指摘をしてくれます。他にも「行政事業レビュー」という、各省庁が行う事業をチェックする取り組みもあるのですが、それらが制度の廃止や予算の組み替えに十分つながっていないことが問題です。そうなると、今回の日本版DOGEを大きく掲げるよりも、すでにあるチェック機関を次の予算や税制改正に着実につなげたり、協力する仕組みが必要だと思います。そうでないと、このDOGEそのものが「新たな無駄」になってしまうと私は思います。もちろん協力はしていると思いますが、もっと踏み込んでやることがあるんじゃないかと思いますね。


ユージ:もともとあるチェックシステムと協力した方がいいんじゃないかなという気がします。


塚越さん:そこをうまく連携させるということです。DOGEは名前が非常に有名なので注目されやすいですが、実質的にどう動くかということが重要です。あともう一つ私が指摘したいのは、日本の大きな組織にある「一度決めると変えられない」「失敗を認められない」ということがあると思います。


ユージ:それは心当たりがあります。


塚越さん:アメリカの民間企業などは、本当にシステムをすぐ改修するんですよ。生成AIなども即座に取り入れることがあると思います。日本の場合、大企業や組織の規模が大きくなるほど、いまだに古いパソコンやシステムを使い続けているようなことがあるんですよ。だからこそ、どんどん変革していくことです。古いものはトラブルには強いですが、もう21世紀ですから、新しい変化に合わせて「これ、もう必要ないよね」と見直していく必要があります。そのためには、冒頭でお話しした「失敗を認められない文化」という悪癖を変えなければなりません。DOGEのように、「かつては上手くいったけれど、もう時代に合わないよね」というものをスピーディーに進められる、そんな組織になってほしいと思います。


ユージ:確かに大きい会社の例で言うと、何か本当に小さいデスク周りのことを改善するだけでも、ここの部署に書類を出して、判子をもらって、何カ月もかかって、やっと小さな一個が改善された、みたいな。


塚越さん:そういうところを「うまいことやりましょうよ」っていう仕組みが大事だと思います。

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