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26.09.28

“106万円の壁”が10月から撤廃、働き方はどう変わる?

番組コメンテーターと気になるニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。
今朝のテーマはこちら!


「“106万円の壁”が10月から撤廃、働き方はどう変わる?」

吉田:パートやアルバイトの人の社会保険料負担が発生する年収の壁の1つ「106万円の壁」が10月から撤廃されます。壁の撤廃で働き手の負担や保障はどう変わるのでしょうか。神庭さんに解説してもらいます。改めて「106万円の壁」、どういうものなのか、教えてください。


神庭さん:健康保険や厚生年金といった勤務先の社会保険に加入する/しないのボーダーとなる壁なんですね。月8万8000円×12カ月で105万6000円を超えるなど一定の条件を満たすと、社会保険料の支払い義務が生じて、毎月のバイト代から社会保険料が差し引かれます。なかには社会保険料負担による手取り減を避けるために、月額賃金が8万8000円を超えないように就業調整をする人もいたんですね。国が率先して「もう働くな」と言っているようなものですから、社会全体にとって非効率です。働き控えを減らすために、10月から106万円という賃金要件をなくすことにしたんですね。


ユージ:具体的にどのように制度が変わるんですか?


神庭さん:賃金ではなく、労働時間が新たなボーダーラインになります。具体的には、週20時間以上働いている・学生ではない・勤め先が従業員51人以上・2カ月を超えて雇用される見込みである、といった要件を満たすと、社会保険の加入対象になるんですね。企業規模の要件は段階的に撤廃されて、今後9年以内にすべての企業が対象になる予定です。従業員36〜50人の企業は来年10月、21〜35人の企業は2029年10月、11〜20人の企業は2032年10月、従業員数10人以下の企業は2035年10月から社会保険の適用対象になる予定です。


吉田:注意する点は何かありますか?


神庭さん:106万円の壁はなくなるんだけど、「20時間の壁」と「130万円の壁」は残っちゃうよ、ということなんですよね。


吉田:どういうことでしょうか?


神庭さん:130万円の壁というのは、配偶者の社会保険の扶養から外れて、自分自身で健康保険・年金などの社会保険料を払わないといけなくなる壁のことです。パートナーの扶養に入っているパート従業員で、時給が1280円(10月からの東京都の最低時給)の場合、どうなるのか。ChatGPTとClaudeを使ってシミュレーションしてみたんですが、週19時間労働なら額面の年収126万円、手取り125万円でほとんど変わらないんです。ところが週20時間労働だと額面年収は133万円になり、「20時間の壁」と「130万円の壁」の両方をオーバーして扶養から外れてしまうんですね。結果として、手取りは113万円までガタっと減ってしまう。労働時間を週19時間から20時間にたった1時間増やしただけで、125-113で手取りが12万円も減ってしまうんです。


ユージ:働く時間を増やしたのに、お給料は減ってる。それは痛いですね。


神庭さん:時給や勤め先の企業規模、パートナーの扶養に入っているか否かで結果は変わってきますから、詳しくはご自身の実態に即してシミュレーションしてみてほしいんですけど、今回の試算では、週19時間から20時間に増やすと手取りが12万円減り、再逆転するには週23時間以上働く必要がある、という結果になりました。ヘタに21時間とか22時間働くなら、19時間以内に抑えるか、頑張って23時間以上働いた方がお得だと考える人も出てきそうですよね。一応フォローしておくと、社会保険料の支払いはお金をドブに捨てているわけではありません。将来の年金が手厚くなるとか、病気やケガで仕事を休んだ時の「傷病手当金」がもらえる、といったメリットもあります。とはいえ、「目の前の手取りが減る代わりに将来の保障が手厚くなるよ」と言われても、素直に「はい、喜んで!」と思える人ばかりではないんじゃないかなという気がしますよね。


ユージ:色んな意見があると思うんですけど、この106万円の壁の撤廃について神庭さんはどう考えますか?


神庭さん:壁が「20時間」とか「130万円」とか別のところに移動しただけで、根本的な解決になっていないと思います。所得税がかかり始める年収はかつて「103万円の壁」と言われましたが、紆余曲折あって178万円に引き上げられました。こちらも壁がなくなったわけではなく、移動しただけです。ある時点でいきなり壁が立ちはだかるような社会保険や税の仕組み自体を変えない限り、働き控えはなくならないんじゃないかなという気がしますけどね。


ユージ:どうしたらいいんですかね?


神庭さん:国が税や社会保障を通じて、夫婦の働き方やライフスタイルを特定の方向に誘導しようとすること自体が元々おかしいんですよね。ボーダーを超えた瞬間に税や社会保険料の負担がドンと増えるようなやり方を改めて、労働時間や収入の増加に応じてなめらかに増えていくような仕組みにしたらいいと思います。1万円から社会保険料を徴収すれば確かに壁はなくなるんですが、ただ、そのぶん労働者の手取りが減って、企業側の負担や事務コストも膨らむので、そこは反発も予想されます。そして考えないといけないのは、最大・最強の壁は106万円じゃなくて「130万円の壁」の方だということなんですよ。国民年金の第3号被保険者制度、いわゆる主婦年金の扱いをどうするのか?という難題とも向き合っていかないといけません。深刻な人手不足を考えると、働き控えの解消は急務です。介護などで働きたくても働けない人たちはいらっしゃいますからそこにはしっかり配慮する必要がありますが、年収の壁の抜本的な見直しというものをこの機会に進めていく必要があるんじゃないかなと思います。

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