Yuming Chord
松任谷由実
2022.04.15.O.A
♪Onair Digest♪

今日のコードは「Great Ape」。
ゲストは、先週に引き続き、40年以上の間、大型類人猿の飼育や研究に携わってきた、日本オランウータン・リサーチセンター代表理事、黒鳥英俊(くろとり・ひでとし)さんです。


■今週のChordは“Great Ape”

m1 Feel Good Inc.
Gorillaz

ユーミン:今日のコードは「Great Ape」。ゲストは、40年近く大型類人猿の飼育や研究に携わり、現在は日本オランウータン・リサーチセンター代表理事を務める黒鳥英俊(くろとり・ひでとし)さんをお迎えしています。
大型類人猿と呼ばれる種の中で、人間に一番近い種と言うと?

黒鳥:一番最後に分かれたのがチンパンジーとかですので、オランウータンやゴリラよりも近いかと思います。

ユーミン:そのチンパンジーの主な生態というのは、どういうところでしょう?

黒鳥:群れでいる動物ですので、私はずっと上野動物園と多摩動物公園で働いていましたけれども、その日に(お客さんに見えるところに)出すチンパンジーの仲間を、「今日は誰を出そう」とか毎日考えながら出していましたね。
例えばメスは生理が来たりしますから、そういったことによって出るメンバーが変わるんですね。そうするとやっぱり、一緒に出るメンバーによって彼らも自分の立ち位置を考えますから、その辺はすごくよく周囲を見ながら向こうもやっているかと思います。

ユーミン:群れのリーダーは「アルファオス」と言うんですよね。リーダーの資質はどんなところにあるんでしょう?

黒鳥:やっぱり(群れを)まとめられるオスじゃないと難しいですよね。“たくさんの仲間をいかにまとめることができるか”にかかっていると思います。

ユーミン:それは腕力とか体格とかそういうこと?

黒鳥:そうですね。いかに統率できるかということで。ただ、力だけでもダメですね。それは他の動物もみんなそうです。チンパンジーもオランウータンもゴリラもそうですけども、やはり、ただ暴力的なのはやっぱり嫌われます。
そこら辺はメスがよく見てますので、上に立つ者は大変だと思います(笑)。

ユーミン:今まで上野動物園でご覧になって、一番モテたアルファオスって?

黒鳥:ちょっとゴリラの話になりますが、私は上野動物園にいる時にゴリラの群れ作りをやったんですけれども、やはり結局は、メスの扱いが上手いオスですよね。

ユーミン:そういう話、興味ありますね!

黒鳥:やはり、モテるオスとモテないオスが出てくるんですよ。5、6頭オスを色々変えて(群れ作りを)やったんですけれども、モテるオスというのは、力じゃないんですね。力も必要なんですけども、やはりメスをいかにうまく扱うか。

ユーミン:マメだったりするんですか?

黒鳥:マメ!マメさがないとダメですね。何かあったらすぐメスの方に行って色々ご機嫌を取る。それがすごく大切ですね。


m2 やさしさに包まれたなら
荒井 由実

ユーミン:「Great Ape」“大型類人猿”というコードでお送りしている、「Yuming Chord」。ゲストに日本オランウータン・リサーチセンター代表理事の黒鳥英俊さんをお迎えしていますが、こちらではどんな活動をされているのですか?

黒鳥:名前のように“オランウータンを研究する”ということなんですけれども、要はオランウータンを知ってもらう。オランウータンのことをもっと一般の人に知ってもらって、またそこに研究者がたくさんいますので、研究者がいろんなオランウータンの研究をできるように色々サポートしたり、あと、動物園にアドバイスをしたり、あとは教育普及活動ですね。

ユーミン:オランウータンの特徴といえば、一人で暮らしてるんですよね。オランウータンは「森の賢人」とも呼ばれていますけれども、本当に賢いんですか?

黒鳥:みんな賢いですよ。ただ、森の中にいるオランウータンと動物園にいるオランウータンとでは頭の使い方が違うと思うんですけども、森にいるオランウータンだったら、「広い森の中でどこで果実が熟している」とかも頭の中にマップが入ってるみたいですね。動物園だとまた違う頭の使い方をしますので、遊びにしても次から次に色々考えながら、いろんなことをやりますね。

ユーミン:創造性があるところがすごいですね。
大型類人猿の中群れを作って暮らすのがチンパンジーやゴリラ。そしてオランウータンは本来群れを作らないそうですけれど、そもそも彼らの生活は地上ではなくて木の上なんですよね。

黒鳥:そうです。テナガザルも一緒なんですけども、一生のうちほとんどをあまり下りてこないで、ほとんど木の上で生活するわけですね。彼らは高木のところに毎日いて、夕方になるとベッドを作るんですね。

ユーミン:万年床じゃなくて?

黒鳥:違いますよ。人より良いかもしれないです(笑)。チンパンジーやゴリラも一緒なんですけども、毎日そこら辺の枝を集めて、自分の大きさの良いベッドを作るんですよ。そこで寝て、次の日、また違うところにベッドを作る。
ただ、現地(生息地)が、毎日ベッドを変えるほどいられる土地がなくなってきている。木もないし。だからちょっとかわいそうですよね。

ユーミン:猿学者の方って、どうしても環境の方に目がいって、そういう活動とか研究とかされるようになるんじゃないですか?

黒鳥:そうですね。現に私も「ボルネオ保全トラスト」というところで、現地の土地を購入して、そこで彼らが住めるようにするような活動をやっています。

ユーミン:黒鳥さんが感動したオランウータンの才能っていうのは、ベッド作り以外でありますか?

黒鳥:動物園だと、一番危ない動物なんです。危ないというか、逃げる動物。とにかくいろんなものを常に見ながら、部屋のいろんな物を使っていろんなことをやりだすんですよ。私たちに見つかったら取られますから隠したりして、それを使って色々やる。それで、さらにエスカレートしてそのうち何か壊したりとか。私も随分壊されましたけども。

ユーミン:それは頭の良さですよね。

黒鳥:すごいですよね。どんどん発展していっている。

ユーミン:オランウータンを始め大型類人猿たちの賢さにそうやって触れてこられた黒鳥さんなんですが、ふと、私たちは人間が一番賢い動物だと思ってるけど、果たしてそうなのか?考えちゃいますよね。

黒鳥:そうですね。今このご時世見てると、ちょっとひどいなと。彼ら(大型類人猿)は本当に平和的で、他に害を加えず、その中で毎日を過ごしているわけですから。

ユーミン:人間の方がちょっと増え過ぎちゃったんですよね。

黒鳥:それはありますね。

ユーミン:先生が書いてらっしゃったように、人間はコミュニケーションツールを高度に手に入れたことで余計に争ったりするようになってしまった。太古の人たちには争いを避けて旅をした部族とかもいて、それで絶滅しちゃったり。残っている我々が、そういう破壊的なところに向かって行っちゃったんでしょうね。

黒鳥:人と本当に近い、兄弟の(種である)オランウータン、ゴリラ、チンパンジーを人間がどんどん傷つけてるっていうのは、やっぱり私もずっと関わっていて、辛いですよね。

ユーミン:密猟者の問題とかすごいじゃないですか。子供のゴリラの方が育てやすいから、親を殺しちゃって売っちゃうでしょ。

黒鳥:最初に(動物園などに)来た個体というのは、そういう風にして来てるんですね。どこの動物園でも、最初は、親を殺されて飼いやすい子供を船で連れて来るんですけども、アメリカでもヨーロッパでも日本でも、途中でほとんど、9割ぐらい死んで、その残ったのが今(動物園にいる個体の)母体になってるんですね。そこからスタートしてるんです。
今は、かつてそういうことがあったけれども、動物園は“恩返し”じゃないけれども、今現地(野生の生息地)がひどい状態なので、なんとか私たちの力で戻してあげる、共存するという形で今どんどん進んでます。

ユーミン:全ての類人猿たちが教えてくれること、黒鳥先生が“こういうことを教えられたな”っていうことを教えていただけたら嬉しいです。

黒鳥:彼らはすごく頭が良いというか、昔のことまで全部覚えているんですね。小さいことの記憶も全部覚えてるんです。過去のことも全部覚えてるし、こちらがちゃんと優しく接していれば、ちゃんと素直に返ってきますしね。その辺は人とは全然違う。言ったことに対してはちゃんとした正解で返ってくる。今の人間は、その辺はちょっとわからないですもんね。
最後に、私たちもそうですけれども、みんながやっぱり平穏、平和に住めるように、ということは望みますね。

ユーミン:そうですね。
最後に、今日のコード「Great Ape」にちなんだ、私の曲を聴きながら先生とはお別れになります。ゲストは、日本オランウータン・リサーチセンター代表理事を務める黒鳥英俊さんでした。どうもありがとうございました。


今日のゲストは、元・上野動物園、多摩動物公園の飼育員で、現在は日本オランウータン・リサーチセンター代表理事ほか、大型類人猿たちの種を守るためにさまざまな活動されている、黒鳥英俊さんでした。

面白かった!本当に、「猿を知ることは人間を知ること」なんですよ。先生の本を読んでまた久しぶりに猿について考えましたけど、実は私、昔から猿のことが好きで。猿は本当に面白いんですよ。
あと、話の中で先週も今週も出てきたと思いますけど、どうしても環境の変化とかに直面せざるを得ないから、すごく平和に地球全体のことを考えるモードになるんですよね。
ゴリラもチンパンジーもオランウータンもやっぱり私たち人間とって近しい存在なんだなと、つくづく愛おしく思いましたし、彼らが健やかに生きていけるように整えることが自分たちのことも考えることなんだっていうことを、改めて感じました。
今日の話も含めて、彼らの生態が置かれている状況をさらに詳しく知るのなら、黒鳥英俊さんの本『恋するサル 類人猿の社会で愛情について考えた』をぜひ、読んでみてください。
CCCメディアハウスから発売中です。

さて、現在、『松任谷由実コンサートツアー“深海の街”』、真っ最中の私ですが、新型コロナウィルスの感染状況を踏まえて、スケジュール他最新情報は随時アップデートされます。

そのほか、私の最新情報や近況は、私の公式ホームページツイッターインスタグラムなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。



過去のO.Aはコチラ!
♪menu♪
番組TOPページ
番組へお便りはコチラ!
Message to Yuming
Yumin最新情報!
Information
TOKYOFM TOPページ

▲ページ上部へ
(c) TOKYO FM