今週も、前回に引き続き年をまたいで屋敷林の魅力についてお届けします。
田んぼの広がる風景の中で、民家を守るように、人の手で植えられ、育てられてきた森・屋敷林。山から吹き下ろす季節風を防ぎ、落ち葉は燃料に、柿の木などは食料に、さらにお家を建て直す時の木材も、屋敷林から調達する・・・本当に昔の人々が考えた知恵が詰まっているものなんですね。
ただ私たちの暮らしが変化するにつれ、こうした「知恵」は、必要とされなくなっているのも事実。屋敷林のある暮らしは、失われつつあります。
そんな中、東北・宮城県の立派な屋敷林を守ろうと、様々な動きがあるそうです。
屋敷林の専門家・東北工業大学の不破正仁さんに伺いました。

◆屋敷林の模型の制作
つい最近、宮城県の名取市にある江戸時代から続く民家の模型をつくりました。そこは茅葺の民家が残っているというところで、茅葺の民家やその周辺の蔵なんかが重要文化財になってるんですが、それ以外にも、いぐねもしっかり残っているお屋敷です。そこで蔵の修復工事があったのですが、私自身が農家の景観や茅葺民家みたいなものを考えた時に、単体で模型で復原するのはもったいないんじゃないかと思いました。仙台平野の中の農家ということを考えたときに、水田に浮いたような屋敷林の景観、これが最も特徴的で美しいと思いますし、そういったものが実は農家を支えてきたものだろうと思っているので、いぐねや屋敷林、その周辺にある水田も模型で再現してみようと、茅葺の民家や周辺にある蔵、そしていぐね、敷地内にある堀、そしてその周辺にある水田までも模型で復原したということです。
これが10月18日にお披露目の会があったんですけども、そこでその模型を披露することができました。今は、その重要文化財の洞口家で保存しているという状況です。




この洞口家は、国の有形文化財に指定されている古民家。まだ一般公開については未定となっていますが、今後は、この洞口家の建物、屋敷林、そして屋敷林の中に残されている、昔の人たちの営み・知恵をいかに、残していくかが課題です。

◆屋敷林保存の課題
洞口家住宅の屋敷の現状は比較的周辺の農家と比べると残りが良いと思います。例えば屋敷背後のいぐねがしっかりと残っているというのもありますし、屋敷神の部分にもしっかりと樹林が残っている。さらにはその地域の月山信仰があって、月山の祠というのがあるんですけども、これも屋敷神と同じように地域の神様です。地域の神様の祠の側にも一本樹木が残っています。
しかし一方で、屋敷林の最盛期の頃よりは樹木量が減っていまして、模型ではその最盛期の頃を復元したということがあります。
洞口家住宅のご当主の方の思いはとても素敵なお考えをお持ちなんですけども、いぐねの保有というのもとても手間のかかることで大変なことです。それをどうにか後世に今の景色を伝えたいという思いを強くお持ちで、地域の宝だということをしっかりと認識されています。ただ、今のご当主はそういう思いをお持ちですけれども、後世に伝えると簡単に言っても、そのお子さんやお孫さんに伝えるためには当然財政的な問題も大きくのしかかって来る。その時に、それを本当にこのまま自分の思いを押し付けていいんだろうかというような悩みもやっぱりあるようで、そのあたりは本当に悩ましいところがあるんだろうなと思います。
そういったことをしっかりとこれから我々は考えなければいけないことだと思いますし、今私の置かれている立場というのは若い力、学生のような子たちがそういう地域に訪れて、「あ、こういうものがあるんだ。」ということを気付くこともそうですし、何か活用の手立てを考えていきたいなと思ってます。
一般的に屋敷林がなくなる傾向としては、まず樹木の管理が大変だということ。特にけやきがなくなる理由は落ち葉の処理が大変で、あとは枝が大きく伸びますので周辺の道や電線なんかを邪魔するということで切られたり、隣に落ち葉が落ちてくことが管理上難しいということで切られるというようなことが多いようです。
また、家自体が昔に比べて断熱効果がきちんと整い始めて、風を樹木で守る必要もなくなってきたということや、建材としても必要なくなってきているということもあります。屋敷林というのはやはり人がある機能をもって植えるものということは、人が使わないとなくなっていくわけですね。
屋敷林を守っていこうとする地域は日本の中でいくつもあります。代表例としては島根県の斐川平野ですね。築地松を守ってる地域がおもしろい取り組みをしていまして、松はマツクイムシに食われるわけですけども、そのマツクイムシで食われた部分を、単純に移植して大きな樹木を植えて補修するというわけではなくて、小さな樹木を植えて樹木の成長を待って、その土地に樹木を根付かせたりするということを試みてる地域があります。それは結果的に所有者の方に、自分自身で育てたんだという実感を持てるという効果もあるらしく、「なるほどすごい取り組みをしてる地域もあるんだな。」ということを知りました。
その他増加傾向にある樹木、遺棄されやすい傾向がある樹木があるとすると、まず増加傾向にあるのは観賞用樹木ですね。松やサツキ、ツツジなどが観賞樹として多く庭に増えています。これは元々は果樹畑だったりとか、屋敷の中の畑だったりとかするような場所が今では観賞用の庭園になってるっていうことが多いようです。
さらには、道路沿いの生垣なんかだと屋敷の見栄えをよくするために生垣が保持されることが多くてですね、そういった意味ではこの二者は増えてく傾向にあったり、もしくは減少傾向が低いというような言い方ができると思います。


最後に、この年末年始、屋敷林のある風景の中、散策することもあるかも知れません。屋敷林を愛してやまない、不破先生に、屋敷林の愛で方、楽しみ方を教えてもらいました。

◆屋敷林の楽しみ方
まず今残っていることに感動していただきたいと思います。つまり残っていること自体がまれなことなんです。
そして、例えば屋敷林には杉の防風林があるんだということをもしご存知だとして、その時に「あれ?杉以外の樹木もあるぞ。」とそんなことに気付くと、屋敷林を見る時のわくわく度が高まるんじゃないかなと思います。例えば庭先に柿がなってたりしますとその柿が色づいてくるわけです。そしてけやきの葉が落ちて、柿の葉が落ちて、そこにオレンジ色の実がなっていると、当然それも見応えがあるし、茅葺民家なんかとセットになっていれば、すごく絵になるんじゃないかなとは思います。
景色の移り変わりを直に感じることができるでしょうし、かつそういったことを感じるからこそ今その景色が地域の宝だと思えるようなことになってきたんじゃないかなと思ってるんです。


屋敷林のお話、いかがだったでしょうか。今回のお話はポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Good morning / ケツメイシ
・Joy to the world! / 天才バンド

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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