プロジェクト概要

太古の昔より、森は動物や植物などたくさんの命を育み、田畑や海、川にたくさんのミネラルをもたらし、地域と暮らしを守ってきました。 東日本震災では津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、その森や、昔からその地方に根差す、深く地面深くに根を張った潜在自然植生の木々たちは、津波の勢いを和らげました。 関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。 この「鎮守の森」をモデルとした森をできるだけ多くつくることは、災害の多いこの国に生きていく私たちが、後世に伝え残さなくてはならない貴重な知恵であり、自然と共生していく教訓でもあります。 番組「いのちの森〜voice of forest~」では、「鎮守の森のプロジェクト」が行う活動をはじめ、日本のみならず世界各地の森を守る活動を行う人や団体にスポットをあて、森の大切さについて考えていきます。

アメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんのインタビュー。今週で3回目となります。
今日は、ビナードさんが先日発表した絵本『わたしの森に』の舞台となった場所、新潟県十日町市にある「鉢」という名前の集落のお話です。
その名の通り、山あいにあって、すり鉢のような形の集落は、JR十日町駅から「鉢」行きの路線バスに揺られ、市街地を抜け、信濃川を渡り、山を越え、谷を越え、また山を登って、ようやく辿り着くという場所にあるそう。いったいどんな場所なのでしょうか。


『わたしの森に』くもん出版(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)

 鉢集落に田島さんの美術館があります。美術館といっても廃校になった小学校。真田小学校の生徒が3人になって廃校が決まった時に、田島さんが集落のみんなと美術館に作り替えたんです。その美術館の敷地内にマムシが住み着いているところがあるんですが、田島さんがトリエンナーレの企画展を一緒にやらないかと誘ってくれて、最初の打ち合わせをしているときに田島さんが、すぐ絵を描き出すんです。ここにビオトープがあって、ここに校舎があって、ここが体育館で。そして、ここの草が生えているところにマムシがいますから何とかしなければいけない。マムシがいるから草を刈ると言うんですね。でも僕は「マムシがいて何が悪いんだ」と、蛇の弁護人みたいに言って(笑)そうしたら「そうか、そうか」と。そこからマムシがだんだん主役になってきちゃって、マムシが心地よく訪ねる、来館できる美術館にしようよということになりました。毒蛇だから締め出すって美術として失格じゃんって思うんです。美術って視点を変えてみんなの視野を広げること。マムシを中心に据えて考えると世界が違って見えます。そして、集落の皆さんがマムシとどういう風につながっているかということも聞いたりして、結局巨大マムシを作ったんです。2018年越後妻有アートトリエンナーレにたくさんの人たちが来てくれたんだけど、その時は竹で作った巨大マムシから美術館に入るんです
 嫌われ者で、そういう風に扱われている、人間の社会の中でも忌み嫌われるものには、何か大事な意味があります。嫌われている理由は多くの場合、嫌っている方にる。つまり包容力がないということだったり、権力側の都合で締め出すことにメリットがあるとか。差別というのも利用されて、社会が差別の方向に進むということがあるから、なんで嫌っているのか、嫌われている側に問題があるのか、それともこっちに問題があるのか考える入り口にもなり得るんだよね。マムシほど嫌われている生き物は無いけれども、マムシほど優れた生き物はない。だから嫉妬してんじゃないかと思うんですよ。
 鉢集落は農業と林業と、もともとあった奥山がつながっている集落なんですよね。もちろんそこに住む人たちが減っていて、やれてない田んぼとかがある。それでもちゃんと機能していて、集落の人たちが農業と林業と、ある程度の手入れができているんです。だから針葉樹が多いところは生き物たちにとってどんぐりもないし、食べ物が少ない状態なんだけど、その間に生活圏とか、畑とかがあって全部針葉樹一色じゃないから、野生の生き物がいるんです。昔の話を聞くと、食料が足りない時代、子供が病気になると森に入ってマムシ、ヒキガエル、今は食べない生き物をとって積極的に食べて、病気がちの子供の力になったそうです。「私はマムシで強くなった、育った」と言うお母さんやおばあちゃんもいたんですよね。隣の大島村の友達がマムシをつかまえてくれて持ってきてくれて、去年はしばらくマムシと一緒に暮らしていました。本当に美しい。最後は、、、漬けましたけどね。マムシ酒というのがあるでしょう。ブヨに刺された時はマムシ酒ですよ。うちの妹が日本に来たときにブヨに噛まれたんです。病院に行こうかと言っていたらおばあちゃんは、マムシ酒を塗りましょうとマムシが入っている一升瓶を出してきた。うちの妹は「うわあぁぁ」と言っていたけど、塗ってあげて湿布を巻いたら1時間位で治っちゃった。そしたらうちの妹は、これはミラクルだと言ってました。


来週もアーサー・ビナードさんのお話の続きをお届けします!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Sunday Candy / Donnie Trumpet & the Social Experiment
・Back To December / Taylor Swift
今週は先週に引き続き、アメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんのお話です。
ビナードさんが先日発表した絵本『わたしの森に』。雪ぶかい、新潟県十日町の森を舞台にした、一匹のメスのマムシが主人公の物語。きょうは、このマムシというちょっと怖い蛇の、知られざる、すごい能力のお話です!


『わたしの森に』くもん出版(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)

 この絵本ではマムシが交尾をするシーンがあります。普通はオスの精子がメスの体内に入って妊娠するかしないかということでしょう。ところがマムシって違うんですよ。オスの精子がメスの体に入ったら、メスのマムシはそれを体内に備わっている精子バンクに入れるんです。受精卵にしないで精子を取っておくスペースがあって、保存できるんです。そして、冬を越して生活が安定していれば妊娠する。でもちょっと無理だ、食料も足りないし妊娠は厳しいなと思ったらとっておいて翌年妊娠するんです。僕らが知っているデータでは4年以上とっておいたという記録があるんですね。こんなことができたら、人間も助かるよね。「この男いいなぁ、でも今仕事もいろいろ大変。でももらっちゃうか」と言ってもらって、とっておけば、翌年とかに妊娠できる。それを動物学者は遅延受精と呼んでいます。体の何かが判断しているのか、脳で決めているかという議論はあるけれども、明らかに選択肢がある。それは僕ら人間が持っていない離れ業です。命を作り出すすごい才能です。僕はそんなことは一切知らずに、マムシが好きだなぁ、いいなと思って、絵本を作り始めて、田島さんといろんなものを調べてみたら、ええ!?っていう。
 びっくりして故郷のヘビのこともいろいろ調べているとき、ちょうどミシガンにいる母から電話がかかってきて、遅延受援のことを知っていたかと聞いたら「知ってるわよ」と。しかも「白熊もできる」って言われたんです。そんな哺乳類がそんな離れ業なんかできるの?と思ったら実はできるんです。ただ白熊は哺乳類だから仕組みが違います。精子をとっておくのではなくて、受精卵のまま着床させないで保存するんです。凄いでしょう?冬眠に入るときに、子育を成し遂げるだけの体力と、体脂肪と栄養がないと、子供だけじゃなくて母親も犠牲になるから、そこで判断するわけです。冬眠に入るときに、できそうであれば着床する。できないかもしれないときは未着床のまま。それを白熊はやっているんですね。
 ヘビって卵を産むんですが、マムシは卵を体内で孵化させて、子供が成長して一人歩きできるときに生むんです。だからこの絵本の1番の山場は出産です。交尾をして、”まんまんまん”と体内で膨らんでパンパンになっている感覚に読者がなって、それで生まれる。シューシューと出ていくんです。この絵本では3匹なんですけどね。自然界ではもっと多くて10匹ぐらい出てくる時もあります。
 ミシガンにもマムシに近い仲間のガラガラヘビがいて、森に入るときに噛まれたら大変なんです。そういうことを考えると、噛まれないように気をつけようと思いますよね。それがすごく良いことなんですよ。足元をよく見る、誰がいるかなど考えながら進んでいく。そうすると、キノコがあったとか、アメリカもワラビみたいなのがあるんだけど、ワラビが出てきたとか、ヤマアラシの棘があるとか気づけるんです。鹿って角を落とすけど、角がなかなか見つからないんです。あれだけいっぱい落としているのになぜ見つからないのかというと、鹿の角はヤマアラシの好物なんですね。ガリガリガリガリ食べちゃう。だけどヤマアラシが見つける前に見つけられると、それでいろんなものが作れるんだよね。子供にとっては欲しいものなんだけど、なかなか見つからない。でもガラガラヘビに気をつけながら入っていくと見つかるんですね。僕はミシガンでいろんな森の恵みを見つけてきたんだけど、それはガラガラヘビのおかげ。それを心配だとか恐怖と捉えるとマイナスのイメージだけど、本当はすごく大きなプラス。おっかない奴がいるって良いことなんですよ。


アーサー・ビナードさんのお話、いかがだったでしょうか。気になる方はぜひ「わたしの森に」をチェックしてみてください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Friends / Justin Bieber and BloodPop
・Gravity John Mayer
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パーソナリティ

高橋万里恵
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