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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.09.10

観光振興と住民生活の両立…どうする民泊

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら


「観光振興と住民生活の両立…どうする民泊」

吉田:民泊施設を巡るトラブルの増加を受け、全国で最も民泊の多い東京都新宿区は、住宅地や学校周辺での民泊営業を原則禁止する方針を固めました。


ユージ:塚越さん、まず民泊について基本のルールを教えてください。


塚越さん:民泊は住宅の空き部屋や一軒家を短期間、旅行者に貸し出す宿泊サービスで、予約サイトは「Airbnb」などが有名です。日本では2018年の住宅宿泊事業法、通称「民泊新法」で全国共通のルールができました。この法律では年間180日まで営業できるルールで、訪日外国人の増加や、ホテル不足を補う役割もありました。またこれとは別に、大阪市や東京の大田区などでは、年間180日という上限のない「特区民泊」という制度も利用されてきました。こうしてにぎわう一方で、住宅街に宿泊施設ができるということで、住民とのトラブルも多いんですね。


吉田:どんなトラブルが多いのでしょうか?


塚越さん:まず、深夜早朝も話し声が聞こえたり、スーツケースを引く音やドアの開け閉めといった騒音問題がひとつあります。また、ゴミの分別がわからないとか、収集日を守れないといったゴミ出し問題。さらに、共用部でたむろされたり、見知らぬ人の出入りが続くという防犯上の不安などもあるということです。繁華街ではなく住宅街だと、そこにずっと住んでいる人からするとこうしたストレスがたまりますね。苦情を言っても、オーナーがそこに住んでいなかったり、管理者と連絡が取れないといった対応の遅さの問題もあります。特に現場に管理する人がいない場合、苦情にすぐ対応できる体制があるかが重要です。


ユージ:そんな問題がある中、新宿区はどう動いたのでしょうか?


塚越さん:新宿区は、住宅地や学校周辺の文教地区などでの民泊営業を原則禁止する方針を固めていまして、条例を改正し、2027年の夏以降の施行を目指しています。これは新規の開業だけでなく、既存の施設にも適用するということでインパクトが結構大きいです。新宿区内の民泊施設は、市区町村別で全国最多のおよそ3,800件あるのですが、今回の条例改正でそのうちおよそ2,000件、半分以上が営業できなくなる可能性があるということです。2025年度は苦情や相談が1,300件程度と、前年度から1.7倍ほど増えています。また、新宿区としてもこれまで、違反を繰り返す事業者には業務停止などを行ってきたのですが、苦情は減らないことから、一律規制に踏み出した形です。一方で既存の施設には猶予期間を設けて、家主が実際にそこに住んでいるケースなど、適切に運営できる場合は例外的に営業を認めるということで、そこに住んでいる人が貸すのであれば、という条件になるのかなと思います。ただ、商業地域も含めて今の年180日の営業を120日に減らすということで、全体としては厳しい対応になります。他にもトラブルが多いということで、2026年の5月で大阪市は特区民泊の新規受付を終了しました。しかし、今度は「旅館業」の許可を取ってマンションの一室で営業しようとする動きもあり、大阪市は旅館業の条例の方も改正案を進めているということです。


ユージ:塚越さんは、住民の生活と民泊の両立、どう思いますか?


塚越さん:10年ほど前から民泊が世界的に注目されてきましたが、海外でも同様の問題がありまして、基本は住んでいる人を優先するということなんですね。例えばパリやニューヨークでは民泊物件が増えすぎてしまって、代わりに住居用の物件が減って家賃が上がって住めなくなるといった問題があって、どんどん制限が厳しくなっていきました。日本はオリンピック需要と観光立国政策で民泊が増えていますが、ニューヨークでは貸し手が宿泊者と同じ家に滞在するというルールをつくるということで厳しくなっているので、今回の新宿区のことも苦情が多くあったということなので、全体としては妥当な取り組みかなと思います。ただ、都市部ではそのようになりますが、地方にはまだ空き家が多くて受け入れる余地もあると思います。そのため、地方の場合は伝統的な家屋をリノベーション活用することで別の価値が上がるかなと思います。その場合もオーナーが近くに住んでいたり、伝統的な家屋ということでちょっと料金を高くしても、外国の方には古い日本の家に住んでみたい、そこで1泊したいという方が多いと思いますので、それなりの料金を取るなら管理体制も充実できるかなと思います。都市部と地方でやり方は変わると思います。新宿区の新しい取り組みは、かなり厳しい点もあると思いますけれども、自治体が試行錯誤していくことが重要ではないでしょうか。

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