プロジェクト概要

太古の昔より、森は動物や植物などたくさんの命を育み、田畑や海、川にたくさんのミネラルをもたらし、地域と暮らしを守ってきました。 東日本震災では津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、その森や、昔からその地方に根差す、深く地面深くに根を張った潜在自然植生の木々たちは、津波の勢いを和らげました。 関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。 この「鎮守の森」をモデルとした森をできるだけ多くつくることは、災害の多いこの国に生きていく私たちが、後世に伝え残さなくてはならない貴重な知恵であり、自然と共生していく教訓でもあります。 番組「いのちの森〜voice of forest~」では、「鎮守の森のプロジェクト」が行う活動をはじめ、日本のみならず世界各地の森を守る活動を行う人や団体にスポットをあて、森の大切さについて考えていきます。


今週も「森林ジャーナリスト」田中敦夫さんのお話をお届けします。
さて、“成長産業”と言われる日本の林業の、怖い言葉でいえば「闇」の部分を、次々と明らかにした田中さんの新刊「絶望の林業」。
じゃあ日本の林業ってもうダメなの?とズーンとなってしまうんですが、最後は、「かすかな希望もある」、というお話です。

”自伐林業”とは、自分で切る林業ですね。これまでは作業をプロに発注していたわけですが、発注したらその分お金を取られるわけですから、全然利益が出ない。だったら山主が自分で切って作業をすればその分利益が出るじゃないかと、それが自伐林業なんです。
ただすべての山の主がそれをやるというわけにはいかない、中には何100ヘクタール、何千ヘクタール持っている山主もいるわけで、自伐できるわけないですよね。どうしても誰かに依頼しなければいけない。その時に信用できる、丁寧に扱ってくださる人にお願いしようと、これが自伐「型」林業ということになるんですね。規模を小さくしようという事ですね。
政府の推進している日本の林業はどんどん規模を大きくしてこうというとです。その分低コストになるから利益も増えますよということなんですが、そうじゃなくて1人で1ヘクタールだけをコツコツやっていこうという考え方ですよね。丁寧に山主の気持ちになって、やっていこうという発想ですね。山主が頑張って50年間育てた木を、私が預かって切らせてもらうんだなと思いが、丁寧にやろうという気持ちになりますよね。


〜”山主”のほかに”山守”という言葉もありますが、これは別のものなんでしょうか。
こういう言葉を使ったのは、奈良県の吉野の林業家で使っています。”山主”はまさに山の主、所有者です。吉野では山主が直接手を出すのではなくて地元の山村に住んでいる方に「家の山を守ってくれ」と預けるんですね。これを”山守”といいます。かれこれ500年続いている制度ですね。

〜1つの成功例として、吉野型林業というのがあると本で書かれていますね。
誤解を招くんですが、吉野の林業自体は日本で最も古い林業地で、しかも非常に技術も良く、最高峰と言われているところなんですが、今もそんなに優秀かというと、残念ながら今の林業不況は日本全国を被っている状態で、吉野も苦しんでいます。ですので、今の吉野がこのまま優秀なモデルになるかというと、そういうものじゃないんですが、歴史を振り返ってみたら500年間維持してきた林業は非常に技術も、システムも含めて意味深いものがあるのではないかなとは思います。吉野は先程言った通り山の所有者、管理者を山主と山守として分けているわけですね。技術は山守がきっちり磨いて、代々継いでいく。しかも山主と山守は普段から顔を見ているわけです。ですから、山守は山主の気持ちになって作業ができるということになります。山主と代々付き合っているのに、荒らすことはできないですよね。そういう形のシステムは、戦後すぐまではすごくうまく機能していたんですね。ただ残念ながら、いま吉野の林業も苦しいと言ったのは、木材の需要の問題ですよね。ちゃんと高く良い値段で高く買ってくれる需要がなくなっているんです。かつては吉野材といったら値段が天下一品で、他の林業地の何倍もする良い値段で売れたんです。ところが今はそういう良い木が高い値段で売れなくなっちゃったので、苦しくなってきている。だからやっぱり木材需要をどうやって作るかですよね。それがないと山主も儲からないし、山守も儲からない、だったら林業なんてやってられないよということになっちゃうんですよね。

〜田中さんから見て、国産の木材が海外のものより秀でているというポイントはありますか?
残念ながら国産材が優秀かというと私は疑問なんですね。客観的に言うと、例えば強度なんかは国産材が悪かったりするんですね。客観的に国産材が良いという要素はあまりないと思います。ただ、ここで必要なのはもっと感情的な問題ですよね。これはブルネイのどこそこのジャングルの木だよというのと、これはあの人の山で、50年前に苗を植えた育てて、ようやく収穫した木だよと。どっちを選ぶ?という問題ですね。そこを追求してほしいんです。もちろん触って気持ちよいとか、目で見て気持ち良いというのもあるんですが、そこの歴史、ストーリーですよね。地球の裏側から運んできた木にストーリーを描くのがありえないとは言いません、それはそれでロマンがあるのかもしれないんですが、やっぱり普通の人が喜ぶのは、「裏山の木を使って自分の家を建てるのがかっこいいな」ということじゃないでしょうか。あるいはそのうちの1本くらいは自分で切らせてくれと言う人もいるかもしれない。そういうストーリーを描いて、そのかわり値段はちょっと高くなるよといっても、それはみんな満足するんじゃないですかね。
それに、国産材は高いというイメージがあるんですが、例えば2000万円の木造住宅を建てたとして、そのうち、何%が木材の価格だと思いますか?実は1割もないんです。かなり頑張って木をつかっても1割、つまり200万円そこら。300万はいかないでしょうね。建売住宅ハウスメーカーが建てるときは5%だから100万円もないです。木材ってそれぐらい安いものなんですよ。それを仮に1割高く買いましょうといっても、200万の1割で20万円ですよ。2000万円の家を建てるときに20万円を惜しむかどうかですよね。言葉は悪いですが、木材はなくても生活できるんですね。鉄でもいいし、合成樹脂でもいい、ガラスでもいい。そこに木材に何を求めるかというと、見た目の良さ、感触の気持ちよさ、感性の部分ですよね。そこに訴えていかなければいけないなと思いますね。


森林ジャーナリストの田中敦夫さんのお話、いかがだったでしょうか。

田中さんは、日本の林業に関する新刊を出されています。


『絶望の林業』新泉社

この本を3冊プレゼントします!
ご希望の方は「本希望」と書いて、番組あてにメッセージをお寄せください。住所・お名前・連絡先をお忘れなく!

【番組内でのオンエア曲】
・俺たちの明日 / エレファントカシマシ
・桜 super love / サニーデイ・サービス
今週も「森林ジャーナリスト」田中敦夫さんのお話をお届けします。
先週は、昨年の台風による千葉県の大規模停電は、言い方を変えると「大規模倒木」であり、林業の衰退が一つの要因だったのでは…というお話でした。
実はこれ、日本の林業が抱える問題の一部にすぎないんです。
長年、林業を取材してきた田中さん、あまり知られていない、林業の実態を明かしてくれます。


森林ジャーナリストとして森林を取材をするという事は、林業を取材するということにつながっていくんですよね。ほぼ30年ぐらい続けているわけですが、残念なことばかりが目に付くんですね。まず、林業は今、成長産業だと言っていますが、ちゃんと儲かっているのかを調べてみました。そうしたら、例えば木材の売上高は2000億ちょっとあるんですが、そこに補助金が2000〜3000億位突っ込んでるんですね。赤字なんですよ。それじゃあ林業がちゃんと立ち直ったと言えないじゃないかという話になりますよね。税金をつぎ込んでいるだけで赤字を垂れ流している状態ですね。木を植える、苗を植える、草を狩る、干ばつをする、何をするにも全て補助金でやっています。「補助金が出るからやろうか。」ということなんです。本当だったら育った木を売って、その利益で林業経営をしなきゃいけないのに、ひたすら補助金が出ることでやっている状態です。
それには、木材の値段が下がったというのも第一にはあります。それに木材の使い道も変わりましたね。いま日本の人口がどんどん減っているわけですから、住宅建築はどんどん減っています。そういう需要がなくなってきているんですね。使い道がないからってバイオマス発電所で燃やすとか、そういう使い道になっちゃうと、値段も安いし、60年育てた木を一瞬で燃やしてしまうのか、ということになりますよね。そうしたら山主さんも林業をやる気がなくなっちゃう。
その補助金のことも含めて、とりあえず林業をやりたい若者が増えているというのは事実なんですけど、残念ながら年以内に半分以上が辞めています。もちろん給料が安いとか、そういう問題もあるんです。月給のところは少なく、日給制がほとんどです。働いた日、働いた分しかもらえない。そういう意味ではあんまり儲からない。非常に体力を使う仕事なんですけど、報われないということになりますね。さらに事故が多いんですよ。全国で45,000人ぐらいしか林業従事者はいないんですが、それで毎年2桁、多い時は30人ぐらい作業中の事故で亡くなっています。事故率という計算方法があって、1000人のうちの何人が事故を起こすかなんですが、全産業の事故率と、林業を比べたら、林業の事故率は十数倍です。むちゃくちゃ高いです。命がけの仕事になっちゃってますよね。しかもそれに報われるだけの給料がもらえないとなったらみんな辞めて行きますよね。


〜林業は危険な仕事なんですか?
もちろんそもそも危ないんです。地形は千差万別で、斜面で木を切る作業では、非常に足場が悪いという事はありますし、そういうように条件も悪いんですけど、本当はそれを完全にこなすためには安全教育が欠かせないんです。残念ながら皆さんがちゃんとそこまで教育を受けているのかは怪しいという事ですね。チェーンソーという刃物は扱うのに、ちゃんと安全教育を受けなかったら、何かの拍子で自分で足を切っちゃうという事故も起きてしまいますよね。

〜林業が正常になるにはどうすればいいのでしょうか?
本当に難しいんです。一種の政策の問題になっちゃう。ちゃんと自立するためには教育もしっかりして、安全教育も必要ですし、木を育てる教育もきっちり教えて、ちゃんと守るということも必要です。さらに、現在は、政策的には木をどんどん切っているけど使い道が決まっていなかったりするんですね。だから市場でだぶついて値段が下がっちゃう。そうじゃなくて、ちゃんと使い道をわかった上で生産していかないと値段は上がらないですよね。この木は住宅のどこの部分に使うんだから、高さ3メートル、あるいは6メートル欲しいということをちゃんと計算してやっていけば値段も高くなるのに、とりあえず出して木材市場で売っていたら値段はどんどん下がっちゃってます。そういう仕組み作りが必要になっていくんだと思いますね。ちゃんと高く買ってくれる使い道を作っていかなくちゃいけない。ただ、いま住宅需要がどんどん減っているからこれまでの需要はどんどん縮んでいるんですね。だから新しい需要を作らなければいけない。残念ながら今の日本の林業界は新しい、しかも高く売れる需要が生まれていないですね。結果的にはバイオマス発電みたいに、安くても燃やすだけみたいな重要になっちゃっている。もったいないですよね。住宅も外材の方が多いわけですし、しかも木造住宅と言いながら、部屋に入ってもどこにも木が見えない。みんなクロス貼っちゃっていて見えないですよね。だったら何を使っても構わないでじゃないですか。傷だらけの木を使っても良いし、あるいは鉄骨を使っても上にクロスを貼ったらわからないじゃない。そう考えたらなぜ木造なのということになってしまいますよね。

〜また、所有者不明の山がニュースになったりもしていますね。
日本中の所有者不明の土地が、九州よりも広いという状態なんです。そのほとんどが山林なんですね。結局、所有者が儲かる時代はちゃんと相続をしてやるんですが、儲からないからほったらかしになっている。所有者が亡くなって、相続者が誰だかわからなくなっちゃう。そしたら手をつけられないですよね。もう一つ厄介なのが、大体この山は私のものだというのがわかっていて、相続者も大体わかっていたとしても、境界線がわからないんです。ここからここは自分でここからここは他人の土地という境界線がどこにあるかわからなくなっちゃっています。木を植えたときは、大体覚えているんですが育ってしまうと景色が変わっちゃいますからね。だからわからない。本当はしょっちゅう通って変化を見ておかなくちゃいけないんだけど、今は不在地主になってしまっているので相続者が街に出て山に1度も行っていないとか、そういう人ばっかりになっています。そうすると境界線を見ようにもわからないんです。他人の山の木を切ったら犯罪行為になりますからね。だから切れないなとなっちゃいます。そもそも林業は儲からないと言われていますから、そこまで無理して切る必要はないんじゃないとなりますよね。所有者不明の山は本当に大問題で、何とかそれを整理しようと思っているんですが、残念ながら政府もお手上げ状態ということになりますね。

「森林ジャーナリスト」田中敦夫さんにお話をうかがいました。
田中さんは、日本の林業に関する新刊を出されています。

『絶望の林業』新泉社

今日のお話はもちろん、もっと「うそでしょ?」ということも書いてあります。そんな『絶望の林業』を3冊プレゼント用に頂きました!
ご希望の方は「本希望」と書いて、このページのメッセージ欄からご応募ください。住所・お名前・連絡先をお忘れなく!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・花が咲く道 / THE CHARM PARK
・若葉 / スピッツ
«Prev || 1 | 2 | 3 |...| 201 | 202 | 203 || Next»

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

あなたからのメッセージ・ご意見をお待ちしております

各放送局の放送時間

  • JFNヒューマンコンシャス募金は鎮守の森のプロジェクトを応援しています。

ポッドキャスト

  • ポッドキャスト RSS
  • ※iTunesなどのPodcastingアプリケーションにドラッグ&ドロップしてください。
  • 鎮守の森のプロジェクト
  • EARTH & HUMAN CONSCIOUS
  • LOVE&HOPE〜ヒューマン・ケア・プロジェクト〜
  • AIG損保 ACTIVE CARE

PAGE TOP