network
リポビタンD TREND NET

今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.08.24

アメリカがICC赤根所長に制裁…問題の背景は?

番組コメンテーターと気になるニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。
けさのテーマはこちら。



「アメリカがICC赤根所長に制裁…問題の背景は?」


吉田:アメリカのトランプ政権が国際刑事裁判所、ICCの赤根智子所長を制裁対象に指定したことを受け、高市総理は19日「大変残念に思っている」と述べました。そこで今朝はICCの役割や制裁の背景、日本に求められる対応について、神庭さんに解説してもらいます。まずはそもそもICCとはどんな組織なのか、教えてください。



神庭さん:国際刑事裁判所。英語の頭文字をとってICCです。ジェノサイド(大量虐殺)や人道に対する罪、戦争犯罪に問われた個人を裁くための裁判所として、2002年に発足しました。オランダのハーグに本部がありまして、日本を含め120を超える国・地域が加盟しています。ただ、アメリカやロシア、中国は入っていないんですね。ICCは2023年にウクライナ侵攻に絡んでロシアのプーチン大統領に、そして2024年にはガザ攻撃をめぐってイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を出しています。フィリピンのドゥテルテ前大統領も、多数の死者を出した麻薬戦争をめぐって、ICCに起訴されているんですね。赤根智子さんは長く日本で検事畑を歩んできたんですけれど、2018年にICCの裁判官になり、2024年からはICCの所長を務めていらっしゃいます。



ユージ:なぜアメリカはICCを制裁対象にしているんですか?



神庭さん:一言でいうと、トランプ大統領は、盟友であるネタニヤフ首相への逮捕状をICCが出したことが気に入らないわけですよ。これまでICCの裁判官18人のうち9人がアメリカの制裁対象になっています。「アメリカやイスラエルはICCに加入しておらず、ICCに管轄権はない」とか、「ICCは腐敗しており、悪意を持って権限を濫用している」というのがアメリカ側の主張なんですね。ルビオ国務長官は先月にも「あらゆる手段を駆使してICCを解体する」と強い言葉で宣言しています。



吉田:制裁を受けるとどうなるんでしょうか?



神庭さん:アメリカへの入国禁止や資産の凍結に加えて、クレジットカードが使えなくなったり、銀行口座の引き落としができなくなったりする恐れがあるんです。他にもGoogleやAmazonのようなアメリカ企業のサービスが受けられなくなる可能性もあります。日本企業は直接的に制裁に従う義務はないですが、制裁対象者と取引して自分たちまで二次制裁をくらいたくないなと、「アメリカさんに目をつけられたら困る」ということで、腰の引けた金融機関が赤根さんの口座を止めたりしたら最悪ですよね。



ユージ:ICCへの制裁、神庭さんはどう考えますか?



神庭さん:日本政府として、赤根さんを全力で守るべきだと思います。赤根さんの著書『戦争犯罪と闘う』によれば、ずっと国内で働いてきた赤根さんはICCの裁判官選挙に出ることを当初迷っていたんですね。上司に「今回、誰かが引き受けなければ、法務省からは二度とICCに人を送り出すことができないかもしれない。あなたが行ってくれれば、若い世代があとに続いてくれるはずだ」と言われて決心したそうです。ICCの所長に立候補したときも、外務省の人から「ぜひやってほしい。勇気を持って挑戦するのは大事なことだ」と励まされて、「これならば、きっと困難なときにも支えてくれるだろう」と思った、と綴っています。いまがまさにその「困難なとき」なわけですから。日本国として送り出した優秀な人材に対して、たとえアメリカの圧力があったからと言ってハシゴを外すようなことがあってはいけないと思います。



ユージ:日本政府に求められる対応ってなんですかね?



神庭さん:プーチン大統領の択捉島上陸でも感じましたけれども、最近、弱腰外交が目立つなと思っていて。アメリカだろうが、ロシアだろうが、おかしいことはおかしいと言える、毅然とした外交姿勢を貫いてほしいなと思います。高市総理は今年1月、赤根さんの表敬を受けて、日本人がICCトップを務めていることを「誇らしく思います」とXに投稿。「国際社会における法の支配の維持・強化に向けてこれからも日本は両裁判所をしっかり支援していくので、頑張ってほしい」と書いているんです。この言葉通り、赤根さんをしっかりと支えていただきたいなと思います。「大変残念」とコメントするだけでは少し弱いと思うんですよね。自民党から共産党まで幅広い議員が加盟する「人権外交を超党派で考える議員連盟」はアメリカに対して制裁撤回を申し入れるように政府に要求しています。会長を務める中谷元・前防衛大臣は「日米同盟の堅持と法の支配の擁護、これは二者択一ではありません」と訴えているんですね。



吉田:具体的には、どんなことができますか?



神庭さん:EUの「ブロッキング・スタチュート」という仕組みが参考になります。赤根さんとオンラインで会談した国民民主の玉木雄一郎代表によると「ある国が、自国の企業や国民に対して外国による制裁措置に従うことを禁止・制限する」制度だそうです。アメリカの制裁を受けて、日本国内の合法な取引まで企業の過剰反応で止まってしまうことを防ぐとか、被害者に損害回復の手段を与える。そういった日本版ブロッキング・スタチュートの仕組みが必要になってくるんじゃないかと思います。もちろん別にICCが絶対正義だと言うつもりはないです。色々足りない部分とか課題もあるんですけれども、全部そういうことを取り計らったうえで、いかに日本人を保護するか、邦人を保護するかということを考えることが大切です。ヨーロッパ各国がいまICCへの支持や連帯を表明していますよね。日本はICCの最大の分担金拠出国として「暴挙を許さない」という断固とした姿勢を今こそ示すべきなんじゃないかなと思います。


ユージ:姿勢はまず1回示してほしいなという気持ちにはなりますね。

  • X
  • Facebook
  • LINE
Top