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26.07.13

リニア着工、メリットと課題は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。
けさのテーマはこちら!


リニア着工、メリットと課題は?

吉田:静岡県の鈴木康友知事は7日、リニア中央新幹線静岡工区の着工を容認することを表明しました。川勝平太前知事の反対で計画に大きな遅れが出ていましたが、大きな転換点になりそうです。そこでけさは、リニア着工によるメリットや課題について神庭さんに解説してもらいます。


ユージ:これ、ずっと前から言われていましたね。あらためて、ここまで工事に遅れが出た経緯について教えてください。


神庭さん:川勝前知事が2017年の記者会見で、着工に反対する姿勢を打ち出したんですね。大井川の流量が減るなど、周辺の自然環境への悪影響が懸念されるというのがその理由です。FNNによれば、川勝前知事は当時の会見で「しっかりした説明がないままルートが設定され、静岡県にとっては全くメリットがない」「水問題に関しても具体的な対応を示すこともなく、静岡県に対して誠意を示すという姿勢がないことに心から憤っている」とおっしゃったということです。JR東海は当初、2027年に品川―名古屋間を開業することを目指していましたが、早くても2036年以降になりそうなんですね。


吉田:静岡県はなぜ今回、賛成に転じたのでしょうか?


神庭さん:2024年に当選した今の鈴木知事は基本的にリニア推進の立場です。ただし、大井川の水資源や南アルプスの自然環境の保全と両立を図る必要があるとしてきました。今回、JR東海から県民に対して一定の説明がなされて、工事に必要な法令上の手続きが整ったということで、鈴木知事がリニア着工を容認したというのが大まかな経緯になります。


ユージ:あとはJR側が静岡に停まるこだま・ひかりの増便といったような、静岡にとってのメリットもちゃんと言ってますけれども。改めて、リニア開通のメリットについて教えてください。


神庭さん:大きく3つありまして、やはり1番はスピードですね。品川ー名古屋間は東海道新幹線だと大体1時間半かかりますけれども、リニアなら40分なので50分縮まります。東京ー大阪間も現状だと2時間20分ほどかかりますが、リニアだと67分で済み、1時間以上も短縮できる。時間の節約効果は非常に大きいです。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算によれば、品川ー名古屋間の開業で約10.7兆円、品川ー新大阪間の開業で約16.8兆円の経済効果が期待できるということなんですね。


吉田:他にはどんなメリットがありますか?


神庭さん:2つ目のメリットは、今ある新幹線の混雑緩和です。リニア開業で乗客の多くがそちらにシフトすると、東海道新幹線の輸送量が3割ほど減少する可能性がある、と国交省は試算しています。輸送力に余裕が生まれれば、列車が駅に停車する本数を増やすことができますので、利用者にとっては次の新幹線が来るまでの待ち時間が減って便利になります。3つ目のメリットとしては災害対策が挙げられます。海側を通る東海道新幹線と、内陸・南アルプスを経由するリニア中央新幹線はルートが大きく異なります。仮に巨大地震や土砂災害などでどちらか一方が寸断されても、もう一方さえ残っていれば、東京ー名古屋ー大阪という日本の大動脈を結ぶ交通ネットワークを維持できます。リダンダンシー、冗長性といって、非常時のバックアップ機能を強化することにつながるんですね。


ユージ:ではリニアの課題はなんでしょうか?


神庭さん:こちらも3つあって、1つ目はお金です。反対で着工が遅れる間に、建設費の見通しが跳ね上がりました。当初は品川ー名古屋で5.5兆円とみていましたが、難しい工事が増え、資材価格や人件費が高騰した結果、11兆円に倍増してしまいました。中東情勢や人手不足の影響もあって、今後さらにコストが膨らんでもおかしくありません。それでも投じた資金を上回る便益が得られればよいのですが、先ほど紹介した約10.7兆円、約16.8兆円という数字は、50年という長期間の経済便益の試算なんですね。2013年にはJR東海の社長だった山田佳臣氏が「リニアは絶対にペイしない」と発言して波紋を呼びました。投資回収のハードルは低くないのかなと思います。


吉田:2つ目の課題はなんでしょうか?


神庭さん:2つ目は移動需要の縮小ですね。これから人口減少が加速して、旅行したり移動したりする人自体が減っていく可能性が高いです。リモート勤務の広がりもあって、出張や通勤のための移動ニーズも減少していくとみられます。外国人観光客も取り込んでいかないと、乗客数もどこかで頭打ちになってしまうかもしれません。3つ目はストロー効果です。便利な交通手段ができた結果、地方都市から大都市圏へ人が吸い寄せられてしまう現象のことです。「品川栄えて地方滅びる」となると困りますから、JR東海としても、リニア開業後は東海道新幹線ひかりの静岡県内の停車本数を現在の1時間1本から2本に増やすなどの対策を考えています。沿線住民に対して単に「素通り」されるだけではないですよ、とメリットをしっかり出していけるかどうかがカギになってくるかなと思います。


ユージ:最後に、このリニアの行方を神庭さんはどう考えてらっしゃいますか?


神庭さん:私自身は超伝導とかリニアモーターカーとか聞くだけでワクワクしちゃうタイプなので、開業したら一度は乗ってみたいと思います。何しろ時速500キロで宙を浮きながら走る、という時点ですごすぎる。とはいえ国家的な巨大プロジェクトなので、私みたいな「夢とロマン」大好き人間だけにリニアを語らせるのは危ないかなと思っていまして。巨額の投資がきちんとペイするのかどうか、冷静にソロバンをはじいて計算することと、慎重派の意見にも耳を傾けて、硬めの試算をすることが大切だと思います。


ユージ:早くても10年後。そのときのインフラでどういう乗り物が求められるのかが変わっていないといいんですけどね。

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