Yuming Chord
松任谷由実
2021.07.16.O.A
♪Onair Digest♪
今日は海に棲む想像上の生物ついて、考察してみます。
今日のコードは「Mermaid」です。


■今週のChordは“Mermaid”

m1 人魚になりたい
松任谷 由実

お送りしているのは、アルバム『SURF & SNOW』から「人魚になりたい」です。
そんな1曲でスタートした『Yuming Chord』。
本来なら、来週の月曜、7月19日は国民の祝日「海の日」でしたが、ご存知、今年の「海の日」は7月22日へと移動。今週末は3連休!という勘違いをしている人は、この期に及んで、さすがに居ないかな。
とはいえ、海辺が恋しい季節になりました。そこで!今日は海に棲む想像上の生物ついて、考察してみます。
今日のコードは「Mermaid」。

「Mermaid」、人魚は興味深いモチーフのひとつです。
上半身が人間のカラダで、下半身が魚のカタチをしている「人魚」。冷静に考えれば、当然、空想上の生き物だということはわかりますが、人魚について記した文献や絵画、彫刻、アートや文学は世界中に数多くあって、関心の高さがうかがえます。

世界で最も古いとされる人魚像は、現在のイラク北部、チグリス川上流メソポタミアの「アッシリア」で発掘されたものだといいます。
紀元前8世紀の人魚像は、長いひげを生やした男の人魚、「merman(マーマン)」でした。そう、人魚は男性・女性、中性もいるんですよね。

当然のことですが、世界各地で呼び方も起源も色々あります。

ケルト民族が多く住むアイルランド島の人魚は「メロウ」。アイルランド語の海(メル)と、オウ(少女)で「メロウ」です。
男性の人魚は醜い姿だったと言われていますが、女性の人魚はオリーブ色の肌をした美しい姿だといわれています。

ギリシア神話に登場する人魚は「セイレーン」。羽が生えていたり、下半身が鳥の姿で描かれたりもしていますが、いずれにせよ、美しい歌声で航海者を誘惑して船を沈没させたり、近づいてきた人間を食べてしまうこともある魔物、という位置づけです。
ちなみに、救急車や消防車が鳴らす「サイレン」の語源でもあるそうです。

私が人魚、と聞いて、まず思い浮かぶのは、デンマークの童話作家、アンデルセンの「人魚姫」の物語。
嵐の日に船から海へ投げ出された人間の王子を助けた人魚が、彼に会うために魔女に頼みこんで、自らの美しい声とひきかえに、人間の姿を手に入れて再会するものの、思わぬ結末へ・・・という悲恋の物語です。

そこから想像を広げて、歌詞をかくこともありました。
「人魚姫」が下敷きになっている作品、例えば映画なら、ダリル・ハンナが人魚を演じた『スプラッシュ』(1984)や、ディズニーアニメ『リトルマーメイド』(1989)あたりも、人気の作品です。

そして、これも印象的!日本では2018年公開のギレルモ・デル・トロ監督・脚本の映画、『シェイプ・オブ・ウォーター』です。
第74回ベネチア国際映画祭の金獅子賞、第90回アカデミー賞の作品賞ほか、4部門を受賞したファンタジーラブストーリー。

舞台は1960年代のアメリカ。政府の研究施設で掃除婦として働く女性イライザは、研究目的で連れてこられた半魚人と、心を通わせる、というお話。
この作品も、アンデルセンの「人魚姫」が下敷きになっていますよね。
「声」「言葉」では意思疎通ができない2人の間には、ピュアな感情が芽生えます。アンデルセンの「人魚姫」も、人魚と王子は、言葉を交わせない状態。

ではここで、今日のコード「Mermaid」にちなんだ1曲を。


m2 小麦色のマーメイド
松田 聖子

お送りしたのは松田聖子で「小麦色のマーメイド」でした。

今日のコードは「Mermaid」。
まわりを海に囲まれている日本にも、人魚にまつわる伝説がたくさん残っています。
日本最古の報告例は『日本書紀』。6世紀末から7世紀にかけて活躍した推古天皇の時代に、近江の国や摂津の国で「魚でも人でもない生き物が捕れた」と記されていたそうです。
以降、人魚にまつわる“証言”はたくさん!「人魚の骨をけずった薬を飲むと解毒剤になる」とか「人魚の肉を食べると長寿になる」とか、「人魚の牙や足の皮(!)を手に入れた」など、とんでもない記述も多数、探し出せます。

ちなみに、野暮な話になりますが、人魚に関するこれまでの研究や考察によれば、その正体は「ジュゴン」や「リュウグウノツカイ」、「アザラシ」や「アシカ」、哺乳類の「スナメリ」や、「オオサンショウウオ」映画や絵画に登場する美しいマーメイドとは、似ても似つかない生物たち。
「人魚だ!」と思った人たちは、どんな夢を託したんでしょうか?

実際は存在しないにもかかわらず、多くの人たちに目撃されてきた幻の獣(けもの)のことを、「幻獣(げんじゅう)」と呼びます。人魚のほかにも、河童やツチノコ、竜や鬼など、ですね。
どれもみな、その姿がありありと思い描けるだけに、あらゆる条件がそろうと、「これは幻でじゃなく、ホンモノかも」と思ってしまうことがあるかもしれません。

ところで、かつて日本が開港した1854年以降、日本の人魚が西洋世界のいたるところに輸出されていたって、知ってます?
当時、ガラスのケースに入ったそのマーメイドを、ロンドンっ子が行列して見にきたという史実があります。
その人魚のミイラの正体は、上半身部分は猿、下半身は鮭を使って作られたニセの人魚。当時、およそ60両で取引されていたそうです。(幕末の貨幣価値だと60万円くらい)
そういうあやしい展示やおみやげ品、ちゃっかり存在していますよね。

刷り込まれた先入観、といえば、お国柄も反映されます。
例えば、日本で有名な人魚の物語といえば、小川未明の「赤い蝋燭と人魚」。
地上で育ててもらった方が幸せになれるだろうと考えた母親の人魚が、蝋燭屋を営む老夫婦に、生まれたばかりの娘を預けます。

人魚の娘は、老夫婦に恩義を感じて、蝋燭に絵を描くことで売上に貢献しますが、あるとき、人魚であることが興行(見世物小屋など、ですね)を生業とする男に知られてしまい、「人魚がいるのは不吉だ」と老夫婦を騙して、人魚の娘を売ろうとするというお話。

一方、21世紀に入って、マーメイドが人間と魚のハイブリッドであることから、“ボディ・ポジティブ”のシンボルとして注目を集めているんだそうです。
1983年から、ニューヨークのコニーアイランドで開催されているのが、「マーメイド・パレ―ド」。人と違うことを称えるこの祭典は、マーメイドのコスプレをして、「この世に存在するけど、この世のものではない」そんな、すべてを超えたアイデンティティを認め合うんだとか。
実は私も、ステージでマーメイドのコスチュームを身に着けることがあります。

では最後に、今日のコード「Mermaid」にちなんだ私の曲を。


m3 人魚姫の夢
松任谷 由実

お送りしたのは、アルバム『そしてもう一度夢見るだろう』に収録された1曲、「人魚姫の夢」でした。

今日は、「Mermaid」というコードでお話ししてきました。
ちなみに、今、私たちがしょっちゅう目にしている、世界的に有名なマーメイドモチーフといえば、スターバックスコーヒーのロゴ!
髪の長い女神のような女性、あれは実をいうと、美しい歌声で船乗りを魅了する人魚、セイレーンなんだそうです。
創業当時のロゴでは全身がプリントされていましたが、今は上半身だけなので、マーメイドとは気づかない方も多いかもしれません。
以上、マーメイドにちなんだトリヴィアでした。

さて!この秋からスタートするコンサートツアー、「深海の街」。
全国63公演の予定となっていますが、今だからこそ!の、特別なステージをご覧いただけるよう、ただいま、着々と準備中です。
昨日から、アルバム購入者限定、先行予約のエントリー受付が始まっています。エントリーには、アルバム「深海の街」に封入されているチラシに記載の受付URLと、シリアルコードが必要になります。この機会、お見逃しなく!
なお、ツアーの日程は、私のオフィシャルホームページに掲載してありますので、そちらからご確認ください。

そのほか、私の最新情報や近況は、私の公式ホームページツイッターインスタグラムなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。



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