SCHOOL OF LOCK!未来新聞 2016年3月11日号

SCHOOL OF LOCK!未来新聞 2016年3月11日号
私が怖がっていたのは、《忘れる》ことじゃない。
《前に進む》ことが怖かったのだと思いました。


昨年も未来新聞に投稿したゆあです。1年ぶりに震災の話を書きます。

昨年の私は、人々の記憶から震災のことが薄れていくことが許せませんでした。風化させるメディアが許せませんでした。この1年間、日常会話で震災の話が出てくることはありませんでした。けど、それはきっと、忘れたからではないことに気付きました。《忘れる》ことと、《前に進む》ことは全くの別物です。私が怖がっていたのは、《忘れる》ことじゃない。《前に進む》ことが怖かったのだと思いました。

私たちは震災を忘れていってるわけじゃない。忘れていってると錯覚しているだけで、本当は前に進んでいるだけ。前に進むことで震災が過去の話になってしまうから、それを自分が忘れていってるからだと思い込んでいる。そう私は感じました。
私たちは震災のことを絶対に忘れない。今年で震災から5年が経って、あの頃小学6年生だった私も今年高校3年生になります。あっという間に時間は流れます。震災が、時間は有限であることを教えてくれました。精一杯前を向いて生きることは、震災を忘れたことにはならない。全て過去になることが悲しいことだとしても、私たちはそれを受け入れなくてはいけない。過去よりも未来の方がずっと大事なのに、私たちは過去に囚われやすいし、過去に縛られ、過去を美化してしまう。ずっと立ち止まったままでいたら絶対に未来は好転しない。行動を起こさなきゃずっと変わらないまま。それってとても怖いことだと思います。

先日、台南で大きな地震がありました。私もそれをニュースを通じて見ていましたが、つい今日クラスにある張り紙が貼られたんです。それは、昨年台湾へ海外研修へ行った同級生が立ち上げた募金活動の告知でした。それを見た時、胸にこみ上げるものがありました。こうやって人と人は国を超えて繋がっていくのだと思いました。
誰かが震災を忘れそうになった時、誰かが思い出させてくれる。もう一度あの時の気持ちを思い出させてくれる。震災は確かにたくさんの人が亡くなったし、たくさんのものが奪われたけど、本当に全部悪いことばかりだったのか。きっとそうじゃない。こうやって、人と人の輪は繋がって誰かが誰かを思っている。それだけで世界は少し優しくなる。それが例え海をまたいだ遠い国の人であっても、隣の席の友達でも、今一緒にいる人でも。大丈夫、私たちは前に進める。

ゆあ 宮城県 17歳 女



未来新聞2015年3月11日号に寄稿してくれた記事
どんどん忘れていく自分が大嫌いです。

震災のあった日のことは今でもよく覚えています。小学校の卒業式を間近に控えた大雪の降った日のことでした。まるで旅客船が転覆するような激しく大きい揺れ、友達の叫び声泣き声、まだ小学6年生でしたがあのときほど死を身近に感じたことはありません。怖くて震え が止まらなかったのも覚えています。幸い私の住む地域は内陸でしたので津波の被害は免れました。しかし停電していたために沿岸部での津波の被害をこの目で確認できたのは震災発生から1週間も後のことでした。友達が津波で亡くなりました。大好きな親戚が被爆しました。

あのときは私も死にたくなるくらい辛かったのに、今では痛みも薄れ、記憶も薄れ、声も忘れ、不自由なく毎日を過ごしています。そんな自分が大嫌いです。どんどん忘れていく自分が大嫌いです。あのときは食事やお風呂だってままならなかったのに。必死に被災地を思って毎日生きていたのに。メディアも嫌いです。風化してしまったのはメディアにも責任はあるのに、忘れさせないためにメディアがどうにかしてくれなきゃ私たちはなす術もないのに。そういうことを思う夜は眠れなくなります。喉の奥が詰まったかのように苦しくて仕方なくなります。でも私たちは生きねばなりません。

苦しくても辛くても明日がやってくることに変わりはありません。2年後には受験をして、そのうち社会人になって、震災から10年が経つ頃にはもう、覚えていることなんてほんの少しかもしれない。でも思うんです。この痛みを背負って生きることが、命の重さを、人生を、しっかり感じて生きていくことが精一杯の供養であり、弔いなんじゃないかなって。

私は音楽に救われました。YUIの大ファンで、震災のときも毎日聴いていました。2011年11月には岩手のライブにも行ってきました。一生忘れられないと思います。YUIの音楽のおかげで私は今目標をもって生きることができています。

私は将来精神科医になることが夢です。亡くなってしまった親戚や友達のためにも私は一瞬一秒も無駄にできません。だからどうか、みなさんも。あの日のことを忘れないでほしい。日本人の心の美しさを誇ってほしい。助け合ったことをこれからも伝え続けてほしい。忘れてはいけないのだ。絶対に、絶対に、絶対に、忘れてはいけない。

ゆあ 宮城県 16歳 女