26.08.25
家賃、爆上げ時代が到来か?広がる「定期借家」契約とは?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。
神庭さんが注目した話題はこちら
【家賃、爆上げ時代が到来か?広がる「定期借家」契約とは?】
吉田:東京カンテイによりますと、首都圏の7月の分譲マンションの賃料は、前の月に比べ0.4%増加し、直近1年間での最高値を更新しました。止まらない家賃上昇。そんな中、広がっているのが「定期借家」という契約です。今朝は、家賃高騰が続く理由について、神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:神庭さん、まず「定期借家」というのはどんな契約なんでしょうか?
神庭さん:定期借家契約の特徴は更新がなく、あらかじめ決めた期間が来たらそこで終了することです。もし住み続けたければ大家さんと合意して再契約しないといけません。2024年度の国土交通省の調査によると、民間賃貸住宅に住み替えた世帯のうち、定期借家の割合は2.1%。これに対して普通借家は94.7%を占めています。多くの皆さんになじみがあるのは普通借家の方かと思います。普通借家の方は、借地借家法で手厚く守られていて、大家さんから「出て行ってくれ」と言われても、正当な理由がない限りは住み続けることができます。そこが定期借家との大きな違いですね。
ユージ:あと普通借家の方は家賃も上がりにくいって言われますね。
吉田:普通借家の方が圧倒的に多かったのに、徐々に定期借家で契約する人が増えているということですか?
神庭さん:じわじわ増えています。アットホームの調査によると、首都圏のマンションで70平方メートル超の大型ファミリー向き物件の場合、2025年度の定期借家の割合は25.4%。前年度から2.6ポイント増えています。特に東京23区では34.9%と高く、前年度比で4.4ポイント上昇しています。
吉田:どうして定期借家が増えてきているのでしょうか?
神庭さん:インフレで修繕費や管理費が高騰しており、大家さんとしてはその分を賃料に転嫁したいというのがあります。ところが、普通借家は借り手の保護が手厚く、家賃を引き上げたくてもそう簡単ではありません。家賃滞納や騒音などのトラブルを起こす住民がいても、出て行ってもらいにくいというのが大家さんの悩みのタネでした。定期借家であれば、契約が終わった段階で退去してもらうか、新たに契約を結び直すことになるので、家賃を上げやすいし、迷惑住民とは再契約しなければいいわけです。そんなわけで、新たに募集をかける際に定期借家を選ぶ大家さんが増えてきています。
ユージ:借り手側が積極的に選んでいるわけじゃないんですね。貸し手側が優位になってきているっていう見方もあるんですか?
神庭さん:その通りです。不動産経済研究所の調査によれば、首都圏の新築マンションの7月の平均価格は1億6,493万円。前年同期比で63.7%も上昇しました。港区の超高額物件が売り出されて平均が引き上がっているので、データの読み方には注意が必要ですが、資材価格や職人の人件費の上昇で新築マンションが高騰していることは間違いありません。「さすがにもう買えないよ」と住宅購入を断念した層が賃貸を選ぶことで、賃貸需要が押し上げられ、貸し手優位になってきているということなんですね。そのことを裏付けるように、定期借家の物件の家賃は大きく上がっているんです。
ユージ:どれくらい上昇しているんでしょうか?
神庭さん:先ほどのアットホームの調査に戻ると、東京23区で70平方メートル超の定期借家マンションの平均募集家賃は約46万4,000円で前年度比7%増。普通借家の方は約34万6,000円で上昇率4.7%です。定期借家の方が12万円弱も高くなっています。定期借家と普通借家の平均家賃の差額は神奈川で5万円を超えており、千葉、埼玉でも3万円を上回っています。ただ、定期借家だから高いというより、好立地の高級物件ほど定期借家が多いという影響もありますね。
吉田:今後も家賃は上がっていきそうでしょうか?
神庭さん:その可能性が高いと思います。インフレが続き、9月にも日銀の利上げがあるのではないかという見方が強まっています。「利上げって家を買った人の住宅ローンの話でしょ。賃貸は関係ないよね」という方がいらっしゃるかもしれませんが、全然そんなことありません。関係大アリです。賃貸経営する大家さんの中にも金融機関からローンでお金を借りている人は多いです。金利が上昇して「この家賃では金利負けしちゃうぞ」という事態になれば、大家さんとしては家賃を引き上げたくなってきますよね。言い方を変えると、賃貸に住んでいる方は大家さんのローン金利も含めて間接的に負担しているということになるわけですから、利上げは他人事ではありません。
ユージ:ただ、エリアによる違いはありますよね?
神庭さん:それは当然あります。今年の公示地価を見ると、東京圏、大阪圏で上昇が加速する一方で、名古屋圏や札幌・仙台・広島・福岡の地方4市では前年より伸びが鈍化しています。日本経済新聞によると、地方で不動産投資の魅力が低下し、建設コストが高くても利益を確保できる東京・大阪圏に資金が集中しているといいます。また、駅近・築浅・広いといった希少性のある物件は「たとえ定期借家でも住みたい」という借り手がたくさん集まるので、大家さんが優位になり家賃が上がりやすいです。逆に郊外・駅遠・築古だと「そのうえ定期借家なんて嫌だよ」と考える方が増えるので、家賃は上がりにくくなります。そういった形で賃貸市場が二極化し、立地や物件スペックによって値上げのスピードに差がついていくという未来像が見えてくるかなと思います。