翻訳版から広がる世界、そしてラジオの仕事
2025/01/18
今週も作家・小川洋子さんのライフストーリーをお届けしました。
小説が初めて翻訳された瞬間:想像を超えた喜び
小川洋子さんが人生の分岐点として挙げるのが、初めて自身の小説が翻訳されたときのこと。最初に翻訳されたのは2作目の小説『冷めない紅茶』で、翻訳言語はフランス語。フランス南部のアルルにある小さな出版社が、熱意をもってプロジェクトを進めたといいます。
「日本の無名の作家の作品を、遠いフランスで出版しようとするなんてすごい勇気だと思います」と語る小川さん。さらに、翻訳者のローズ・マリーさんと初対面したときには、まるで長年の友人に会ったかのような親近感を覚えたそうです。作品を深く理解し愛してくれる翻訳者との幸運な出会いが、小説家人生において大きな意味を持つ出来事となりました。
そして、小川さんの小説『薬指の標本』は、2005年にフランスで映画化され、翌年には日本でも公開されました。この映画の監督も小説のフランス語版を読んだことがきっかけで製作が始まったそうです。
映画の撮影はドイツのケルンで行われ、主人公を演じたのはウクライナ人の女性俳優という、非常に国際的なプロジェクト。小川さんは完成した映画を見たとき、「自分が日本語で描いていた世界観が、そのまま映像化されていた」と感動したと言います。
監督は作品の細かい部分にもこだわり、主人公が履く靴を探すために蚤の市を巡るほどでした。「標本室のセットに至るまで、すべての小道具に神経が行き届いていて、作家として嬉しかったです」と小川さんは振り返ります。
15年にわたる「Panasonic Мelodious Library」
小川洋子さんが担当していた「Panasonic Мelodious Library」は、2007年から2023年まで15年間続いた読書会形式のラジオ番組。この番組では「未来に残したい文学遺産」と呼べる古今東西の文学作品を毎週1冊取り上げ、リスナーと一緒に楽しむ内容でした。
番組では季節や記念日などに合わせて本を選び、たとえばバレンタインデーには恋愛小説、クリスマスには子ども向けの絵本など、タイムリーで幅広いジャンルの作品が紹介されました。「世界中に素晴らしい文学が尽きないことが、番組が長く続いた理由です」と小川さんは語ります。
さらに、番組制作を支えたのは、15年間変わらず続いたスタッフたちの存在。元TOKYO FMアナウンサーの藤丸由華さんをはじめ、ディレクターや台本作家といった全員が女性スタッフというチームで、毎週の本選びから番組の内容を作り上げていったそう。
「同じ本を読み続けた仲間との間には、言葉では説明できない深い絆が生まれます」と小川さん。その絆は文学の力によって結ばれた特別なものだったと振り返ります。また、文学が人と人を繋ぐ役割を持っていることを改めて実感したと語ります。
このラジオ番組をきっかけに、様々な出会いがあったという小川さん。
「未来に残したい文学を紹介する」という使命を持ちながら、スタッフとの協力や読書を通じた繋がりを築いた15年間は小川さんにとってかけがえのない時間だったようです。
小説が初めて翻訳された瞬間:想像を超えた喜び
小川洋子さんが人生の分岐点として挙げるのが、初めて自身の小説が翻訳されたときのこと。最初に翻訳されたのは2作目の小説『冷めない紅茶』で、翻訳言語はフランス語。フランス南部のアルルにある小さな出版社が、熱意をもってプロジェクトを進めたといいます。
「日本の無名の作家の作品を、遠いフランスで出版しようとするなんてすごい勇気だと思います」と語る小川さん。さらに、翻訳者のローズ・マリーさんと初対面したときには、まるで長年の友人に会ったかのような親近感を覚えたそうです。作品を深く理解し愛してくれる翻訳者との幸運な出会いが、小説家人生において大きな意味を持つ出来事となりました。
そして、小川さんの小説『薬指の標本』は、2005年にフランスで映画化され、翌年には日本でも公開されました。この映画の監督も小説のフランス語版を読んだことがきっかけで製作が始まったそうです。
映画の撮影はドイツのケルンで行われ、主人公を演じたのはウクライナ人の女性俳優という、非常に国際的なプロジェクト。小川さんは完成した映画を見たとき、「自分が日本語で描いていた世界観が、そのまま映像化されていた」と感動したと言います。
監督は作品の細かい部分にもこだわり、主人公が履く靴を探すために蚤の市を巡るほどでした。「標本室のセットに至るまで、すべての小道具に神経が行き届いていて、作家として嬉しかったです」と小川さんは振り返ります。
15年にわたる「Panasonic Мelodious Library」
小川洋子さんが担当していた「Panasonic Мelodious Library」は、2007年から2023年まで15年間続いた読書会形式のラジオ番組。この番組では「未来に残したい文学遺産」と呼べる古今東西の文学作品を毎週1冊取り上げ、リスナーと一緒に楽しむ内容でした。
番組では季節や記念日などに合わせて本を選び、たとえばバレンタインデーには恋愛小説、クリスマスには子ども向けの絵本など、タイムリーで幅広いジャンルの作品が紹介されました。「世界中に素晴らしい文学が尽きないことが、番組が長く続いた理由です」と小川さんは語ります。
さらに、番組制作を支えたのは、15年間変わらず続いたスタッフたちの存在。元TOKYO FMアナウンサーの藤丸由華さんをはじめ、ディレクターや台本作家といった全員が女性スタッフというチームで、毎週の本選びから番組の内容を作り上げていったそう。
「同じ本を読み続けた仲間との間には、言葉では説明できない深い絆が生まれます」と小川さん。その絆は文学の力によって結ばれた特別なものだったと振り返ります。また、文学が人と人を繋ぐ役割を持っていることを改めて実感したと語ります。
このラジオ番組をきっかけに、様々な出会いがあったという小川さん。
「未来に残したい文学を紹介する」という使命を持ちながら、スタッフとの協力や読書を通じた繋がりを築いた15年間は小川さんにとってかけがえのない時間だったようです。