Yuming Chord
松任谷由実
2016.08.12.O.A
♪Onair Digest♪
8月も半ば、この時期になるとちらほら見聞きするのが、怪談話。
その場にないもの、ありえないもの、多種多様なものを怖がることができるのは、人間だけに備わった力なんだそうです。
つまり、ホラー映画や小説は、人間だけに与えられた知的な娯楽、といえるかもしれません。
今日のコードは「ホラーの世界」です。


■今週のChordは“ホラーの世界”

m1 Thriller
Michael Jackson

「ホラー(horror)」という言葉の意味を調べると・・・・・・“恐怖、戦慄、身の毛のよだつほどの恐れ”。
よく、「ミステリー(mystery)」と混同されますが、こちらは“神秘、不思議、謎、秘密”と訳されます。
このふたつは表裏一体ではありますが、自分の生存を脅かすかもしれない何かに対して、ドキドキする、血の気がひく、腰を抜かす・・・そんなカラダの変化を起こすのが「ホラー」。
怖い対象を認識していれば、それに似たものに対しても錯覚を起こして恐怖を感じたりもします。
科学哲学が専門の哲学者、戸田山和久さんの本、『恐怖の哲学 ホラーで人間を読む』によればそういう恐怖体験のシュミレーションが出来るため、私たちはそれを利用して「ホラー」という娯楽を作り上げた、とあります。
たとえば、ホラー映画を観ているとき、私たちは“くるぞくるぞ・・・・・・”という段取りによって恐怖感をあおられ、クライマックスではアドレナリンを脳内で大放出!
これによって興奮や快感をもたらされるので、ホラーがやめられなくなってしまう、というわけなんですよね。


m2 Bloody Mary
Lady GaGa

そもそも、ホラー映画の怖さは現実には自分にはやってこない怖さ・・・・・・の、はず。
以前、対談したおすぎさんも、「だからホラー映画は楽しんじゃえばいいのよ!」と、おっしゃっていました。
ホラーだからって食わず嫌いはもったいないと思いますよ。
印象に残っているホラー映画、まっさきに思いつく作品が『何かが道をやってくる』。
1983年、ジャック・クレイトンがレイ・ブラッドベリの幻想小説を映画化しました。
ある夜、アメリカ中西部の田舎町に突然現れたカーニバル一座。そこにジムとウィル、2人の13歳の少年が一座の中で行われている儀式を目撃。それをきっかけにして、一夜のうちに子どもではなくなってしまう・・・・・・、というお話です。
回転木馬の進行につれて、時間が未来へ、過去へ。ジャンルはSFファンタジーになるのかもしれませんが、私にとってはホラーでした。
そして、社会現象にもなった“ザ・ホラー!”といえば1974年の『悪魔のいけにえ』。
典型的なB級ホラーでありながら、技術的に洗練されていて芸術性も高い作品として、マスターフィルムがニューヨーク近代美術館に永久保存されているそうです。
監督は奇才、トビー・フーバーで彼の出世作。彼は、この作品でホラー映画のお約束、“型”を作り上げたといわれています。昨年、公開40周年を記念して、最新技術を駆使してオリジナル素材から修復されて、4Kリマスター版が劇場公開されて、ブルーレイも発売されて話題になりました。
日本のホラー映画は“あるかもしれない怖さ”がリアルに迫ってきます・・・・・・。
身近な舞台での物語だからこその恐怖を感じるし、日本人の恐怖のツボが押さえられていますよね。
ハリウッドでリメイクもされて話題になったJホラーの流れ。
フェイクドキュメンタリー方式で描かれた、特殊脚本家・小中千秋氏の脚本による『邪願霊』(1989)、これは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』手法のさきがけです。
中田秀夫監督の『女優霊』(1995)の流れをうけて『リング』(1998)が大ヒット。
以来、『呪怨』(2000)、『着信アリ』(2004)・・・・・・へと続きます。

私がかつて観て印象に残っているのは、『怪談』という1965年の映画。
小林正樹監督が、小泉八雲が書いた「怪談」を4作のオムニバス作品にしたものです。
“黒髪”“雪女”“耳無芳一”、そしてこの中で最も怖かったのが“茶碗の中”。
未完で終わっているため、怨霊の正体が謎のまま・・・・・・。
日本のホラーは、“感じとる”ものかもしれないですね。


m3 SATURDAY NIGHT ZOMBIES
松任谷 由実

ミステリー界を牽引する作家、綾辻行人さんと、ホラー・SF界の奇才、牧野修さんの共著、『ナゴム、ホラーライフ 怖い映画のススメ』。
この本は、ホラーを偏愛する2人がホラー愛たっぷりに著した一冊なんですが・・・、牧野さんはこんな風に語っています。
「ホラーというものは、もともとがカーニバルの見世物小屋であり、遊園地のお化け屋敷だ。
馬鹿馬鹿しくもスリリングな娯楽なのだ。それ以上でもそれ以下でもない」
まさに、そのとおり。
難しいことは考えずに頭をからっぽにして、五感を刺激するアミューズメントのひとつとしてホラーの世界に触れてみてください。猛暑のせいでヒートアップしそうになったら、味わい深いホラーの世界にひたってひんやりしみじみ、過ごしましょう!




過去のO.Aはコチラ!
♪menu♪
番組TOPページ
番組へお便りはコチラ!
Message to Yuming
Yumin最新情報!
Information
TOKYOFM TOPページ

▲ページ上部へ
(c) TOKYO FM