• 2016.09.18

小網代の森 3

今週も神奈川県・三浦半島にある小網代の森からのレポートです。

川の源流、湿地帯、干潟、海へと繋がる「流域」の生態系をまるごと保存した、全国的にも貴重な森。最後は、この素晴しい場所と「人」との関係についてお伝えしたいと思います。
小網代の森の広さはおよそ70ヘクタール。東京ドーム15個分くらい・・・というと広そうですが、森の面積としては、けして「広い」とは言えない面積なのだそうです。
でも、その小さな森は、「川の流域」の要素を全て備えていて、本当に多様性に溢れています。
さて、小網代の森の、谷沿いに整備された木道をずーっと下って行きますと、地面はいつしかなだらかな平地に。木漏れ日の差す森は終わり、目の前がパッと明るく開けました。

◆人が管理する自然
ここは谷がひとつ右側に隠れていて、そこと合流するんです。ここが第4合流点です。世界がまたパッと変わって、ここから先は一面の湿原になってきます。5月くらいに来ると尾瀬のような状態です。3月くらいになるとアシとかオギの新芽が20センチくらいに育ったころなんかはすごくきれいですよ。
この湿原は3ヘクタールくらいあるんですけど、この下の干潟が丁度同じ面積。3ヘクタールくらい。海水の湿地帯と淡水の湿地帯が十数ヘクタール繋がってるんですね。こういうのも極めて珍しい。
ここは基本的には笹原だったんです。それを笹を切って、あちこちに水路を誘導して水浸しにして笹を抑えてるんですよ。だからこれは「創出」された湿原。「復元」じゃないんですね。
湿らせておけば笹が生えず、管理はしやすいので、どうやって水を増やすかっていうのが長期的な課題です。放置して乾燥するとまた笹原に戻っちゃうんです。笹になっちゃうと笹の中に灌木が入ってきて、つる草が入ってきて、真っ暗になっていって、トンボもい蛍もいなくなる。魚も川に上がってこない谷になるというのはほぼ確実なんです。
手を入れない自然が好きだったらそうすればいい。あと100年も放っておけばそうなります。本来この辺りの自然って人が手を入れなけでばそれが基本形です。
それが嫌であれば、ひとつの選択肢として、湿原環境を人間の力で維持して、そこにその湿原環境を基本とした生態系をつくりましょうっていう提案があっていいでしょ?我々はそれを提案していて、実践しています。
都市の中で自然を上手く保護するにはどうしたらいいのかっていうのは、本当にみんなの知恵で考えなきゃいけない。そういう意味では、ここ小網代がその手本みたいなもので、今は理論的にもこういうやり方が妥当だと思っていますね。
昔、水田を耕作して雑木林を管理していったときには、それで100年、200年、500年、1000年同じ形が維持されている。それが里山っていう自然で、あたかもそれが手を放しでもそのままであるかのように錯覚を持ってるけど、放置すれば数十年でとんでもない荒れた自然になっちゃって、山火事だって起こっちゃう。
ここの水循環は水田だったときの名残を基本的には引き継いでる。そただしそこに生きる生き物は稲ではなくて、水田耕作時代を稲と一緒に生き延びてきたカエルとかトンボとか、その他の植物を全部戻してあげますよっていうのをやっています。
そこにオレンジ色の花あるでしょ?あれはハマカンソウっていう、ニッコウキスゲの仲間です。海岸線に群落があったんですけど、3月11日の津波で生息地の多くが失われてしまった。これは今、企業と連携して人工的にここに戻している。予定ではあと5年くらい経てば、この辺りは全部花が咲く。一面尾瀬のニッコウキスゲみたいなところにしちゃうんです。これも「創出」ですね。



ガイドして下さったのはNPO法人小網代野外活動 調整会議の代表で、慶應大学名誉教授の岸由二さん。
小網代の森の湿地帯は、「人が手を入れて」、森を伝う川の水をしっかり流してあげることで保たれている・・・というのは印象的でした。
また、岸さんは「この森は、まだまだ全く手を付けられていないところがたくさんあって、森を育てる・創出する仕事はずっと続くし、自分の代では終わらない」ということもおっしゃっていました。

◆国際的なブランディングをしていくべき森
こういう風に流域、生態系が完璧な形で繋がってるっていうのは、関東ではここだけです。「ここは生態系の構造上極めて重要」っていうアピールを僕らがして、国交省が「わかりました」っていうことになったんです。珍しい生き物がいるからっていうのがの理由じゃないんです。
ただ、まだ海のほうは保全されていないんです。ラムサール条約で保全しようとすると、基本的には基準は全部クリアしてるんだけど、賛成してくれない人もいるから時間がかかります。でもいずれここはちゃんと保全して、国際的なブランディングをしていくべきとこなので、時間がかかってもそうなるとは思ってます。


今回のお話いかがだったでしょうか。
小網代の森では、毎月第3日曜日に「ボランティアウォーク」を実施しています。
自然観察をしながらゴミ拾いなどの体験ボランティアをするもの。詳しくは、小網代野外活動調整会議のサイトをご覧ください。

【今週の番組内でのオンエア曲】
・La / Old Man River
・ロングバケーション / RIP SLYME

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

あなたからのメッセージ・ご意見をお待ちしております

各放送局の放送時間

  • JFNヒューマンコンシャス募金は鎮守の森のプロジェクトを応援しています。

ポッドキャスト

  • ポッドキャスト RSS
  • ※iTunesなどのPodcastingアプリケーションにドラッグ&ドロップしてください。
  • 鎮守の森のプロジェクト
  • EARTH & HUMAN CONSCIOUS
  • LOVE&HOPE〜ヒューマン・ケア・プロジェクト〜
  • AIG損保 ACTIVE CARE

PAGE TOP