能登半島地震から2年になるのを前に
今週も、能登の瓦を再利用するプロジェクトについてお伝えします。
石川県珠洲市で、このプロジェクトを取材したTOKYO FM 鈴木晶久アナウンサーです。
鈴木:一般社団法人瓦バンクが進めているプロジェクトで、能登半島地震で壊れ、 解体された家からまだ使える瓦を回収して、その瓦を再び屋根などに使おうというものです。
手島:能登の瓦は、黒色が特徴の一つでした。釉薬(ゆうやく)=うわぐすりの色が黒で、その釉薬が瓦の両面、表と裏にかけられていて、強度がある、風や雪に強い瓦です。
鈴木:能登の文化の一つ、その黒い瓦を残そうと活動している瓦バンクの瀬尾裕樹子(せのお・ゆきこ)さんらと、石川県珠洲市にあるお寺、本住寺(ほんじゅうじ)を訪れました。珠洲市は去年元日の能登半島地震で震度6強の揺れに見舞われ、本住寺は倒壊、本堂は崩れ落ちたということです。いまは更地になっていて、遠くには地震で倒れてしまったお墓が見えました。地震の前に本堂があったところで、住職にお話をうかがいました。日蓮宗・本住寺の大句哲正(だいく・てっしょう)住職です。
寺もやっと1年経って更地にしていただいたんで。どこのお寺も一緒です。寺として建っているということは一切ありません。まずやっぱり檀家さんは自分の家が最優先。自分の家が建って、生業が成り立って初めてお墓どうしようかという順番だと思うんですね。だから、ちょっとまぁ時間はかかるかなと思ってますけど、地域のよりどころの一つになるんでね。皆さんが集まる場所を作りたいなと思って。瓦バンクさんとか、いろいろな方に協力していただいてね。ここに来年くらいに(本堂が)できればいいなと。で、今までの瓦をそこに乗っければいいなというふうに思ってます。
手島:みんなが集まる場、よりどころになる本堂の屋根には黒い能登瓦がふかれるということですね。
鈴木:珠洲市では、地震で壊れた家屋の解体が進んでいて、いまは空き地にあっているところが目立ちました。そこに、これからまた家を建てるのか、避難しているところからまた戻ってくるのかという課題に珠洲市の住民は直面しています。こうした中、能登の瓦の再利用に取り組む瓦バンクには、回収された能登瓦を使えないだろうか、という相談が増えてきているそうです
手島:今後、珠洲の新たな家や建物に、回収された能登の黒い瓦がどんどん使われるようになっていくと、 復興にもつながりますね。
鈴木:瓦バンクでは回収した瓦をどう使っていくかが活動のポイントになってきているそうです。
実際に、これまでに珠洲市内の仮設住宅の隣に新たに建てられた集会所の屋根に、回収した(能登)瓦をふいたそうです
手島:そして、お寺の屋根にも、来年くらいに能登の瓦が使われるということですね。
鈴木:来月1日、能登半島地震から2年となるのを前に、本住寺の大句哲正(だいく・てっしょう)住職にいまの想いをうかがいました。
能登の人間はよく優しいっていわれてね、我慢強いんですよ。ただね、我慢強さも限界があって。そろそろね、ちょっと諦めみたいになってくるんですよ。それで寺とすると、何とかなるよ、もう根拠はないんけどね、何とかなるよ、何と
かするよと言ってるんだけど、何とももならない。そうすると、厭世観というんですか。そういうのがちょっとねあったりして。だから、私らが情報を発信してね、「助けてくれ」と言わないと、ちょっとやっていけないのかなぁと、割り切ってね。いろんな全国に行って、こういう話していますよ。
鈴木:珠洲市の住職や瓦バンクのメンバーを取材すると、人々が集まる場づくりが求められていること、瓦を通して復興に取り組む姿がありました。それを能登ではないところで暮らす人に伝えてもらいたい、という想いも感じました。能登の方々からは、珠洲の今を発信していくこと、その発信を続けていくことが大事だという話もありました。